第60話 時間切れ
――では忘れないうちに、べにの部屋の情報を。
ササオ「”旅行鞄”の中身だが、『サバイバルナイフ』が一つ見つかった。かなり使い込まれているものだ」
べに「女の子の鞄まさぐるなんて、サイテー!」
ササオ「……安心しろ。お前みたいなガキに興味はない」
べに「はっ、はっ、はっ、はあああああああ? それ、こっちのセリフなんやけどもおおおおおおおおお?」
ササオ「殺人犯の特定は、全てに優先する。……ナイフについての釈明を聞かせてもらおうか」
べに「…………」
ササオ「なるほど。だんまりってことだな」
――ということでみなさんはまた、談話室に戻ってきたことにしていいでしょう。
最後の会議フェイズです。
あくむ「それなら、べにの部屋の情報から解決していきましょ。……ねえ、べに。あなたやっぱり、わたくしに隠してることがあるでしょう?」
べに「……なんのこと?」
あくむ「あなたのスケジュール帳を見たら、『月に一回、どこかに出かけてる』ことがわかりましたの。……これは、どうして? ひょっとして、浮気?」
べに「ち、ちゃうちゃうちゃう! うち、……じゃない、私が好きなのは、あくむちゃんだけ! あくむちゃん、ラブ!」
あくむ「……………ほんとにぃ? じゃ、”ナイフ”の件は? あなたが隠した”お弁当箱”のことも気になるし」
べに「サバイバルナイフは、……一応、護身用や。ひょっとすると、何かあるかもしれへんかったし」
あくむ「なにか? ……ねえ、べに。あなた、美郷荘で殺人があること、知ってたの?」
べに「そ、そんなことないそんなことないっ。それは完全な勘違い」
あくむ「ふーん。じゃ、”お弁当”は?」
べに「それは、……最近、ちょっぴり太り気味で……お菓子ばっかり入ってるから……恥ずかしくて……」
あくむ「嘘。それなら、隠すことないでしょう」
べに「だってだって! ……それ以外に説明のしようが……。そ、それ言うなら、あくむちゃんかて、へん! あくむちゃんの部屋の”スマホ”を調べたら、こんな情報が出てきたよ!?」
あくむ「え?」
べに「『
あくむ「げ」
――(これは危険な情報だぞ。……どうなる?)
べに「……ねえ、あくむちゃん。あなた……ひょっとして……」
あくむ「なあに?」
べに「いや……………その………………や、やっぱり、なんでもない……」
――(Bちゃん、追求しない方針か。無理もない。べににとって、恋人の気持ちが自分に向いていない可能性なんて、考えたくもないだろうし)
ササオ「痴話げんかはそこまでだ。……さっさとケンノスケさんの情報を共有しよう」
べに「せ、せやね。……ええと、……私の情報は、たった一つだけや。『ケンノスケさんは、すぎさっきーのファン。彼女の盗撮画像を見つけた』ってこと」
あくむ「……そうね。彼については、間違いないと思う。わたくしも、『女性の髪の毛を収集した小瓶』を発見したわ。たぶんこれ、杉上サキコさんのものじゃないかしら」
べに「え、髪の毛……? き、気持ち悪っ!」
――さて。
これでおおよそ、情報共有は終わった感じでしょうか。
あとは、他の客に話を聞くだけですね。
B「……ちなみに、”謎の小瓶”の髪の毛が、杉上サキコさんのものであるっていう根拠は?」
A「特に、ありません。メタ推理ですけど、キャラメイクによっては男である可能性もある、PL1、PL2の可能性は低いかと」
B「でもそれなら、アカリさんの可能性も……」
A「たぶん、それはないでしょう」
B「なんで?」
A「彼、アカリさんに嫌がらせの手紙を送った人、張本人だから」
B「えっ。そうやっけ」
A「ねえ、GM。さっき事務室のゴミ箱で見つけた”嫌がらせの手紙”と、ササオさんが見つけた”スクラップブック”の文字、照合することはできますか?」
B「えっ。…………ああ! なるほど……」
――そうですね。では《読心術》で”知力”判定をしましょう。
判定は”すごく難しい”で……、
A「ちょっとお待ちを! あたしここで、《雑学》を使います」
――?
