第51話 消えたアカリさん

――さて。

 夕食後、自室に戻っていま、時刻は九時を回ったころでしょうか。


A「ふたりは、何をして過ごしてるかな?」

B「なにってそりゃもう…………恋人同士なんだし……」

A「ちょっとちょっとちょっと! いけませんよ。嫁入り前の娘が、そのようなことを口にしては」

B「かたいこというなあ。付き合ってるんやし、普通のことやと思うけど」

A「…………とにかく! あくむとべには、清い関係のまま時間を過ごすんです! その、……なんか、『遊戯王』とかして……」

B「えっ。うち、カードゲームほとんどやらんから……」


――出先でTCGやってる女子大生カップルは私も厭だなあ。


A「じゃ、ポケモン! ポケモンして過ごすの!」

B「えーっ」


――じゃあまあ、そういうことで。

 二人は、ユンゲラーをフーディンに進化させたり、メタモンをいろんなポケモンと交配させたりして過ごすでしょう。


あくむ「わあ! あなたのガブリアス、5Vじゃないの! すごいすごーい!」

べに「う、うん……」


――と、その時です。

 あなたたちの部屋を、こんこんとノックする音が聞こえました。


ニンジロウ「夜分にすいません」


――声は、どうにも恐縮した感じですね。


B「うわ。この人、夜中に部屋をノックするなんて、空気読めへんなあ。本当にベッドインしてたらどうするつもりやったんやろ」

A「…………………………。とりあえず、扉を開けましょう」


――ではニンジロウは、きっちり頭を下げたあと、二人に尋ねます。


ニンジロウ「す、すいません。……実は、アカリ……妻の姿を探していまして」

あくむ「アカリ? アカリって言うと、あの……」

べに「ユーレイみたいな人やろ?」

あくむ「こらっ。べにったら……」


――すると、彼は「仰るとおりです」と呻くように言って、


ニンジロウ「このようなことをお客さんに言うのは心苦しいんですが、実を言うと妻は、一ヶ月ほど前から様子がおかしいんです。ひょっとすると、不意に外に飛び出していったりしないかと不安で……」

あくむ「はあはあ。なるほど」

べに「でもあたしたち、ずーっとここでポケモンやってたからなあ」

あくむ「ちょっと心当たりはないですねえ」

ニンジロウ「そ、そうですか。……では、もし彼女を見かけたら、私にまでご連絡いただければ助かります」


――そう言って彼は、廊下を歩いていきますね。


A「手伝った方がいいかしらん?」

B「まあ、そらね」

A「でもそれって、普通の女子大生がすることでしょうか」

B「たしかに、……せっかくの旅行先やのに、ねえ?」

A「ポケモン、再開しちゃおっかな?」


――別に、それでも結構ですよ。


A「まさか、それで即バッドエンドに直行する、なんてことは……」

B「どーやろ。さすがにそこまで意地悪なことはないんちゃう?」


――さあて。それはどうでしょう。


B「……なんか、ちょっと怖くなってきた。一応、行こっか」


――(にっこり)


べに「あ、あ、あのさ。あくむちゃん。このまま何か起こっても寝覚めが悪いし……ニンジロウさんのこと、手伝わへん?」

あくむ「お節介を焼くわけ?」

べに「旅先の親切も、たまになら悪くない。せやろ?」

あくむ「それもそうね」


――そうして二人は、外へと向かうことでしょう。

 すると、誰かに呼ばれたらしいニンジロウさんが、どたどたと階段を降りていくのが見えます。


A「じゃ、追いかけます」


――あなたたちが階段を降りると、すぐそばにある玄関に、山城ササオが膝をついていることに気づくでしょう。

 二人とも、”五感”判定を。難易度は”普通”、合計12以上で成功です。


A「はいはい 【ダイスロール:6(+11)】 成功!」

B「【ダイスロール:7(+8)】 せいこー」


――では二人は、玄関周りに積もった溶けかけの雪を見て、最近だれかがドアを開閉したことに気づくでしょう。


あくむ「これは……」

べに「こんな夜に外へ出るなんて、まともな人のすることやない。まあ、普通に考えて、アカリさんが外へ行ったんやろね」

ニンジロウ「なんてことだ! こんな状況で外出なんて、死んでしまっていてもおかしくないぞ」


――と、そこでササオさんが、出入り口付近にあるキーフックに目を向けます。


ササオ「おい。鍵が一つなくなってるぞ」

ニンジロウ「本当だ! これは……倉庫の鍵です」

ササオ「ってことはアカリさん、倉庫へ向かったことになるが」

ニンジロウ「倉庫へ? ……何を取りに行ったんだろう……?」

ササオ「とにかく、彼女を迎えに行った方がいいんじゃないか」

ニンジロウ「それもそうですね」


――ということで、二人は倉庫へ向かうようです。


A「……………ひょっとしてこのシナリオ、GMの一人二役、多め?」

B「落語聞いてるみたい。楽しくなってきた」


――そっとしておいて下さい。

 で、二人はどうしますか?


A「もちろん、ついてきますとも」

B「まあこの流れ、……十中八九、事件はすでに起こってるやつやろーね」


――では二人は、防寒具を引っつかんで外出の準備を整えます。


ニンジロウ「アカリ! アカリー!」


――ニンジロウさんが悲痛な叫び声を上げる中、一行は雪の降り積もる道を真っ直ぐ、倉庫へ向かっていきます。

 程なくして倉庫に到着したあなたたちが目の当たりにしたのは……固く閉じられた扉でした。


ササオ「な、なんだこれは!?」


――見ると、両開き扉のドアノブが、ロープでグルグル巻きにされています。


A「あー」

B「ありゃりゃー。やっぱりかー」

A「これ、絶対死んでるでしょ、アカリさん」


――すると、これはただ事ではない、と気づいたササオさんが、ポケットナイフを取り出すでしょう。


ササオ「こんなものしかないが、……このロープ、うまく切れるだろうか」


――さて。ここでミニゲームです。

 これからあなたたちは、ナイフ攻撃(命中率:18)を5度成功させることでロープを切り、扉を開けることができます。

 ただし、三度チャレンジするたびに、その場にいる全員が1点ずつダメージを受けてしまうでしょう。


A「最速でクリアしてもダメージは確定かー。けっこうまずいかも」

B「あ、それなら、うちがやります」

A「べにちゃん、ナイフ得意なの?」

B「まあね」


――では、ダイスロール、どうぞ。


B「【ダイスロール:14(+10)】成功、【ダイスロール:17】成功、【ダイスロール:19】成功、【ダイスロール:12】成功、【ダイスロール:11】成功。……オール成功でフィニッシュです」

A「すげええええええええええええええええ」


――どうもべにさん、ナイフの扱いに慣れているようですね。

 では、二人とも1点だけダメージを受けて、次のシーンへ移行します。


あくむ「あ、あなたひょっとして、軍隊経験とか、あるひと?」

べに「あくむちゃんのために、急いだだけ。……さあ、いこ!」

あくむ「やだ……。かっこいい……」


【To Be Continued】

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