久しぶりの登校…1

「本当に帰りは一人で大丈夫なの?」

「行き送ってくれるだけで十分だよ。 別に学校までそんなに遠くないし」

「そう? 今日くらい帰りも迎えにいくわよ?」

「いいよ。 母さんだってパートがあるだろ? だからいいよ」

「分かったわ。 やっぱり無理ってなったら連絡してちょうだいね」

「はいはい」

「はいは一回!」

「はーい」


母さんに送られて久しぶりに学校に登校した。

松葉杖で歩くのは思ったよりしんどいしまだ全然慣れない。

そう思いながらゆっくり歩いていると後ろから「天汰!」と声をかけられる。


「んあ? 陽菜ひな


声をかけてくれたのは幼馴染の中央陽菜なかおひな

透明感のある声が特徴的な女の子だ。


「もう大丈夫なの?」

「大丈夫。 大丈夫。 これ結構大袈裟なわけよ」

「松葉杖は大袈裟じゃないでしょ。 ほら荷物貸して教室まで持つよ」

「ありがと。 陽菜ものるか? エレベーター」

「いいんですかぁ? じゃあ遠慮なく!」


エレベーターにのり、一年A組の教室に入っていく。

俺の姿をみてそれぞれ話しかけてくれた。

でも同じ部活のメンバーは俺の足を見て悲痛な顔をしているだけで話しかけてくることはなかった。


「あれ? 席替えした?」


俺は能天気なふりをしてそう同じ部活メンバーに問いかける。


「お、おう」

「ほ、ほらあそこだよ。 天汰の席は菖蒲あやめの隣」

「さんきゅーな」


松葉杖が起きやすいように窓際の席にしてくれたようだ。

一番前の席っていうのが嫌だなと思いながら席に座る。


「えっと菖蒲さん? よろしくな」

「今までの分のプリントは机の引き出しに入れてるから」

「ん?」


どこか聞き覚えるのある声。


「大事なものは中央さんが家に持って行ってたみたいだけど」

「おう。 母さんが受け取って病院まで持ってきてたから知ってる」

「そっか」


─負け確じゃん。うっざ


「あ」

「…なに?」

「MiReiさん?」

「っ!!」


俺のその言葉にガタガタっと音を立てて立ち上げる。


「なん、それっ!?」

「俺、ちかちもち!」

「はあ!?」

「やっぱりMiReiさんだったかー! なんか聞いたことある声だと思ったんだよな! んでさっき気づいたんだよ! やっぱりMiReiさんだったっんがあ!」


スッキリした気持ちでそう喋っていると当然口を手で塞がれる。


「ちょっと黙れ!」


迫力あるその言葉に俺は静かに頷いた。

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