A「世界一の筆記用具会社の長女であるあくむは、
――ほう。いいでしょう。
では、難易度を”難しい”、出目14以上で成功にしてください。
A「ほいきた! 【ダイスロール:8(+8)】 よしよしよし! 成功!」
――では円筆あくむは、文字の照合に成功します。
『死ね』と書かれた二つの文字は、間違いなく同じ人間が書いたものでした。
あくむ「決まりね」
べに「うん。……まずケンノスケさんを呼んで、このことを聞こぉ」
――はい。
ではケンノスケさんは、なんだか不安そうな顔つきであなたたちの前に現れます。
彼は、あなたたちからいまの話を聞かされて、顔色を真っ青にするでしょう。
あくむ「ってわけで! あなたはサキコさんのストーカーで間違いないってこと!」
ケンノスケ「う、う、う、う……」
べに「観念しな、変態ヤロー」
ケンノスケ「ううう……うううううう…………!」
――彼は、しばらくうずくまったあと……、
ケンノスケ「……それが、何か?」
――と、真顔で訊ねます。
べに「げ。居直りよったで、こいつ」
ケンノスケ「別にぼく、なんにも、悪いことをしたつもりはないけど。だってぼくは、すぎさっきーを守る、
べに「……な、騎士やて?」
ケンノスケ「そうとも。……だってここのところ、ずっと、彼女の様子がおかしかったから。彼女にはぼくの助けが必要だったんだよ」
べに「どういうこと?」
ケンノスケ「だってさ、いつも月曜日は必ずゴミを捨てるはずなのに、ゴミ出ししなかったし、日課のはずのベランダ日光浴もしない。なんだか不気味だよ」
べに「今んとこ一番不気味なんは、あんた自身やと思うけど」
ケンノスケ「ふん。……孤高の騎士は、誰にも理解されないものなのさ」
べに「……うわ。なんだか鳥肌立ってきた」
――そんな感じで、ケンノスケさんは態度を豹変させてしまいました。
B「この人、少なくとも殺人犯じゃないっぽいけど、いまからでも真犯人ってことにならへんかな」
――なりません。
A「でも、いまなら何か、教えてくれるかもしれません。……ササオさんがミ=ゴの情報を出してくれたみたいに」
B「せやね」
――なお、残り時間的に、あとあなたたちが出来る質問は一つか二つくらいでしょう。
B「わ。いつの間にか、結構時間経ってたっぽい」
A「ええと……じゃ、こう訊ねてみましょう。『誰か、この中に怪しい人はいないか?』」
――するとケンノスケさんは、こう答えます。
ケンノスケ「え? そう言われても。……さあ?」
――どうやら、今度こそ嘘を吐いている様子はないですね。
A「ハズレか」
B「ほな、今んところ一番怪しい、杉上サキコさんの情報を……」
――では、サキコさんについて訊ねられた彼は、
ケンノスケ「すぎさっきーだね。彼女は史上最高のYouTuberだよ。ぼくは、彼女の動画は全部観ているんだ! 来月なんか、憧れのヘカキンとのコラボも予定されていて……スゴく楽しみだ!」
――と、こう答えるでしょう。
A「うーん?」
B「やば。なんかこれも、……ハズレっぽい」
――ではそろそろ、最終推理の時間に……、
A「あっあっあっあっ。やばい」
B「これ、情報足りてないんじゃ」
A「わんもあちゃんす! おねがいします!」
――えーっ。……でもきみたち、ササオに厳しかったしなー。
A「でもでも、《魅了》に成功しましたよ?」
B「そうそう。悪くは思われてないはず」
――ふーむ。
では、最後の質問をみんなが許してくれるか、ダイスで判定しましょう。
A「やったあ! おじさん、大好き!」
――おじさんではない。……っていうかいまの、普通に恥ずかしいから。
A「ふひひひ」
【To Be Continued】
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