色々情報を知っても相変わらずの日常 ③

「最近、魔物があまり現れていないな。良いことだ。俺たちが帰ってきてから、魔物がやってくることが多かったから、ちょっとほっとしているよ」

「そうですわね! 逆に魔物との戦闘をしなくてもいいのは、不思議な気持ちですわ」

「『魔王』が倒されるまでは魔物との戦闘ばかりだったものね」

「……しかし魔物がいなければ剣が鈍ってしまいますな。またあちらにも行きましょう」




 杉山たちはそんな会話を交わしながら、教室にいる。




 僕はその会話を聞きながらふーんという気分である。

 それにしても僕は魔物の鳴き声が時々聞こえていたから、こちらに魔物は来ていると思うのだが……最近は魔物が現れていないというのはどういう認識なのだろうか。




 やっぱり杉山たちが気づいていないうちに動いているってこと? ……杉山たちや女神様のいっていたあの子なのかなぁなんて予感を感じながら、僕は本を読んでいる。



 というか、トラジーさんはなんというか戦闘狂なのだろうか? この世界に来ていてそういうの求めないでほしい。地球は平和な世界なのだ。今回、杉山たちがこちらやってきた影響なのか、魔物とか分けわからないものがこちらにきているけれど。




 それにしてもこうやって魔物が入り込むのもそのうちなくなるんだろうか。

 あの女神様とかが何かしらそのうち対策をするとは思うんだけど。





 やっぱり杉山たちにも違和感を持たれない常識改変がされているってことかな。

 ……相変わらず僕にだけきいていないことが本当に謎すぎるよ。






 現実逃避も含めて僕はライトノベルを読むのに熱中している。ちなみにこのシリーズ、巻数が多いのもあり、一度目の二年生の時に手を出していなかったものである。剣と魔法のファンタジーの物語である。『勇者』に巻き込まれて召喚された少年が、捨てられた後に最強に至るというオーソドックスなものである。


 ちなみに僕はこの系統のライトノベルも結構好きである。

 そういうラノベを読むと何だか心がワクワクするものである。






 それにしてもこの話、主人公が全くぶれない所が面白いと思う。僕としては主人公が成長していく話も好きだけれど。

 どういう物語でも登場人物たちが意気揚々と生きているものは楽しいものである。さしずめ、この現在起きている異世界と地球との関わり合いの中で紡がれている物語の中での主人公は杉山だと言えるだろう。




 異世界とこの地球でのかかわりはもっと深まるのだろうか。それともいずれかかわりは少なるなるのだろうか。いつまでも常識改変が周りにきくものなのだろうか。そんなことを考えながら僕はぼーっと読書をする。








 授業を受け、昼食を食べ、帰宅時間になるとすぐに帰宅する。

 もうすぐ二度目の高校二年生が始まって一か月。ゴールデンウィークがまもなくやってくる。そういう少し長い休みだと、また何かしらの動きがあるものだろうか。休みだと杉山たちは異世界にまた向かうのだろうか。




 それとも女神様の言っていたあの子とのかかわりを深めるのだろうか。




 僕のゴールデンウィークの予定としては、本やゲームを買いに向かうことしか決めていない。あとは両親に連れられて、ショッピングセンターに行くぐらいか。




 なんて考えていたら、杉山たちの声が聞こえてきた。






「そういえばひかる、ゴールデンウィークというのがあるのでしょう? 長い休みはどうしましょうか」

「折角キャエリンたちがきて初めてのゴールデンウィークだから、色んな所に連れて行くよ。この地球だからこその経験をキャエリンたちにさせたいんだ」

「まぁ、それは楽しみですわ! ひかるにエスコートしていただくなんて楽しみですわ」




 フラッパーさんが杉山の言葉に目をキラキラさせていた。




「キャエリン様、ひかる、こちらで遊ぶのもいいけれど、向こうでパーティーもあるでしょう。そちらも参加したほうがいいわ」

「それはもちろん。ある程度こちらにいて、必要な時は向こうに行くつもりだよ。それにあの人がこちらに来ていると言う話だけど、今の所見つけられないから……こっちで何をしようとしているか調べないと」




 杉山たちは女神様の言っていたあの子が何をしているかというのが、分からないらしい。もうすでにこちらに来ているのだろうか。来ているのならば杉山たちに接触しようとするものなのか、それともただ異世界でのんびりと過ごそうとしているのか。

 それはまあ、杉山たちが女神様の言うあの子に会えば、分かるものだろう。




 僕はその情報をただこうして聞くことになるだろう。何かゴールデンウィーク明けに、何か杉山たちに変化もあるのかもしれない。






 とりあえず僕の生活に何か不都合がなければいいなぁと、僕は他人事のように思っているのであった。

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