第10話 逃亡
剛はミライ、三郎はソフィア、アルテミスを保護の対象とし、彼女達自身の言質はともかく、こちらからは決して奴隷として扱わないと誓った。ただ、今は生き残る為に命令をする場合が有るが、それはパーティーのリーダーやサブリーダーとしてだと断りを入れた。3人は??だったが、取り敢えず頷いていた。
「決して手を離さないで。壁抜けで行くから」
もう一つ分かったのは、二人のスキルは必ずしもスキル発動者に直接触れている必要がない事だ。例えばこの5人が手を繋ぎ、最終的に術者と連結されていれば大丈夫なのだ。人数の上限は分からないが、少なくともこの5人の場合はインビジブルと壁抜けは共に発動する事が分かった。先程ソフィアが先に三郎に触れた時に、術の効果が三郎にも発動したから分かったのだ。
出発前に三郎は改めて奴隷の子達を見た。これまで奴隷について受け入れ難く、特に顔と言うか眼をまともに見れなかったのだ。
ソフィア 15歳
肩までの青い髪、大きな目が印象的な可愛い系の美少女
身長150cm位と、この世界の女性の平均より少し高い。Cカップで細身。成長期で身長は伸び中
アルテミス 16歳。
腰までの金髪。
身長155cm
Dカップとかなり胸が大きい。顔立ちは美女系で目が細い。体格は細いがミライほどではない。この世界の女性としては背が高い方だ。
ミライ 17歳
銀色のショートカット。
身長165cmとこの世界では男性を含めかなりの高身長。
すらっとしたモデル体系で、Aカップと控え目な胸。
顔立ちはおっとりした優しいお姉さんタイプ
こんな感じだ。まだ気を許していない為、本来の性格は不明。
3人の少女を一瞥し、ため息をついてから三郎は動き出した。動き出したのは三人が頷いたからだ。今いるのは上の方の階の為、壁抜けで下に降りた。壁抜けで下に降りる時は不思議な事にゆっくりと落下しており、ふわっと着地する感じだった。迂闊だった。いきなり本番で、落下に備えていなかったからだ。結果オーライだが、もしも足を挫いていたら治療に時間が掛かり、出遅れる可能性があったのだ。
剛から一つ分かった事があると伝えられた。スキル発動中は別のスキルが使えない。気配を殺しながら遠見を使えなかったと言っていた。しかもそれは二人のスキルが同時に使えなかったから、同行者にも同じ事が言える。もう一つ分かったのは、スキルを発動中に後から別のスキルを発動すると、先に発動しているスキルはキャンセルされる。だから壁抜けをする時はインビジブルが使えない。その為壁を抜けた先に敵がいるとばったりの遭遇戦だ。だから壁抜けをする時は戦闘態勢が必須だ。それと剛は剛で壁抜け完了後即時インビジブルを発動する必要がある。また、壁抜け中にインビジブルを発動してみたが、発動しなかった。手が繋がった者全員が通り抜けるまでは発動する事が出来なかった。
下の階に降りると5人の敵兵がいた。幸い気付かれる前にインビジブルが間に合ったから皆安堵した。先に倒した奴らと同じ装備だから敵と判断した。三郎は不意打ちをした。連結の最後を三郎にしていた。その兵は気配の無いままいきなり頭が転がり吹き飛んだ。敵兵達は混乱した。何かがいる!というのは分かるが、12畳位の部屋で全てを見渡せるのに敵の姿が見えないし、勿論気配もない。
三郎が念じれば4節棍、3節棍と姿を変えたり、只の長い棒にも変えられる。ヌンチャクも棍と棍の間の鎖も長さは自在だった。更に棍の尖端を尖らす事も可能で、今は敵に突き刺すようにヌンチャクを振るった。結局敵は訳のわからぬまま皆死んでいったが、三郎は偶然振られた剣で頭に切り傷を負った。それを見た少女達が狼狽えてキャーと悲鳴を上げていた。
だが三郎は冷静に回復魔法を使い傷を治した。服に付いた血はどうしようもないが、兵士から短剣を奪い少女達に渡した。兵士のブロードソードだと少女には重過ぎて扱えなさそうだからだ。期待はしてはいない。せめて身を護る武器がないと不安がると思ったからだ。
先程三郎をリーダーとして一旦パーティーを組んでいた。やり方はなんとなく分かったので実行していた。どうやら三郎が倒した分の経験値はパーティーメンバーも得られると判明したので行ったのだ。
ただ、今の段階でステータスを見る余裕はなかった。
余裕が無く、召喚された時に今の段階で言葉が通じている事に何の疑問も持っていなかった。それと文字は読めたが書けない。一瞬記号に見えていたのが次の瞬間には読める文字になるのだ。
また、剛は直接殺していないが、三郎は数人の兵士を殺している。剛の弓は行動不能には出来たが、致命傷には至っていなかった。二人共人間を傷付けたり殺す事に対し忌避感や、人を殺した事による精神的な落ち込み等がまるでなかった。
5人は既にレベルが上がっている。この世界は冒険者に登録する時に魔物と対峙する為の特別な力を得られる。特殊な魔道具に手をセットし、儀式の代わりに魔道具を発動させ、神々と契約する。ただ、どの神と契約するのかは勝手に選ばれていて、誰もコントロール出来ない。ハズレもあるのだ。戦闘系になりたいのに生産系の神だと項垂れる結果になる。
三郎達の場合は召喚された時だと思うが、いつの間にか契約をされていた。スキルはその神から授かっていたのだ。また、魔力適正もそうだ。
また奴隷はその神との契約者の所有となった時にやはり契約が勝手にされている。神との契約者は魔物に限らず人を殺したりすると、殺した相手の強さに応じて経験値を得られ、レベルアップする。するとステータスがアップしたり、使える魔法が増えたりする。また、稀に新たなスキルを得られると。
そう、奴隷の3人ももう契約者であり、戦闘訓練をすれば魔物と戦える。
冒険者になる時に魔道具を使うが、素質がないと発動しない。概ねだが、発動するのは2割と言った感じだ。それからすると、三人共契約されたのだが、それはそれで凄い確率だったりする。元々奴隷の3人は魔法が使えた。これはかなり稀な事らしい。
ただ、今はなんの役に立たないお荷物だ。兵士の死体から予備武器の短剣やナイフを渡し、先の剣と取り替えていた。彼女達は非力で数振りすれば力尽きるので、軽い小型の武器に変えたのだ。
三郎は今の段階では独学のヌンチャク技で相手を倒しているが、あくまで不意打ちや、精々二人を相手にするのが精一杯だ。乱戦になると背後からやられるのがオチであり、本人も分かっている。先程はあわやといった感じだった。しかも手練に通用するのかは不明なのだ。
現時点で姿を現して戦うのは背後に剛達がいて背後を気にしなくても良く、前方の敵のみを相手にするのが精一杯であった。
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