第11話 魔王幹部連
蒼馬のアパートの202号室。
そこでは魔王とその配下の四天王一同が同居している。
彼女たちが引越しをしてきた当日の夜のこと。
「作戦会議じゃ」
六畳の和室で顔を合わせる五人。
神妙な面持ちをしているマナに、彼女を見つめる四人。
「芹沢蒼馬。あやつには魅了が通用せなんだ。これは想定外じゃった」
「マナ様唯一の特技だったのにね」
「ゆ、唯一じゃないわ! 余は破壊も得意じゃ!」
「壊すことと魅了。それだけじゃん。なはは」
ぐぬぬと悔しがるマナに、その反応を楽しむメグ。
ミルヴァンはメグを睨みながら話を続ける。
「それでこれからどういたしますか、マナ様」
「うむ。聞くところによるとあやつは学校に通っとるようじゃ」
「学校……」
「そうじゃ。だからまずはあやつと同じ学校に通おうと思う」
「なるほど」
「そして余の魅力で蒼馬を骨抜きにし、元の世界に連れ帰る!」
「素晴らしい作戦でございます、マナ様! 私、感動で前が見えません!」
ミルヴァンは本当に涙を流し、腕で顔を覆っている。
「マナ様には男を引っ掛けるだけの魅力はあるけど、その度胸はありませんよね?」
「んなっ!? そ、そんなことないぞ! 男に声をかけるなんて、朝飯前じゃ」
「なはは。朝飯前に緊張でお腹下してそう」
「メグ! お主は余の部下であろう! なんでそんな意地悪なことばっかり言うのじゃ!?」
涙目でメグを睨むマナ。
メグはそんなマナの頭を撫でながら話す。
「だってマナ様可愛いんだもん」
「ふ、ふん。可愛いのは当然じゃろう! だって魔王なのだからな!」
可愛いと魔王は関係ないだろうと思いながらも、黙って見届けるモリー。
彼女は部屋の隅っこで三角座りをして話を聞いている。
「では、俺たちはどうすればよろしいか?」
「そうじゃな……特にやることないな!」
「なるほど……では、来るべき時のために特訓をしておきます!」
いきなり腕立て伏せを始めるムトー。
いつものことだと考える四人は、ムトーの行動を無視している。
「あのさ、マナ様だけじゃなくて、私らも蒼馬にアプローチかけることにしない? マナ様はすぐに失敗するし、私たちも参戦した方が説得の確率は上がるでしょ?」
「おい! 余は失敗なぞせんぞ!」
「えー、失敗ばかりじゃないですかぁ」
「私……無理」
モリーは暗い顔でジッとメグを見据える。
そんなモリーに笑顔で言うメグ。
「大丈夫だって。モリーも可愛いから」
「…………」
反応を示さないモリー。
だがそれもいつものことだとメグは気にしない。
「それで、我々にどうしろと?」
「私らも学校に通うの。ミルヴァン以外は似たような年齢だし、ま、問題ないでしょ」
「……なら私はどうすれば?」
ミルヴァンの問いにメグは思案し、あっと声を漏らす。
「なら、教師でもやったらいいんじゃない? 教師としてなら一緒に学校に通えるでしょ?」
「なるほど……教師か」
「うん。じゃあそれで行こう。ミルヴァンは教師として。他の皆は生徒として学校に行くとしよう!」
「ちょっと待てちょっと待て! 余に意見を聞かずに、なんで話を進めるのじゃ!」
「も、申し訳ございません、マナ様……で、メグの提案はどうでございましょうか?」
「ま、余だけでも問題ないだろうが……いいじゃろう」
「さすがマナ様……配下の提案を快く受け入れてくれるとは……なんという心の広さ!」
ミルヴァンは感動に涙を流し、メグはやれやれと肩を竦めている。
「じゃあそういうことだからムトー。君も学校に行くんだよ」
「おう! 任せておけ!」
「モリーもね」
「え……」
極力外に出たくないという、引きこもり体質のモリーは、出来れば断りたいところであったが……やる気満々になっているマナを見て、肩を落としながら提案を受け入れるのであった。
「よし。そうと決まれば準備を進めるぞ。学校に行くにはどうすればよいのじゃ?」
「えっと、ちょっと調べるね」
「……メグ、お主が触っておるそれはなんじゃ?」
メグが携帯を操作しているのを見て、マナは不思議そうに目を丸くしていた。
初めて見る携帯……そしてそれを操作しているメグに驚いている様子だ。
「ん? これは携帯っていうんですよ。色んな物を調べたり、離れている人と会話したりできるんです」
「な、なんじゃと!? そんな便利な物が……というか貴様、どこでそんな物を!?」
「んん~、蒼馬から教えてもらいました」
「そ、蒼馬って……お主いつの間にあやつと仲良くなったんじゃ?」
「会った時に話しましたんで。なはは」
すでに蒼馬との距離を縮めていたメグ。
マナはその行動力とコミュ力に驚愕している。
「メグのコミュニケーション能力の高さ、まさに驚嘆の一言ですね……」
「ま、まぁ? 余も負けてないけどな!」
「ええー? マナ様、人見知り激しいじゃないですか。ま、蒼馬に関しては意外と普通に接しれてるみたいですけど」
「ふん! それだけ余も成長したということじゃな!」
「いや、違います。蒼馬のコミュニケーション能力が高いんですよ。明るくて話やすいですよね、彼って」
「そこは余を褒めてくれたらいいじゃろっ!」
半泣きのマナに笑うメグ。
しかし学校に通うための作戦を着実に進めていく五人。
そして翌日には、早々と準備は整うのであった。
これも全てはメグのおかげなのだが……
マナは自分の実力だと勘違いしていた。
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