第39話 ヨハンの場合

「がるるがあああああああ」


 ヨハンがボス部屋に入るや否や、目を覚ましたクリスタルレオの咆哮。それと同時に、クリスタルレオの周りに6つの浮遊クリスタルが出現する。それらはこの部屋の主を守るように、クリスタルレオの周囲を規則的に回る。


「やっぱり可愛くないわ……」


 召喚獣召喚の準備をしながら、クリスタルレオにどこか愛すべきポイントが無いか観察していたヨハンは、ため息をついた。


「手に入らなかったら、ゼッカちゃんにはイヌコロを好きになって貰いましょう……召喚獣召喚――スケープゴート」


 幾何学的な魔法陣から、丸い羊型のモンスターが出現する。


「敵に突撃しながら【増殖】よ!」

「メェ」


 スケープゴートは三体に分裂すると、ピョインピョイン跳ねながらクリスタルレオに突っ込んでいく。その内の一体に攻撃を引き寄せるスキル【デコイ】を使用させながら、ヨハンも準備に取りかかる。


「まずは【増殖】……私を三体に分裂させるわ」


 ヨハンの分身が二体出現する。この分身にはある程度細かい命令が行える。まずは分身二体に、本体に対してプレレフアのスキル【フラワー・オブ・ライフ】を発動させる。

 これによりヨハンの魔力数値は三倍の三倍となる。


「メェーーー」


 と、この段階で3体のスケープゴート全てがクリスタルレオに倒されてしまった。思ったより早い。だが、問題はなかった。


「よし、今度は分身Aが前進。【メタルアーマー】を使いつつ【デコイ】」


 ヨハンの分身の内、一体が前進する。そして、この前手に入れた中級召喚獣【ウォールゴーレム】のスキル【メタルアーマー】を発動させる。



【メタルアーマー】

15秒間の無敵状態を得る。但し発動中攻撃できない。



 無敵となった分身Aに攻撃を集中させている間に、さらに自分を強化する。


「召喚獣召喚――【プレレフア】!!」

「ぷーわー」


 新たにプレレフアを召喚。そしてヨハン自身に【フラワー・オブ・ライフ】を発動させる。


「そして私も……【フラワー・オブ・ライフ】!」


 三倍……さらにまた三倍。

 続けてヨハンは【闘魂・極】を発動し、さらに魔力の数値が倍となる。


「これくらいでいいかしら。行くわよ……ヘラクレスオオカブトの構え!」


 ヨハンは屈みつつ、両腕を『つ』のように構える。自らの体でヘラクレスオオカブトを再現しているのだ。バスタービートルの攻撃スキル【テラーズブラスター】は上下の角の間から発射される。このスキルを発動する際、ヨハンも腕を駆使して角を再現する必要があるのだ。


「――テラーズブラスター!!」


 ヨハンの腕から放たれた白いエネルギー波は敵目掛けて真っ直ぐ進んでいく。


「がるるがああああああ」


 浮遊クリスタル全6個が束になってクリスタルレオを守る……だが。


 ヨハンの攻撃はそれでは止まらない。


 超絶強化された魔力数値から放たれたテラーズブラスターは、一瞬で浮遊クリスタル6個を蒸発させ、尚勢いは弱まることなく、クリスタルレオを飲み込む。


「ぎゃるううううんんんんんん」


 そして、そのHPバーを一瞬で削りきった。


『レベルが24に上がりました』


 クリスタルレオの消滅と共に、レベルアップを告げるメッセージが表示される。


「レベル40になれば上級召喚術を取れる。また一歩近づいたわね。さて」


 クワガイガーの時と同じく、出口のゲートと宝箱が出現している。中には、青い召喚石が納められていた。


召喚獣【クリスタルレオ】


超級:召喚術スキルの有無に限らず、召喚することが出来る。《譲渡不可》

《入手条件》

召喚師が初挑戦且つソロでクリスタルレオを撃破。



「勝ててよかったわ……これでゼッカちゃんにも喜んで貰えるわね」


 新たに手に入れた召喚石をストレージに仕舞うと、ヨハンは第三層へと足を踏み入れた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る