第66話 相席できない公式生配信➈後編-セツにゃん第二進化形態-
―――――Fin―――――
桜色セツナ:「アリスさんアリスさんアリスさんアリスさんアリスさんアリスさんアリスさんアリスさんアリスさんアリスさんアリさん!」
真宵アリス:「どうしたのセツにゃんってアリさん!? いくらセツにゃんでもその暴言はジハードだよ!」
桜色セツナ:「申し訳ございません。言い間違いました。普段心の中ではアリス様、聖女様、天使、私の嫁と呼んでいるので本当に思ったこともない言い間違いなんです!」
真宵アリス:「それも問題なのでは!?」
桜色セツナ:「そんなことよりアリスさん! お願いがあります! 私の誕生日を一緒に祝ってくれませんか?」
真宵アリス:「この話の流れで!? それにセツにゃんの誕生日って確かまだ先だったよね?」
桜色セツナ:「半年後です! でも今から予約です。誕生日にあのジャンボパフェ作ってください。できればクリスマスも!」
真宵アリス:「ああジャンボパフェ食べたくなったんだ。なら半年待たなくても――」
桜色セツナ:「――誕生日とクリスマスが重要なんです! 誕生日とクリスマスに予約でしたいんです! もちろんアリスさんの誕生日も私が盛大に祝わせていただきます! それはもう盛大に!」
真宵アリス:「う、うん了解。でも私の誕生日は別に」
桜色セツナ:「アリスさんの誕生日は貸し切りにしましょう。日本を!」
真宵アリス:「国ごと!?」
桜色セツナ:「その日を国民の祝日アリスデーとし、老若男女問わずネコミミメイド服を義務付けるのです!」
真宵アリス:「暴君! クーデター必然の暴君でもそこまで阿鼻叫喚の地獄を生み出さないよ! 誰得なのそのドレスコードは!?」
桜色セツナ:「外に出ないからメイド服しか着ないと決めたアリスさん。でも全国民がネコミミメイド服を身に着ければアリスさんも日の当たる世界を堂々と歩けます」
真宵アリス:「話が壮大すぎる! 私はインドア派で人見知りでひきこもりなだけ! 別に外に出れないわけじゃないから。あと人類オールネコミミメイドな世界はホラーすぎて絶対外出したくない!」
桜色セツナ:「……ダメですか。でもお互いの誕生日とクリスマスは予約ですからね」
真宵アリス:「それは了解。あっ!」
桜色セツナ:「えっ? なんですか? やっぱり無理ですか?」
真宵アリス:「セツにゃんが食べたいのはあのホワイトベースなジャンボパフェなの?」
桜色セツナ:「えーとアリスさんが居て……いえアリスさんが作ってくれるのが重要です! もしかして二人きりだと食べきれないなどを心配しているならサイズは小さ――」
真宵アリス:「なら桜色セツナに因んでスイーツ用の桜フレーバーで和風にしようか。さっきから考えていたんだけど中にこしあんも入れたり、生クリームを全て桜色にしてみたり。そうした方がセツにゃんの誕生日パーティーとして皆が盛り上がると思って……ん? セツにゃんどうしたの?」
桜色セツナ:「煩悩が……浄化される。さすがマイエンジェル……今日も推しが尊い。うん皆で盛り上がりましょうね!」
:ジャンボパフェやべー
:見た目だけじゃなく中身も凄い……でも案の定パフェじゃない
:まさに夢が詰まったスイーツ
:配信用!?
