第5話 absolute ego dance
一つの問題が解決すると
また一つの問題が出てくる
ゲームセンターのもぐらたたきに似ている
どこかの穴からまた もぐらがひょいと頭を出すのだ
ハンマーがとどくのならまだいい
とどかぬところにもぐらが頭を出した時
このわたしの片腕はどう動くのだろう
ただ立ち尽くして もぐらの薄笑いを眺めるのだ
恨みがましく
本当のことを教えてほしい
なんでみんな 本当のことを言わないのか
一片の希望らしきものがあるが それが実際希望なのかは判然とせず
そしてその周縁の希望ではないもの(絶望とまでは言わない)については
希望よりずっと判然としていて
暗がりの中を懐中電灯で足元を照らしながら おずおずと歩いていくことが人生で
でも持っている懐中電灯の性能と 歩を進める脚力には人それぞれ不条理なばらつきがあり
その不条理を呑み込んで 半べそをかきながら歩むしかないのだ
なんのことはない
わたしの『本当のことを言わないのか』は
結局のところ 『わたしが言ってほしいことを言わないのか』なのである
エゴ
absolute ego dance
建前は嫌いだ
でもむき出しの現実はもっと怖い
冷静に フラットに
現実の冷徹さを そっと開いて見せてくれて
でもささやかなよいニュースも 去り際にちらりと見せてほしい
こういうものだけど 無理しないでねと
力ない微笑みとともに 言ってほしい
誰か 誰か
これは誰にということもない独語なのだけれど
反面すべての誰かに対するお願いなのです
そのひとことを言ってくださるなら
わたしはあの 母と呼んでいる鈍重なアシカのような存在と
運命と空間をともにすることに耐えられます
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