第232話・女子高生おんぶに乘ってたら上り坂になってきた

「いきなり歩くペースが落ちたけど、キヨコ・・まだボクをおんぶして歩けるよね」とおんぶ上から脳天気に催促すると

「あそこから上り坂なのよー。おんぶしてもらってる人は、上り坂だってこと感じ

取れないんですか? おんぶさせられてるこっちは大変な思いしてるのに」

「あっそうなんだぁ、上り坂なんだ。おんぶしてもらってると上り坂でも平地と同じように楽ちん楽ちんで乗り心地いいから、わからなかったぁ」

「わからなかったぁーなんてひどいよー」

「上り坂っていってもボクが気づかないくらいだから、ちょっとでしょ?」

「そのちょっとが、こんな重いのおんぶしてるとキツいのよ。70キロもある男の人をおんぶなんて・・・わたし41キロなのよ」

「そうなんだ。頑張れガンバレ。キヨコなら頑張れるよ」

「あーー重いぃぃぃぃ」

「キヨコー。ボクの身体がずり落ちしてるから一度ポンと跳ね上げてよ、腰使って」

 立ち止まるとキヨコはボクの指示通り跳ね上げてくれ、乗り心地の楽な高さに修正してくれた。

「うん、この位置なら乗り心地安定しててボクは楽だよ。ズリオチしてきたら、またこの位置に跳ね上げてね」

 おんぶってのは、上と下の2人の身体がこんなに密着してるのに、下で支えてる

女の子の苦痛な思いが、上に乘ってるボクには、実感としてはまったく伝わってこないのが不思議だ。実感としては伝わってこないが、論理的な想像はできる。体重

70キロの男という大荷物を背負って歩くのはかなり大変だろうな、ってのは実感ではなく、想像である。

 70キロの荷物なんて、男にとっても大変である、それを華奢な女の子にやらせるなんて・・、というのも想像であって、女の子に70キロをおんぶさせるのと、男がするのと、大変さにどれほどの違いがあるのかは、実感としては、上に乘ってばかりの人生のボクにはわからない。

 とはいえ、余裕でボクなんかを担ぎ上げてしまえる男におんぶされても気持ちいいと感じたことはなく、必死に頑張る女の子のおんぶには性的に興奮する、っていうこの感傷は、女の子の苦痛をボクの性的快感に変換してるってことだろうか。女の子の苦痛を・・・、ってことだと、やっぱりボクは女の子の敵なんだろうか。女の子の敵のボクを女の子がおんぶしてくれてるって・・萌えぇぇ。

 そんなことを思いふけりながら、キヨコの黒髪をいじっていると

「もうこれ以上キツいです。おんぶ降りてください」

「ここの上り坂って、そんなにキツいの?」

「おんぶしてると、ちょっとの上り坂でも、もう足が上がらないん」

「わかったよ、上り坂のとこは降りるね。だけど上り坂終わって平らになったところからはまたおんぶしてくれると約束してくれなら・・」

「えーっ、そんな約束やだー」

「じゃあ、ボクも今おんぶから降りるのヤダー、だって今、ものすごく気持ちよく

感じちゃってるところなんだもん。ああーっ女の子のおんぶって気持ちいいいー」と言いながら、キヨコの身体を両腕両足でギューッと握り締めるように抱きしめると

「苦しいです。わかりました、あとでまたおんぶするから、とりあえず今は降りてください」と。

「うん約束だよ」

「ハイっ」

と良い子のハキハキ返事だが、泣きそうな表情なとこが、かわいいっ。

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