:誰でも作れるように、って無理だろ
:メレンゲパンケーキなどは確かに作れるな
:ふわふわのメレンゲパンケーキを上手く水平に作るのが難しいぞ……絶対に理不尽なバランス落ちゲーみたいになる
:あーパンケーキを上手く成形して積み上げること考えたら七十五センチは高難易度
:とうとう隠れ家居酒屋アリスの食事が終わった
:スタジオに戻って終わりか……ってアリさんw
;セツにゃんの心の中俺らか
:ケーキの予約と見せかけて誕生日とクリスマスをアリスと共に過ごす約束しようとしてやがる
:これがコミュ強の力か
:セツにゃん欲望だだ漏れw
:日本貸し切りw
:さすがにそんなアリスデーは嫌だwww
:……アリスこんなバカ話の中で真面目に祝うことを考えてた
:これは浄化
:セツにゃんは誕生日とクリスマスの予約というすでに目的は果たしているからな
:もうセツにゃん改めてクロにゃんだな
:桜色セツナの原型なくなっていて草
:子役時代の原型もないから
真宵アリス:「えーと……皆さん! 『隠れ家居酒屋アリス』のショート版終了です。この『未成年は相席できません!』もいよいよ終わりの時間が迫ってきました」
桜色セツナ:「続きが気になる方はロング番で! というのはさすがに不親切ですよね。『隠れ家居酒屋アリス』のロング番はこの公式配信終了後に予定通り公開ですが、視聴しやすい三分割版も一挙公開です」
真宵アリス:「今回『未成年は相席できません!』で流したショート版を『隠れ家居酒屋アリス食事会編』と名前を改めまして、この続きの遊戯大会は『隠れ家居酒屋アリス二次会編』。あと……更なる混沌を求める方へ。お酒の入った深夜の狂乱『隠れ家居酒屋アリス惨事会編』に続きます!」
アリスが手の平を向けると画面上に『隠れ家居酒屋アリス食事会編』『隠れ家居酒屋アリス二次会編』『隠れ家居酒屋アリス惨事会編』の文字が現れる。
桜色セツナ:「……惨事会。これ誤字ではないんですよね?」
真宵アリス:「うん……一部センシティブなため事務所の自主規制で配信できない部分もある混沌回だから」
桜色セツナ:「先輩方はなにをやらかしたんですか!?」
真宵アリス:「お酒を大量摂取して酔った状態でフィットネスゲームしていたからね。規制部分もリズ姉の声がさすがにダメだと判断されたのだとか」
桜色セツナ:「リズ姉……本当になにしているんですか」
真宵アリス:「どうせ配信されないしリズ姉の名誉のために説明するね。お酒を大量に呑むと新陳代謝が上がって体内の水分が逆に奪われるんだよ。その状態で運動したり入浴したりすると、脱水症状起こしたり、筋肉がつりやすくなるの。で、リズ姉は盛大にふくらはぎがつって床をのたうち回ったんだよね。そこを酔っぱらったカレン先輩がつつき回してリズ姉が乱れてた。やっぱり音声だけで聞くとダメだったみたい」
桜色セツナ:「……皆さんもお酒を呑んだあとの入浴や運動は控えましょう」
:あーもう終わりか
:短かったけど普通に腹が減る配信だった
:三分割助かる
:惨事会っておいw
:事務所からセンシティブ規制が入ったw
:酔っぱらってフィットネスゲームはダメだろ
:大惨事
:リズ姉www
:未公開部分も配信してもらえないか? 言い値を出そう!
:なに目的だよw
:案の定足をつったのか
:ナイスカレンw
:元エロゲ声優の本領発揮だな
:発揮したら規制される本領w
真宵アリス:「以上かな?」
桜色セツナ:「いえいえまだ重大発表がございます!」
真宵アリス:「まだなにかあった?」
桜色セツナ:「今回の『隠れ家居酒屋アリス』の裏側。厨房編がございます」
真宵アリス:「そんなの聞いてないよ? えーとレシピ紹介のこと?」
桜色セツナ:「レシピ紹介もありますが、アリスさんの厨房での様子を女性スタッフがずっと盗撮……ではなく隠し撮り……でもなくアリスさん事後承諾予定で撮影をしておりました!」
真宵アリス:「え? え? え? 事後承諾予定って今も私はなにも聞かされてないよ」
桜色セツナ:「可愛いアリスさんが可愛いメイド服でキッチンに立ち、可愛い鼻歌を歌いながら料理を作っている可愛い映像です。当然違法性はありません。だって可愛いは正義ですから」
真宵アリス:「セツにゃん!? 盗撮盗聴は犯罪だよ!」
桜色セツナ:「もちろん事務所もアリスさんの実写公開はしません。実写の元データは事務所の最重要データとして保管し、もしも流出させた社員がいればクビになると明言されていますので安心してください」
真宵アリス:「流出させたらクビは安心できない!」
