思い出は天然色

作者 葉城野つき

モノクロームの思い出は何色? 色付いていく記憶で透かし見る今の心模様は

  • ★★★ Excellent!!!

パッとしない日々を過ごす45歳の主人公・了介が、高校時代の『女友達』・栞に会うために里帰りするお話です。
しかし待ち合わせに現れたのは栞の娘・愛華。了介はそこで初めて、栞が東日本大震災の津波で亡くなっていたことを知り——

この世代が経験してきた社会の移り変わりの様相や、どうにもならない現状の辛みがリアルです。
もう二度と戻らない人の存在が、過去と現在の間に隔たりを感じさせます。
だけど栞と過ごした日々を、当時の彼女と同年代の愛華と共になぞっていくうち、過去の感情が色鮮やかに蘇ってきます。

了介の現在は、あの頃予想した未来とは違っていました。
だけど30年の時を経てなお、変わらないものも確かに存在する。
あの頃の天然色が、現在の景色にも映し出されていくように感じました。

アラフォー以上の方には特に深く刺さる時代感だと思います。
ラストはほろりと泣けました。
清々しい読後感の、素晴らしい作品でした!

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