教室に女神降臨 ①
相変わらず、魔物の存在は感じている。
正直言って一匹倒されてもまだ魔物の存在を感じるのが恐ろしいと思う。
他の人たちは、一切、魔物の存在に気づいていない様子で、この秘密を誰にも共有出来ないことは何ともむず痒い気持ちになる。
僕にとっての日常は、既に非日常に侵食されてしまっていると言えるのかもしれない。僕はただのんびりと過ごしていくだけだけども……、今は非日常が近くにあることを感じているだけだけど、いつか本当にその非日常と関わることもあったりするんだろうか。
それは怖いと思ってしまう。
それにしても僕が知らないだけで、誰かが亡くなったりしてしまうのだろうか。魔物の存在は、人に害をなすものだろうし。というか、あれなのかな、僕が知らないだけで実はそういう存在って昔からいたとかあるんだろうか?
でももしあるんだったら流石に僕も気づくと思うんだけどなぁ。
……となると、やっぱり杉山がこうして此処にいるからこそ……、そういう存在が入り込んでいるってことかな。
少しならば常識改変がされていたとしても、現実に影響を受けることだろう。僕のように気づくものがいるのか。それともすべて常識改変で黙らせるのか。
どちらにせよ、僕のいつも通りの日常を壊すことがなければいいなぁなんてそんなことを思ってしまう。
魔物退治を杉山たちは、最近毎日行っているらしい。放課後や授業中でも飛び出していくので、正直な感想を言えば学生の本分は勉強なのに大丈夫なのか? という気持ちであった。
フラッパーさんたちは、異世界人だし、杉山についてこちらに来ただけでこの世界に骨を埋める気があるわけでもなさそうだし、別にいいんじゃないかなとは思うけど、杉山はわざわざこの世界に戻ってきたわけだし、勉強はちゃんとしたほうがいいと思うんだけどな。
学園生活をおろそかにするのならば、こちらに戻らずに異世界で暮らすことも選べただろうに。
それを選んでくれたら常識改変なんてされずに僕は順当に高校三年生になれたのだろうか?
そういえば、僕は高校二年生を二回目なので、授業は当然聞いた覚えがあるものばかりである。でも僕は頭がそこまでいいわけでもないので、二回目を受けられるのはとてもありがたい。テストの内容も一緒だったりするんだろうか? 何だか不正しているような気持ちになってしまって落ち着かない気持ちになる。
いや、まぁ、僕は全てのテストの問題を覚えられる頭はないからアレだけど。来年には受験だから、勉強を一生懸命している風にして、少し成績が上がっても違和感がないようにでもしておくほうがいいのだろうか。……僕が少し成績良くなったとしても誰も気にしないかもしれないけれど。
家で過ごす時間は、僕にとっての一回目の高校二年生で時間がなくて読むことが出来なかった読んだことない本を読んだり、ゲームをしたり、勉強をしたりとしている。一度目の時間軸でも僕は一人で部屋で過ごすことが多かったから、母さんも父さんもそれを違和感に思う事はないらしい。
うん、結局、この世界に異世界からの異物が入り込んでいたとしても僕自身が変わるわけでは全くないから、僕の生活なんてこんなもんだよなぁって思っている。
前向きな意見を言うのならば、二週目だからこそ来年の受験に備えて勉強が出来るし、他のことに使っていた時間を読んでなかった本をよんだりする時間になったりするし、それはそれでいいことだとは思っている。
「ひかる、昨日の敵は中々強敵でしたわね。ああいうのがこの世界に入り込んでいるのはどうにかしなければならないですわ。でもひかるがこの世界の人々のために一生懸命戦っていることをまわりが知らないなんて……」
「仕方ないよ。魔物がこの世界に入り込んでいるなんて知られたら大変なことになる。それに僕は感謝されたくて戦っているわけではないから……」
「まぁ!! 流石、ひかるですわ!」
なんだかフラッパーさんがキラキラした目で杉山のことを見ている。杉山はその賛美を当たり前みたいに受けている。
一年生の頃の杉山を僕は詳しく知っているわけではない。見ての通り、杉山は明るい人間だったので関わったこともなかったし。とはいえ、時々噂になっていたから何度も見かけたことはある。
その時と比べると杉山は雰囲気は変わったように見える。それはやっぱり『勇者』として異世界で暮らしたという経験を得たからだろうというのが分かる。
……というか、杉山は一年もこの世界を開けていたわけだけど、家族たちとは前のように接することが出来ているのだろうか。あと今更ながら気になったけど、フラッパーさんたちってどこに住んでいるんだろう? もしかして杉山の家? まあ、その辺は盗み聞きしていれば分かるかもしれない。
なんてことを思っていたら、急に教室内の空気が変わった。
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