第52話 死体発見

A「さて」

B「さてさてさて」

A「さ――――――――――――て」

B「倉庫の中にはいったい、どのようなアカリさんの死体描写が?」


――展開を先読みしないでください。


A「だってだってー」

B「『美郷荘殺人事件』やし。……そろそろ、死体が発見されんと嘘ですよぉ」


――やれやれ。

 まあ実際、その通りなんですけどね!


B「やっぱり!」


――薄暗い倉庫の中、古里ニンジロウが慌てて電灯のスイッチをつけると……あなたたちはすぐさま、”それ”に気づくでしょう。

 ぼさぼさの髪を地面に投げ出したまま倒れている、古里アカリの姿です。


ニンジロウ「アカリ……どうしたんだ、アカリ……!」


――ニンジロウが駆け寄り、彼女を抱き起こします。

 しかし彼は、はっとして手を離しました。

 その瞬間には、あなたたちも気づくことでしょう。

 古里アカリが、もはや息をしていないこと……そしてその死因が、極めて異常なものであることに。


A「異常?」

B「…………ほうほうほう」


――室内に、ニンジロウの野太い悲鳴が響き渡ります。

 同時に山城ササオが、ライトを死体へ向けるでしょう。

 その刹那、あなたたちははっきりとそれを見てしまいます。古里アカリの後頭部に、ぽっかりと筒状の穴が空いていることに。

 直径10センチほどのそれは頭蓋骨を貫通し、脳漿で濡れた腔内が、光を受けててらてらと輝きます。

 あなたたちは直感しました。この女性はいま、何らかの冒涜的な手段により、脳みそを抜き取られてしまっている、と。


B「脳を抜かれてる……? やっぱこれ、のせいやんけ……!」

A「? なにか知ってるんですか? Bちゃん」

B「ああいや……ええと。これ、言ってもええのかなあ?」

A「なになにー?」


――プレイヤーのリアル知識は、キャラクターには反映されませんよ。


B「わかってますぅ」


――では、このように異常な事態に出くわしたあなたたちは、【1D6-1】の狂気値を加算する必要があるでしょう。


A「【ダイスロール:3】 2点」

B「【ダイスロール:6】 グエー。4点」


――その場にいたササオとニンジロウもまた、それぞれショックを受けたようですね。あなたたちはそこでしばらく硬直していましたが……やがて、ササオが重々しい口を開きます。


ササオ「とりあえず、いったん談話室に戻った方がいい。ここを捜査するにしても、万全な防寒具を着込んでからだ」


――と、提案しますね。


B「そっか。ほな、戻ろっか?」

A「ちょっとまった! ひょっとして何かのトリックが関わってるかも。私はここに残って調べたいです」


――ほう。そうきましたか。


B「ええんですか? なんかNPCの口調的に、戻った方がいい雰囲気がしましたけども」


――では、一箇所だけ調べたいところを指定して、情報を得てもいいでしょう。

 ただし、一箇所だけです。それ以上ここにいると、凍えてしまいます。


B「おお。ボーナス情報を手に入れられるんかも」

A「……あるいはそもそも、大した情報はない、とか」

B「うーん。どやろ」

A「とりあえず、確実に情報があるのは”死体”でしょうね」

B「せやね。ほな、それだけ調べとこ」


――では、二人で死体を調べます。

 ”知力”判定、難易度は”不可能”。出目の合計21以上で成功します。


A「21って……。それ、ほとんど成功させる気がないのでは? 【ダイスロール:8(+8)】」

B「【ダイスロール:8(+11)】 二人とも失敗やね」


――では二人は、『頭部にぽっかりと穴が開いている。それ以外に外傷はない。』という情報を得るでしょう。


B「さっき聞いたやつー」

A「既出情報ー」


――そこでニンジロウさん、さすがに辛くなってきたらしく、こういうでしょう。


ニンジロウ「す、すまない二人とも。今のところは、いったん出直してこないかい。このままだと、妻の仲間入りしてしまいそうだ……!」

あくむ「軽口を言えるようなら、まだまだ頑張れそうですけれど」


――ササオさんが、渋い表情でこう続きます。


ササオ「実際、これ以上ここにいると、危険だ。いったん戻ろう」

あくむ「んもー。……これでササオさんとニンジロウさんの共犯とかだったら、許しませんよ」

ササオ「馬鹿言うな。俺はこのペンションに、初めてきたんだぞ」

あくむ「どうだか」


――ではあなたたちは、男二人に促されて美郷荘へ戻るでしょう。

 雪が窓を叩く、ぱたぱたという音が響く中、ペンション客一行は談話室に集まります。


A「みんなへの、情報共有は終わってます?」


――はい。

 話を聞いたケンノスケ、サキコは顔色を青くしていますね。

 その後、ニンジロウが代表して、麓へ繋がる直通電話で警察に電話しましたが、


ニンジロウ「……やはり、この大雪で山道は完全に塞がっているらしい。ロープウェーも動かないようだし、警察がここに来られるのは、吹雪が止んだ後以外にないようだ」


――とのことです。

 彼はそのままソファに座り込んで、頭を抱えてしまいました。

 室内は気まずい雰囲気の中、しんと静まりかえります。


A「ええと。いろいろ話しかけていいですか?」


――もちろん。


あくむ「ニンジロウさん、……大丈夫ですか?」

ニンジロウ「いやはや……すみません。せっかくのお休みが、こんなことになってしまって……」

あくむ「いいえ。……正直、なんとなく厭な予感はしてたんです」

ニンジロウ「ああ! それにしても……あいつなしで、これからどうしたらいいんだ……!」


――そう言って彼は、すっかり途方に暮れていますね。


べに「えっと。……事件について、すこし聞いても良い?」

ニンジロウ「すまない。いまは少し、状況を整理させてくれませんか?」


――そう言うばかりで、取り付く島もない感じでしょうか。


B「これ、シーンを進めないと同じセリフ繰り返すだけっぽい」

A「まあ、無理もないですけどね。……そんじゃ、ササオさん、ケンノスケさん、サキコさんの順番に話聞いていきましょー」


――では、あなたたちがササオさんを見ると、以前も見かけた謎の機械を弄くりながら、一人でぶつぶつ言ってますね。


ササオ「ふーむ。しかしこれは……どういうことだ……?」


――って感じで。


A「話しかけても無駄ですかね?」


――はい。「いまちょっと忙しい」って感じです。


B「ほな、次で」


――ではケンノスケは、


ケンノスケ「ま、ま、まさか……すぎさっきーの友だちが死んでしまうなんて……。こういうとき、一人でいるのは死亡フラグっすよね!? ぼくはみんなのいるところにいます!」


――という感じで、電波の繋がっていないスマホを無意味に弄っています。


A「最後に、サキコさん!」


――では、あなたたちがサキコに話しかけた時、彼女は小さく、こういうでしょう。


サキコ「なんてこと……! まさか、こんなことになるなんて……」


――そして彼女は、力なくうなだれてしまいます。

 見ると、杉上サキコの顔は、汗でびっしょりと濡れているでしょう。


A「おや」

B「ありゃ」

A「はやくも、二人目の犠牲者が!?」


――サヨナラ! 次の瞬間、サキコは爆発四散して死亡!


B「ナ、ナニーッ!?」

A「うそだっ」


――……はい。

 さすがに、そうはなりません。まだ生きてます。


【To Be Continued】

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