第26話「メイド服3」
渾身の表情に、俺が与えた会心の一撃。
まさに少年漫画の中盤で繰り広げられる主人公とライバルの一戦のような形で、お互いがお互いの言葉に胸を掴まれていた。
沸き起こるおっとした女子生徒たちからの黄色な声。
無論、男子たちからは俺たちの生徒会長で何をしてやがる――と苦虫を噛み潰すかのような妬みの視線が背中に集中する。
俺たち二人が来たことによって噂されて見に来た一年生や自クラスの宣伝をしに来た上級生が小耳に挟んだのか教室の出入り口を塞いでいた。
周りの様子。ぞわぞわを感じ取ってはいたがそれどころじゃないほど心臓がバクバクと言っていた。
かわいい、かわいい、かわいい。
どこかの竜宮なんとかさんのようにお持ち帰りぃ! したいほどだった。
「……そ、そぅ」
「あ、あぁ」
まさに相打ちと言った感じか。
それを理解すると、余計に恥ずかしくなってそっぽを向く。
しかし、俺が視線を外に向けるのと同時に、目の前に座っていた六花といえば顔を真っ赤にしながらも生徒会長らしく、バッと立ち上がると出入口を塞いでいる生徒たちに注意をしに行った。
「うぇ~~」「いいじゃん}「顔赤いよぉ~~」
とからかわれ、真っ赤になりながらも注意しに行く姿に見惚れてしまったのは言うまでもないだろう。
というわけで、メイド特製♡オムライスも平らげたところで俺たちは二階に向かった。
「……なんか、あれ食べるのも恥ずかしかったね」
「うん。というか、あれっていいのかしら……正直予想外だった」
お互いにお腹を擦りながら階段を歩く俺と六花。
何を話していたかと言うと、もちろんあのオムライス。
定番! おすすめ! とかなり凝ったメニュー表に書いてあったから頼んだのだがどうやら変なオプション好きで、めちゃくちゃに可愛いメイドさんが萌え萌えキュンサービスをして来たり、まさかのツーショットまで取ってくれるなどともてはやされ三昧だったのだ。
風の噂ではあのクラスにメイドガチ勢の男子とメイド喫茶バイトをしている女子生徒がいるらしく、意味は分からなくもないが高校生にしてはやり過ぎだった。
の割にスマホを向けようとする男子生徒からメイドたちを守る人もいて、メイド喫茶としては中々の完成度だったのだ。
「……ていうか、あれ許可したの誰よ」
「副会長では?」
「メイドが好きとか言う性癖なんてなかった気がするんだけど……」
「ま、まぁ……ありえないことはないかと?」
「ん?」
「男ってああいうの好きだから……っていうか?」
何気なく呟くと、前を歩いていた六花は足をぴたりと止めた。
「え」
「……みんな好きなの?」
「え?」
「いいから」
「ま、まぁ大抵は……俺も好きだし」
「そ、そう」
前屈みで聞いてくる六花を前にそう言うと、彼女は何もせずに「そ」とだけ言い捨て、止めていた足を動かした。
二階。
二年生の階で文化祭も今回で二度目。
一年生の時の経験を踏まえて、どこか落ち着いた慣れ親しんだ空気を感じたのと共に、受験を控えている三年生とは違ってかなりの気合が入っていた。
「流しそうめんやってるよ~~‼‼ スーパービックグライダー流しそうめんだよぉおおおおお‼‼‼」
と廊下中を走り回っているそうめんコスプレをした男子生徒や
「縁日やってるのできてくださ~~い」
とおっとり声を掛けている和服女子もいて、かなりの賑わいを見せていた。
そんな二年生の階をまたしても端から見ていくことに決めた俺たちはまず、二年一組の展示「お化け屋敷」の列に並ぶことにしたのだった。
<あとがき>
大変遅れてしまって申し訳ございません!
今度は本免試験と短編を書いていてなかなか時間が取れませんでした!! 一月からは王道のラブコメをまた上げていくつもりなので良かったらそちらもお願いします!
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