4章 現代編『美郷荘殺人事件』

第47話 秘匿ハンドアウト

(過剰なまでに整理整頓されたワンルームで、三人の男女が向かい合っている。

 一人は、どこか哀しげな目をした中年男。

 それと相対する格好で、若い娘が二人、温かいお茶を啜っている)


(男がふいに、クラシックの名曲集を流し始めた。

 彼らの物語が始まる)




――ではでは。


A「はいはい」

B「さてさて」


――やっていきましょうか。


A「おっけー!」


――では二人ともに、秘匿ハンドアウトを配ります。

 これは秘密の内容なので、お互いに知られないよう、ご注意下さい。


A「はーい」

B「あ、うちこういうの、顔に出てまうタイプ。……いったん退室してよろしい?」


――もちろんです。




(少女Bが席を立つ)

(そして、五分ほど経過した後、戻ってくる)




A「………………………ふーむ」

B「………………………うーん」


――二人とも、なんだか顔色が良くないようですねぇ。

 よろしければ、何か甘いものでもお出しましょうか?


A「それは……まあ、どっちにしろ必要ですので」

B「せやね」


――では、コストコで買ってきたリッツリンドールのチョコを差し入れましょう。


A「(もしゃり、もしゃりと無言でチョコレートを頬張る)」

B「(上に同じく)」


――では、さっそくキャラクター作成をお願いします。


A「ふわぁい」


――すでにハンドアウトをお読みになられたお二人ならご存じでしょうが、あなたたちは『最近付き合い始めた恋人同士』という設定です。


B「恋人……こいびと……。うふふふふ。いややわ、GM。そんな設定持ち込むなんて……」


――なにかまずかった?

 もし、そういうロールプレイが苦手なら、別のシナリオの用意もあるけど。


B「ああいや、ぜーんぜん! そんなことはないんですけど……!」


――ちなみにこの”恋人同士”という設定ですが、男同士・女同士でも一向に構いません。


A「あ、それなら、女の子同士にしませんか?」

B「それってつまり……百合設定……ってコト?」

A「そーいうこと」

B「じゃ、じゃ、じゃ! そーしよ!」


――(なんだかBちゃん、いつになくテンションが高いな)


A「じゃ、あたしたち、幼なじみって設定で……」

B「付き合いは長いんやね。でも恋人になれるってわかったのは、ごく最近、と」

A「女の子同士ですからね。その辺、難しいこともあったんでしょう」

B「きっといまは、一番幸せな時期やろうね」

A「うんうん。だんだん固まってきた!」



(コロコロ……カキカキ……)



A「ええと。……できました!」

B「うちも」


――なお、今回のシナリオですが、キャラクターシートはGMだけが目を通すものとします。

 ひょっとすると、設定にネタバレが含まれてるかもしれませんからね。


A「そんな、空気読めないことしませんよう」

B「……………」

A「……………」

B「……………あ」

A「?」

B「ちなみにAちゃんのキャラ名、なんていうの?」

A「えーっと。あくむ、にしようかな。円筆あくむ。せっかくなので、ちょっぴり変わった名前で」

B「……告白したん、うちからってことにして、いい?」

A「もちろんおっけーですよ」


――……。

(なんだろう、この会話。……尊い……)


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


キャラ名:円筆 あくむ

 体力:9

 精神力:6

 筋力:3

 知力:8

 五感:11


 設定:名門、円筆まるふで家の長女。22歳の女子大生。

 長い黒髪に、吸い込まれそうなほど昏い目をした美女。すこし高飛車な性格で、同級生の間では”魔女”とか”悪役令嬢”とか呼ばれてるタイプのひと。

 お金持ちの家の子であるため、お金にはまったく困っていない。ポケットの中にはいつも百万円が入っており、ことあるごとに札束でぶん殴ろうとする(物理的に)。


●覚えたスキル

《鑑定眼》:”知力”判定成功で、アイテムの効果や性能を調べることができる。

《連続攻撃》:精神力を1消費し、1ターンに二回メインアクションを行う。

《応急手当》:【1D6-1】のダメージを回復する。このスキルは一日に一回しか使えない。

《激励》:セッション中一度だけ、自分以外のキャラクターの【2D6】以上の狂気値加算を【-1D6】する。

《第六感》:奇襲攻撃、事故によるダメージロールの前に宣言できる。その後”筋力”判定に成功することで攻撃を回避できる。

《魅了》:異性との交渉に使用可能。行為判定の難易度が1段階下がる。

《読心術》:相手が嘘を吐いているかどうかを判別する。このスキルの判定は、ダイスをGMが振って、出目を言わずに結果だけを言う。

《超集中》:”五感”を使った行為判定の難易度が3段階下がる。1セッションにつき1回しか使えない。

《雑学》:三種類まで、そのキャラが詳しい雑学を設定する。それに関連した行為判定の難易度が1段階下がる。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


キャラ名:色式 べに

 体力:6

 精神力:5

 筋力:10

 知力:11

 五感:8


 設定:色式いろしき家の末女。あくむの幼なじみ。

 子供の頃、同級生男子にいじめられているところを助けられてからというもの、ずっとあくむのことが気になっていた。

 あくむに恩返しするため、いまは身体を鍛えている。戦闘力が高いのはそのため。


●覚えたスキル

《ナイフ(初級)》:ナイフを使った命中判定に【+1D6】する。

《ナイフ(中級)》:ナイフを使った命中判定に、さらに【+1D6】する。

《暴走》:5点の狂気値を加算する代わりに、あらゆる攻撃行動のダメージを【+1D6】する。

《体操》:登攀、跳躍に関係した”筋力”判定のダイスの出目を+2。

《根性》:致命的なダメージを受けた時に使う。精神力を全て消費して、どのようなダメージでも”体力”1で生き残る。

《邪悪な心》:悪事に荷担することで狂気値を回復する。回復量は行動の内容によって変わる。

《追跡》:”知力”判定成功で、移動した痕跡を調べてそれを追いかけることができる。

《鉄壁》:”体力”にダメージを受けた時に使う。精神力を3消費して、【1D6-2】を振る。出目分のダメージを軽減する。

《逃走術》:敵から離れるとき、機会攻撃を受けない。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


――うんうん。Aちゃんは探索系キャラ、Bちゃんは超攻撃的なキャラクターだね。

 バランスが取れていて、良いんじゃないかな。


A「……………(ちらり)」

B「……………(ちらちら)」


――おや? どうしました、二人とも。

 なんだか、お互いの顔色をうかがったまま静止していますが。


B「ああ、いや……」

A「なんていうか……」

B「気のせいかもしれへんのですけど、……うち、なんか生きて帰られへんような気がして」

A「それな」


――さて、それはどうでしょう。

 ではこれより、セッションを始めます。

 現代編シナリオ『美郷荘殺人事件』。よろしくお願いしますね。


A「よろしくお願いします!」

B「はい、よろしゅうに~」


【To Be Continued】

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