第512話 第四ステージ

私は基本的に精神的にも肉体的にも強い。


だからこそ異常が起きた際はすぐに何が原因か分かる。


大抵の場合は、珍しい病気などだが、菌類などの場合、


最初はかぶれたような症状で、痒みがある。


菌類の場合、虫などに刺されたような痛みは無いが、


日に日に体全体に広がっていく。


薬はあるがクリームタイプなので治りにくい。


傷や怪我などでも言えることだが、基本的に空気や風通しがある


ほうが治りやすい。


医者であった父は言っていたが、絆創膏は風に当たらないので、


基本的に治りにくいと、よく言っていた。


私は特殊なタイプの心不全だ。去年、初めて経験したが、


何も知識がない場合、対処出来ず、死亡率は非常に高い事は経験して、


すぐに理解できた。私はストレスから来ている為、問題の起点を


修正しないと治る見込みは無い。


先月から年に2度ほどなる、言葉では説明しにくいが、闇に落ちる。


だいたい1,2週間で収まるのだが、今回は違った。


時だけが経過し、私自身もよく分からない状態になった。


色々な観点から調べてみたが、症状が当てはまり、尚且つ、それ以外ない


と思った。心不全のステージ4だ。


最終段階でここから死亡率も当然高くなるわけだが、


私の場合は普通の人とは違い、死ぬ気もないし、死にそうでもない。


ただ気が起こらない。


これは非常に厄介で気が起こらないと何も出来なくなる。


先週も病院にも行けず、食欲も無いのに、今はまだましだが、


調べた結果、当然、人によって差はあるが、週に2キロも増えていくらしい。


これは尿が出ず、水分が体中にはびこるからだ。


寝ようとしたら心臓が痛み、しばらく時が経過するまで痛みで落ち着かない。


足からぬくみ、ふくらはぎ、太ももへとむくみ始めた。


今まで着ていた服もきつくなり、色々不自由な状態だ。


しかし、私は終わる気はない。孤独であってもだ。


入院は絶対にしないと、私は心に誓いを立てた。


ここ一カ月の間に何度か死のうかとも思ったが、今死ねばただの無駄死にだ。


それに二人の人からは、死なないように言われている。


そのうちの一人の人には、私が何かに注意を向けさせようとしてくれている。


その気持ちだけでも十分嬉しく思う。


相手の心が分かっていても、嬉しく思うのは久しぶりだ。


昨日、その人にお勧めのゲームのプロモーションビデオを教えた。


前にやっていたエルダースクロールオンラインとリーグオブレジェンドのPVだ。


私はどれがいいかなと、久しぶりに見た。見ていて何故か少し元気が出た。


アインシュタインは病気になったが手術は拒否し、入院した。


助手に研究に必要なものを持ってこさせ、入院しながら研究を続けた。


彼だけではないだろうが、死がそれとなく分かる時がある。


私が初めて心不全になった時もそうだった。


このままでは助からないと思うと同時に、死が見えた。


彼が手術を断ったのも助からないと分かっていたからだと思う。


アインシュタインは入院して三日後に死んだ。


死期を悟っていたかのように、彼は最後、ドイツ語で何かを書いていたらしいが、


ドイツ語であった為、それを看護師が読めず、終わった。


彼ほどの人が最期に何を書いたかは、想像の域を超えるものか、


それとも常人の悟りの言葉かは分からないままだが、気持ちは何となく分かる。


私の場合は己の愚かさの念だ。


若気の至りであったが、今でも己が二度と間違いを起こさないようにしている。


後悔は無い。後悔しても無意味だからだ。


自分の行動や発言に対して、後悔をするようであれば、ただの未熟者でしかない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る