第135話 未来ARの体験型FPSゲーム⑥-劇団虹色ボイス-
運命の四戦目が始まろうとしている。
対戦回数を重ねられるごとに深まったアドリブストーリー。
ただ対戦するだけがゲームではない。
好き勝手に脚色していった演者たちの本気のロールプレイが繰り広げられる。
リズ姉:『かつては姉のように慕っていた。かつては主であり守るべき家族だった。これは人間とアンドロイドの悲劇の物語』
なお内容は桜色セツナの意向が大きく反映されたのは言うまでもない。
真宵アリスを一方的な悪者にせず、自分との関係性を強めるために桜色セツナの頭脳はフル回転した。
リズ姉:『シンギュラリティを名乗るAIにより、ばら撒かれたコンピュータウイルスはアンドロイドを殺戮兵器に変える。徐々に狂っていくことを自覚したアリスは自壊もできず、破壊命令を出せない優しい主の前から姿を消した。主を殺さぬために』
桜色セツナ:「アリスさん! どこ……どこに行ったの?」
リズ姉:『泣き崩れる桜色セツナの元に一報が届く。暴走したメイド型アンドロイドが港湾都市アイリスに潜んでいると。桜色セツナは掃除屋の七海ミサキを雇い、港湾都市アイリスを訪れた。育ての親であり姉のように慕っていた真宵アリスに銃口を向けるために。今度こそ主としての責務を果たすために』
桜色セツナ:「アリスさん……私はあなたをこの手で」
七海ミサキ:「どんな事情があろうと私のやることは変わらない。この箒で撃ち抜くだけだから。お金さえ払ってくれるならね」
:どんどん完成されていくアドリブストーリー
:リズ姉のナレーションも良くなってきたな
:主役は真宵アリスと桜色セツナか
:セツにゃんが頑張って脚色した
:最初は真宵アリスだけだったのにな
:いつの間にか主従モノに
:セツにゃん迫真の演技
:ミサキチは掃除屋になったのか
:箒という名のスナイパーライフル
:守銭奴っぽいけどセツにゃんに雇われている時点で
:ハッピーエンドはなさそうだな
:そりゃあ悲劇だし
リズ姉:『様々な人や物が流れつく港湾都市アイリス。多種多様な勢力がひしめき合い交錯するこの街でトラブルは日常茶飯事。それでも禁忌はある。今も人々を恐怖に陥れるシンギュラリティの悪夢。そう呼ばれる一連のアンドロイドの暴走事件には神経をとがらせていた。当然ながらすでに警察機構は動き出している』
花薄雪レナ:「スラム街の殺害現場でメイド型アンドロイドの目撃例あり」
白詰ミワ:「またシンギュラリティの悪夢か」
花薄雪レナ:「でも可哀そう。この子苦しんでる」
白詰ミワ:「どういうこと?」
花薄雪レナ:「殺害されたのはゴリラ似に荒くれ者ばかり。女子供は誰も殺されていない。ううん……若い女性に関しては悪漢から助けられたという証言もある。当然攻撃もされていない」
胡蝶ユイ:「まだ理性が残っているんだね。それなら……なおさら終わらせてあげないと……ね。本当に狂ってしまう前にボクらの手で!」
竜胆スズカ:「はいはい。気持ちはわかるけど前のめりにならない。それこそ暴走したアンドロイドじゃないんだから」
胡蝶ユイ:「わかっているよ相棒。いつも通り背中は任せたから」
竜胆スズカ:「任せたってあのね……まったく。自重する気はないんだから。仕方がないわね」
白詰ミワ:「捜査は必要だけど二人は街を壊さないようにね、って聞いてないし! あーもう……また始末書が増えそう」
:警察機構か
:一期生w
:レナ様って普段ぶっ飛んでいるのに落ち着いた役がハマるよな
:さりげなくぶっこまれるゴリラw
:さっきリンリンがバディモノって言っていたから
:なんだろう……たったこれだけなのに四人の関係性が見える
:ランランとリンリンの警察バディ作品ないはずなのに想像余裕
:正義感溢れて暴走するランランと抑え役に見せかけて更にとんでもないことをするリンリン
:そして頭を悩ませる責任者のミワちゃん
:レナ様はクールな情報分析官かな
:一期生はロールプレイというよりもうシリーズモノのアニメだろ
:これ即興だよな?
