第28話「おばっ……」
「お化けなんかいない」
「あの……ぉ」
「お化けなんかいないお化けなんかいない……」
「だ、大丈夫……?」
「お化けなんかいないお化けなんかいないお化けなんかいないお化けなんかいないお化けなんかいないお化けなんかいないお化けなんかいない…………大丈夫なわけないでしょっ!!」
お化け屋敷(仮)に入ってから5分が経った。中はかなり入り組んでいて、アスレッチック感もあり教室の狭さを感じさせないいい作りとなっていた。
無論、お化けもかなり作り込んでいてリアルではあったが予想の範疇だった。あの悲鳴を聞いて我ながら少々強張っていたのだが……と痛手を感じていた俺に比べて隣の彼女とはいうと……。
「いや……普通に心配。というか無理ならでても……?」
「……やだっ‼‼」
「ぇ……そ、そうか」
さすが生徒会長。
怖いものなど知らないと大きな声で意気込みを表すっ————なーんて。
言葉とは裏腹に身体は正直だった。
お化けなんかいないと信じている理系な六花としてはこんなものは人間のお遊び程度に思っていたのだろうが、こういうのはそう思っている人間の方が大いに驚いたりもする。
それに、俺としては六花の言質も取れたことだし、出るよりかは彼女の大きな胸と暖かい二の腕を感じるのが合法的に出来る。
うん、最高だ。
神様はもしかしたらこの日のためにお化けと言う概念を人間に与えてくれたのかもしれないまである。
そう考えたら、案外神様のいたずらもいいものかもしれないな。
「————うぉぁ」
「っ——ひゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ‼‼‼‼‼⁇⁇ なになになに⁉ おば、おばばばばばば、や、や‼‼」
真っ黒で血だらけな(血糊)垂れ幕から血だらけな右腕が唸り声と共ににょきっと生えてくる。
恐らく練習はしているのか本物のお化け屋敷らしく俺自体もどきっときたが、まぁ、隣の生徒会長さんと言えばさすがであった。
「うぅおっ……ぉ、ぉ……」
見ての通り、驚かした側のお化け(役の男子生徒)が驚いている。
————というか引いているまである。
「こわいこわいこわいこわい……もう無理なんだけど、無理なんだけどぉおおお!?」
バシバシバシっ。
俺の腕に縋りつくのように抱き着きながら、胸元を連続で叩き始める。
「痛いっ、ちょ、マジで痛い……」
「そ、そんなことよりも怖いの!! 超怖いの!! 生活委員会の道長先生よりも‼‼」
「そ、そうか……とにかく叩くのはやめてくれ」
それに、最後の一言もいらないし……というか道長先生のクラスは今俺たちがいるクラスなんだけど。
加えて生徒会長としての橘六花とは思えない言動ときた。そのギャップは最高にいいのだが、やっぱり俯瞰して聞いてみるとちょっとあれだ。
と言う風に何となく考えながらも怖い癖にずかずかと進もうとするし、言動と言い、性格と言い、風格と言い、行動と言い……何もかもが斜め上に傾いている。
「ひゃあああああああああああああああああああああああああああああ‼‼‼ もうやだ、〇ね!! お化け〇ね!!!」
お化けは元々生きていないよ。
と思ったが、ここは一旦、このクラスの迷惑にはならないように外に出るとしよう。
んで、だ。
「六花……というか、ここでは橘生徒会長か」
「っ……」
「どうしてあんなにうるさくしたんですか……」
「そ、それは……だって……怖いから」
「まぁ、分からなくもないけど……というか怖いの駄目なら言ってくれればいいのに」
「それは————絶対、ちが、うし……無理してない、別に無理してない!! そ、そうよ、あれはただ、リアクションしてあげようって考えてただけなんだから、違うわ、絶対! 絶対ね!!」
「いや……何にプライド持ってるんだよ」
「いいじゃん、私、生徒会長だし」
「まぁ、そうだな……」
その割には散々ばら叫びまくってたし、むしろオーバーリアクションなんだけどな。
「うん、だから私はビビってなんてない!! そう言うこと!!」
「はぁ……まあ、別にいいけど」
「そうそう、これで終わり!! 行くよ、次々!!」
元気よく、バッと振り向き立つ彼女。
お化けの呪縛から解き放たれて体が軽くなったのか、元気よく俺の右手を掴んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます