第254話 中谷彰宏

“運がいい人も、運が悪い人もいない。

運がいいと思う人と、運が悪いと思う人がいるだけだ”




一見して、なるほどと思う人は果たしてどれくらいいるだろう。


この言葉はそれらしい言葉ではあるが、世の中には運というものが


存在していないと述べている。


運というものや運命、使命、巡り合せなど、実際にその存在を裏付ける


証拠はどこにもない。そのものらに対して、言葉を語るのは愚か者だと


言える。私の父は運を基本的には信じない派であったが


曾祖父の話をする時には、必ず言っていた。運というものは実在すると。


基本的には霊的なものやそういった類のものは信じていなかったが、


人生で双方とも一度だけ信じた場面が自分の人生にはあったと言っていた。


そのひとつが、ある晩、友人たちとお酒を飲み、隣町まで行こうと誘われたが、何かは分からないが理由も明確でないまま人生で初めてお経を読んだらしい。そして友人たちは車で海に突っ込んで全員死んだ。


その時の事を度々言っていたが、何か霊的なものがあったのかもと言っていた。霊安室では幽霊を見た事があるらしいが、見たにも関わらず信じてはいなかった。


あとひとつが曾祖父だ。確かに話は色々聞いてきたが、運なくしてはあり得ないほど、知識も無く莫大な遺産を残した。


特別、才能があった訳でもない。特に頑張った訳でもないが


戦後の財閥解体後でも一兆円近くあったのは事実であり、


銀行が出来る度に、まず最初にうちに来ていた。


聞いた限り、一度も頑張った事は無かった。ただやったら当たるだけで


それはそれで、つまらない人生だったとは思う。


多数の人々に家を買っても買っても底はない。


運があるだけの人生は、果たして幸せなのかと考えさせられた。


実際、人間の体だけでもまだまだ解明されていない部分も多くあり


脳に至ってはほんの数%程度しか分かっていないのが現状だ。


私は性格上、確実な事は確実というが、


分からない事に対しては、絶対とは絶対に言わない。


多くの人から相談を受けてきたからかもしれないが、


人から助言を求められると、私は自分の事以上にその分野や問題に対して取り組む。そして限りなく正解に近い答えを出して


物事を分かりやすく説明し、絶対ではないけど、こういう答えが出たと


言うだけである。人間という複雑極める生き物として生まれた以上


簡単に答えを出すべきではないと私は思っている。

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