リズ姉:『動き出したのは警察機構だけではない。いや警察機構に踏み込ませるな。そう息巻くモノ達もいる。スラム街は自らの庭。勝手に支配者を気取っているギャングたちだ。全員が仲間ではない。殺された被害者もどこからか流れてきた犯罪者ばかり。面識もなければ仲間意識もない。庭を荒らした。ただ気にくわない。そんな反骨精神だけで犯人探しに奔走する』
紅カレン:「まさお! わさお! ダンディ! ムーディ! サンシャイン! パッション! ゴージャス! やまでらきんに君! それからまさお! みんなやられちまった!」
翠仙キツネ:「まさお二回言ってる!? 二人いたん? やまでらきんに君って誰や!? まさか器用のすぎるレジェンド声優と不器用で筋肉一筋な芸人さんの夢のフュージョンか! それに他の名前も色々アカン! あの人らはやられてないねん!」
黄楓ヴァニラ:「わさお……いい奴だったのに……大往生だったね」
碧衣リン:「わさおは生き抜いた。母親が亡くなったあともちゃんと生きた」
翠仙キツネ:「そっち!? わさおに食いつくの!? これだけボケあってわさお以外総スルーすんのか!?」
紅カレン:「わさおの弔い合戦じゃあ~~~!? うちのシマ荒らしとる暴走したアンドロイドを絶対いてこますぞ!」
四人:「「「「おうっ!」」」」
翠仙キツネ:「っやないねん!? 逆恨みやん!? 老衰で死んだわさお関係ないやん! なんでわさおで弔い合戦なん? せめて二回も名前が出たまさおやろ! それかやまでらきんに君か! まさおが誰かは知らんけど!」
:第三の勢力はギャングか
:二期生っぽいな
:カレンw
:やまでらきんに君w
:あかんwww
:まさお二回目
:ツネちゃんの怒涛のツッコミ
:わさおに食いつくなw
:悲報キツネのツッコミが追い付かない
:仲間のボケが多すぎるんよ
:ついにわさおの弔い合戦にw
:キツネのノリツッコミ
:参入の動機が逆恨みw
:本当にノリだけで生きてるギャング
:二期生は本当にブレないw
リズ姉:『港湾都市アイリスに渦巻く混沌。その混沌を生み出した暴走したメイド型アンドロイドの真宵アリスは高く積み上げられたコンテナの上で夜空を見上げていた。汚染してくる狂気と理性の狭間の中で』
真宵アリス:「エラー……キル……サーチアンドデストロイ……キル……ニンゲン……キル……セツナ様……き……違う……エラーエラーエラー……もう殺したく……ない。誰か……止めて。私を……壊してお願いだから私を破壊して」
リズ姉:『真宵アリスの夜空に向かい、救いを求めながら涙を流していた。正確には眼球の保湿液が漏れただけ。それでもそれは涙だった。暴走してからメンテナンスもされていない。理性も身体もすでに壊れかけている。真宵アリスの最期に救済はあるのか……。第四戦の開始です』
:アリスパート
:機械っぽい
:あかん
:一気にシリアス
:二期生からの落差よ
:迫真の演技過ぎてつらい
:私を壊して
:この面子でちゃんと締めの演技できるだけ凄い
:全員演技上手いなやっぱり
:二期生はちょっと毛色違うけどな
:なんでゲームのロールプレイでここまで盛り込むのよ
:演技ガチ勢の本気
:ストーリーパートに気合が入り過ぎ
:無理だとわかっているけど救われてほしいな
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます