第1章#8-8 石田の今川酒場

#8-8 甲斐国 府中南 石田村 糧物座連込酒場 大永元年十月二十日 1521.10.20 side今川足軽衆5人組


「は~いそこのお兄さん方、きょろきょろしないで、こちらに寄ってきなさいよ。」


おいらたちは遠江榛原の福島様の領地から徴兵された足軽だ。

近い村同士で集まった5人で、合戦の間に立った市に連れ立ってきた。


ありがたいことに福島の殿様は、先の合戦の労を労い、みんなにお休みを下さった。

やはり合戦はおっかねえこともあるけれど、おまんまの心配もねえし、半月ごとに給米までいただける。こういった負け知らずの大軍に呼ばれた俺たちは本当に幸運だ。


「お、おいどうする。」


「いや、ああいった娘っ子が呼び込みをする酒場は危ないって言ってた。」


「お、おいらは早く、の、飲みたいからここでもいいんじゃないか。」


「い、一応端まで歩いてから・・」


「な~に大の男がぶらぶらしてんだい。向こうまで行って戻ってくる間に、あたいみたいな可愛い娘は他のお侍さんに持ってかれちまうよ。ほら、そこの男前のお侍さん、ここで目が合うもゆきずりの縁、男らしいとこあたいに見せて頂戴な。」


「お俺がお侍だって・・」

-ただの足軽である。-


「ぐずぐずしてると、他の奴も来てるしな。」

-村では百姓の倅である。-


「そ、それもそうだ・・ど、どうする。」

-刀など構えたこともない-


「煮え切らないね~ほら色男のお侍さん。先にご奉仕したげるからここに決めときな。」

呼び込みの娘はあろうことか先頭の男の腕を手に取ると、柔らかいものをぎゅっと押し付けた。


「え、え、ちょっと。」

-色男でも、お侍でもないが、言われて悪い気はしない。まあ飲み屋では未来の世界でも人類皆社長さんなのだから。-


「お代は銭にする。米でもいいわよ。」

-さすがにつけ払いは出来ないが、銭がなくとも安心の米払いも選べます。-


「さ、酒とな、何か旨いものを。」

-この時代麦酒はまだ無いがとりあえず酒から始めるのは世界のお約束であろう-


同じ隊の他の足軽たちは、前回の市で、みんな我先に米を酒に替えていたが、おいら達は騙されてるんじゃないかと、その時は米を少しだけ銭に替えただけだった。

「しかし、びっくりしたなあ、米1升で銭200文てのは、給米とっておいて良かった~。」

前情報通り、皆懐に米を持参してきている。

銭より米が強いのだ。


「ささ、暖かくなった懐で、私の懐で暖めたお燗を召し上がれ。」


「・・・こ、これを取り出せと。」


給仕の娘は、お盆にぐい飲みとお通しの漬物を、そして徳利をお約束のように...

二つのこんもりとした、双丘の間に挟み(あわわ)


「あら、お酒はたしなみませんの?」


「いえっ喜んでぇ~。」


「お酌いたします。それともお侍さん自らお手に取られます?」


「「「「「・・・(いいんですかい)ゴックリ・・・。」」」」」

5人は

喧嘩しないように、


娘の運んでくる徳利を


順番に一人ずつ


手を差し込んで


5本づつ


楽しんだ。


「まあ可愛らしい事、でも、お酒だけで宜しかったですの?」


「「「「「え、・・・・。」」」」」

5人の幼馴染の足軽勢は、血走った目で娘の豊かな膨らみと、艶やかな流し目をガン観。


「お米なら1升で、銭なら300文で1刻、2階にお通ししますけど。」


「「「「「・・・ゴクリ・・・。」」」」」


「お侍さんどうやらお友達同士ですものね、なんなら纏めて5升で、一晩お泊りになります?」


「ひ、一晩中相手してくれる・・・のか?」


「まあ、頼もしい事、こんな色男共に囲まれたら、あっという間に気をやってしまいます。お加減してくださいますよね。」


「もちろん、拙者達は皆武士なのだから。おなごにやさしいぞ、なあ皆の者。」

いままでの人生で拙者という言葉遣いを初めて使ったが、今日からおれは武士なのだ。


「まあ、あちき、惚れてしまうかも、さあさ、2階に席を移しましょうな。はい~お侍様5名様2階のお座敷にご案内~。」


あれよあれよと仲良し5人組は2階に通される。


「あーら、可愛いお侍さんたちじゃないの。」


次々と着物を気崩して、生足がチラチラとのぞく、しかし少しばかり歳の上がったお姉さん方が、5人組の隣に座る。


「いらっしゃーい。まずは一杯差し上げますね~。」


有無を言わせず、下から運んできた徳利をお姉さん方は口に含むと...。


「ちゅっ~。」

口移しで、男どもにご奉仕(笑み)。


「お代わりは如何?」

満面の笑み。


「え、酒はこのくらいで・・・」

さわさわと足軽たちの胸元を触りながらしなだれかかり・・・。


「あちき、もう少し一緒に飲みたいなぁ~。」


-笑顔は零文である。でもただより高いものは無い-


男どもは、5人がかりでお姉さまたちからおねだりと、時々のお触りと、

ご褒美の口移しを堪能しているうちに、わずか1刻で正体を無くす。


「は~い。五名様裏の長屋に並べて寝かしときな~。」


どこからか現れる屈強な男たちに軽々と運ばれ、座敷はあっという間に綺麗に。


「お次のお侍さん上にあげてちょうだいな~。」


5人組は言われるがままに一晩を楽しんだ。


本人達の妄想とは少し予定は違ったかもしれなかったが夢は見れた。

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