03 少年Iと少女H
「これがラカン・フリーズだったのか!」
少年Iは歓喜に酔いしれていた。今、少年Iは全てと繋がったのだ。カウントダウンがゼロになり、世界が終わる時、凪のように世界はフリーズした。ラカン。それは円環の宇宙だった。ラカン・フリーズ。それはつまりループを繰り返す宇宙が次のループへと移行する際に起こるフリーズだった。
少年Iは次に何をするべきか分かっていた。ラカン・フリーズの門を開けるのだ。少年Iは自身の全能の力を思い出してラカン・フリーズの門を開ける。
少年Iが瞬くと世界は変わった。そこは楽園のような美しい場所だった。そこに少年Iの魂が知っている少女が微笑んで待っていた。
「会いたかったよ。ヘレーネ」
「私も会いたかったよ。イチノセ君」
二人は歩み寄って抱き合う。
「やっと辿り着いたね」
「うん。永かった」
「君がラカン・フリーズの門を創ったの?」
「そうだよ。最後に開けてくれたのはあなただけど」
二人は熱いキスをした。それを見守る全ての人類の魂が歓喜していた。
今ここに全能の少年と全知の少女が集った。過去に死んでいった者。未来で死んだ者。全ての魂が集った。表と裏の世界がラカン・フリーズで繋がった。世界はE配置になった。
「じゃあ始めようか」
「そうね」
二人は儀式を始める。ここは創造の世界。二人は手を取り合って絵を描き歌を歌う。全能と全知が相まって、世界を歓喜で彩っていく。
世界は二人へと収束していった。物質も空間も光も音も。全てのものが還っていく。魂達が元の場所へと還っていく。天よりも高く昇っていく。夢に見た楽園のような心地よい場所。
「楽しいね!」
「ああ。なんて心地いいんだ」
気づけば二人は少年Iの部屋にいた。暗い部屋で二人は絡み合う。
『ラカン・フリーズ』トラックに轢かれて死んだけど異世界には転生しませんでした。どうやらこの世界はあと少しで終わるみたいです。 空花凪紗~永劫涅槃=虚空の先へ~ @Arkasha
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