目を覚ました後 ①

 目を覚ます。


 


「ん……」




 そこは僕の部屋だった。




 どうして眠っていたんだっけとそう思考して、僕は思い起こす。

 そういえば乃愛へとホワイトデーのプレゼントを買った後に、悪魔っぽい人達と戦っている杉山たちと遭遇したんだっけ。

 周りの被害を考えずに……、そういう余裕もなかったのか、凄い被害になっていたんだろうなと思う。






 僕の怪我は乃愛が内側から癒してくれたからかすっかり治っている様子だ。うーん、魔法ってすごいな。




 というか僕の服が着替えさせられているんだけど、乃愛がやったのかな。それはそれで恥ずかしいけれど……。僕は巻き込まれてすっかり服もボロボロだったからなぁ。






 そんなことを考えていれば、「博人!! 目が覚めた! 良かった!」と乃愛が部屋の中へと飛び込んできた。






「……なんか乃愛、珍しく焦っている? 僕のことを生き返らせるとか出来るだろうに」

「駄目だよ。だって……死んで生き返らせる前の博人の子供産みたいもん!!」

「何言ってんの?」





 神様である乃愛ならば人を生き返らせることも出来る。なのにどうしてそんなことを焦っているのかと思えば、そんなことを考えていたらしい。



 ……でもそうか。乃愛は一度死んだりしていないそのままの僕の方がいいって前も言ってたしなぁ。


 



「本心だよ? 博人のこと、博人が死んでも手放すつもりは全くないけれど今の博人の子供も産みたいもん。それでね、博人が人間として死んだらその魂を地球の神にはあげないからね! 私のだからね!」

「……僕が死んだ後、乃愛、どうする気なの?」

「んーとね、これはもうちょっとしたら博人に提案しようかなって思っていたけれど言っちゃうね! 私ね、博人がいいよって言ってくれたら博人の魂を異世界に連れて帰りたいの! それで、今、作っている博人の身体に入れてずっと過ごすの!」




 ……なんか色々突っ込みどころがあるのだけど。

 僕の魂を地球の神様にはあげないって何。あと僕の魂を、作っている身体に入れるって……作っている身体って何??




 乃愛はほとんどこっちの世界にいるわけだけど、向こうでどうにかして何かしら作っているってこと??




 僕は意味が分からないなと思いながら乃愛を見る。





「ねぇねぇ、博人、どう? 死んだら異世界で私と遊ぼうよー」

「急に言われても」

「でも博人が異世界で遊ぶの嫌だって言っても……その時は我慢して作っている身体には入れないけれど……でも博人の魂は連れて帰るよ! それは譲れない。博人の魂は私が持っているの!」




 僕の魂を乃愛が確保するのは確定事項らしい。うーん、なんか僕が想像も出来ないような壮大な計画が立てられている……?

 乃愛の言葉を聞いても僕はあんまりそういう将来は想像が出来ないし、よくわからない。







「ところで、博人」




 乃愛は僕の名前を呼んで、こちらを見ている。

 ……何だかその目に熱がこもっているように見えるのは何でだろうか。





「子作りしようよ、博人」

「はっ?」






 乃愛の言葉に僕は思わずというように声をあげてしまう。

 そんな僕に乃愛はにっこりと笑って、僕の上に乗ろうとしてくる。





「だって、人間としての博人の子供ほしいもん! その前に人間としての博人が死んじゃったら私悲しいもん!! だから、ね? 子作りしようよ。それにそういうこと博人としてみたいし、ね?」




 ……なんか乃愛が本来の髪と目の色に一気に戻っている。

 そしてその赤い瞳が僕の顔を覗いている。綺麗な瞳は、僕に頷かせようとしてくる。






 そのまま乃愛が僕の顔に顔を近づけて来て――僕はそれを手で押さえた。




「乃愛、却下!」

「何で!? いいじゃん! 私、博人の子供ほしいもん! ね、博人いいでしょ??」






 乃愛が僕のことをじーっと見てくる。



 駄目かな? と悲しそうな顔をしている乃愛を見て、僕は小さく息を吐く。






 僕は乃愛が僕に感じている気持ちを甘く見ていたのかもしれない。僕は乃愛がそのうち飽きるだろうって思っていたし、乃愛がいるのが当たり前になっていたけれども――それでも乃愛がそう言う風に考えているとは思ってもいなかった。





 ――多分、乃愛は僕に飽きない。

 そういう実感をこの時、思った。






 僕が頷けば乃愛は、僕の魂を異世界に連れていくだろう。……まぁ、僕が死んだ後に、どうするかはともかくとして……。




 僕は乃愛を見る。






「……とりあえず、それは大学を卒業してからで」

「博人!! それって!?」

「……乃愛が本気だから。僕は乃愛を突き放せないし、乃愛がいるの当たり前だと思ってるし……」

「やったー!! じゃあ、約束ね? ねぇねぇ、博人、私とそういうことしてもいいって思ってるんだよね? じゃあ卒業までは恋人ね!!」

「……うん。まぁ、僕も乃愛のこと、何だかんだ好きだと思うし……」

「ふふ、私も大好き!!」




 なんかこれ、恥ずかしいな。

 でも何というか、流されたからっていうか、何だかんだ僕は乃愛が隣にいるの当たり前だと思っているし、乃愛が子作りしたいとか言い出したのは驚いたけれど嫌じゃないって思ってたし。




 まぁ、まだ先のことだから分からないけれど……にこにこ笑っている乃愛を見ると、将来的に長い時間をかけて僕は乃愛に絆されて、異世界で遊ぶことを頷くのかもしれない。



 そんな予感を感じていた。






「じゃ、博人、このままチューしよ? そしてこのまま繋がろ?」

「……キスはともかく、僕ら学生だからね? そういうのは大人になってから……」

「子供出来ること心配している? 大丈夫だよ? 博人が大学を卒業した後って言うのならば、子供出来ないようにも出来るし。だから、ね?」

「ちょ、ま……」

「ふふ、いただきまーす」








 ……そのまま襲われた。



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