桜色セツナ:「ですがスタッフ一同諦めなかった! アリスさんの可愛いを布教すべく実写映像からアバターに置き換えたトレースアニメーションを制作中です。アリスさんの姿と動きを執念で完全再現。鼻歌は生音声です。完成次第公開です。鼻歌編、すじ肉処理の死んだ目編、動きが可愛いジャンボパフェ建築編の三本予定!」
真宵アリス:「スタッフさんなにやっているの!?」
桜色セツナ:「私も昨日の晩からずっと実写版とアニメーション版を見比べていましたが素晴らしい出来であることを約束します。ずっと見ていたので寝た記憶がございません。もうアリスさんの鼻歌が上手くて可愛くて。気持ちよく鼻歌歌っていると思ったら途中でリズム間違えたのか違う曲になっていることに気づいて、動きを止めて首を傾げるアリスさんとかもうっ!」
真宵アリス:「セツにゃんセツにゃん落ち着いて! だから今日テンション高かったの? 昨日寝てないの?」
桜色セツナ:「これが落ち着いている場合か!」
真宵アリス:「いいから落ち着きなさい! もう! 睡眠不足は身体だけではなく心も疲弊させるんだからね。 メッ、だよ! 夜はちゃんと寝ること。夜更かし厳禁。アリスとの約束だからね」
桜色セツナ:「……………………」
真宵アリス:「セツにゃん?」
桜色セツナ:「………………」
真宵アリス:「おーい」
桜色セツナ:「…………ハッ!」
真宵アリス:「どうしたの? 急に止まってビックリしたよ」
桜色セツナ:「長い……長い旅をしました」
真宵アリス:「旅?」
桜色セツナ:「幾多の山を越え、見渡す限り広がる砂漠を渡り、ときには激流に流されてついにたどり着いた麗しの涅槃」
真宵アリス:「そ……壮大だね。夢でも見たの?」
桜色セツナ:「私はお釈迦さまの手のひらの上でキリスト様とボクシングの試合をすることになったのですがキリスト様は圧倒的でした」
真宵アリス:「どんな世界観!? もしかして聖なるお兄様なの!? あのシルクスクリーンする奴!」
桜色セツナ:「お釈迦様が言います『力、技術、速さ。全てで負けている。お前の武器は真っすぐしかない。そこにしか勝機はないぞ』と」
真宵アリス:「お釈迦様がセコンド役!?」
桜色セツナ:「そのお言葉に従い私は守りに徹して機をうかがいます。そして今だ! というタイミングで右ストレートを放ちました。届いた! そう思ったのですが、さすがキリスト様。『未熟。それでは届かぬ』と言い渡されて一本背負いで涅槃から投げ落とされました」
真宵アリス:「ボクシングはどこ行った!?」
桜色セツナ:「……えーと私なんの話をしていたんでしたっけ?」
真宵アリス:「……たぶん夢の話?」
桜色セツナ:「とりあえず頭がスッキリしてきました。涅槃から帰還し、少しだけ悟りを開いた預言者セツにゃんです」
真宵アリス:「またまた急に預言者ってどうしたの?」
桜色セツナ:「先ほどのアリスさんの発言は切り取られて脅威の再生数を誇るでしょう。汎用性ありますし」
真宵アリス:「え……私そんなに変なことを言ってた?」
桜色セツナ:「しかしさすがは虹色ボイス事務所のスタッフ。負けてはいません。販売用の収録を準備しているはずです。ほら」
真宵アリス:「……状況が理解できない。どうして本当に準備しているの? そんな打ち合わせなかったよね」
桜色セツナ:「自然な切り抜き版もいいかもしれない。でもアリスさんの戸惑いと羞恥を含んだ公式ボイスも素敵なはずです。私は買います。もちろん収録現場も見学します。そんなわけで急遽次の仕事が入ったので本日はここまですね。アリスさん締めの言葉を」
真宵アリス:「え……え? えーとお仕事モード終了。本日はお付き合いただきありがとうございました。このあとなぜかボイス収録のお仕事をすることになった混乱中の暴走型見習い駄メイドロボ真宵アリスと」
桜色セツナ:「今日も綺麗に桜が満開。収録見学楽しみな桜色セツナでした」
アリス・セツナ:「本日はこれにて閉幕。お疲れ様でした。またお会いしましょう!」
:厨房編?
:事後承諾予定ってただの無許可では?
:スタッフさん素晴らしいもっとやれ
:セツにゃん完徹してるwww
:さすが三期生の残念枠セツにゃん
:あ……
:………………
:……………………
:………………メッ、だよ!
:ただの可愛いかよ
:セツにゃん固まったw
:いきなりなんだwww
:あの短い間にどんな夢を見てんだよw
:この二人ヤバいw
:マジでネタ合わせなしの即興?
:息合いすぎだろ
:預言者セツにゃんw
:切り抜きはよ
:すでにできてるぞ
:早すぎだろ!
:ボイス収録の仕事が本当に入ったw
:スタッフwww
:あーもう終わった
:未成年コンビのコーナー増えてくれ
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