第5話

「乾杯ー!」

「乾杯!」


 アセロラジュースの入ったグラスを岡田と加藤のグラスにぶつける。


「やっぱり初手は『有身論』だよねー」

「あ、『有身論』」

「響が一番好きな奴じゃん」

「えー!アデルも好きなんだ。なんだか嬉しいなぁ。せっかくだしデュエットする?」

「いいよ」


 カラオケはとても楽しかった。加藤と僕の趣味は合った。UNTERMRADだけでなくEVEningが好きなのも一緒だった。アニソンばかり歌う岡田だけが仲間外れにされていく。


「お前ら本当に運命じゃん。もう付き合えば?」


 岡田が僕も好きなアニソン『インストール』を歌い終わった後マイク越しにそう言った。


「俺トイレ行って来る」


 岡田がそのまま席を外してトイレに行った。部屋に残された僕と加藤。隣に座る加藤が身を寄せて僕の手を握った。異性と手を繋ぐのは初めてのことだったので緊張する。


「ねね。私ね。今日少し一緒にいて思ったの。本当にアデルのことが好きだって」


 そう言って加藤は抱きついて来る。僕はどうしたらいいのか分からなかったが、抵抗はしなかった。そしてそっと抱き返した。


「アデルは私のこと好き?」

「分かんない。でも嫌いじゃないとは思う」

「そっか……」


 そう言って加藤は離れた。もう少しだけハグしていたいと思った。


「あ!次の曲『過去過去過去世』だ!」


 カラオケは続く……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る