第九章
第481話 【悪魔の子・1】
クロムさん達を連れて空島へと移動して、一時間程が経つと悪魔達が「完成しました」と報告に来た。
「えっ、もう建て終わったのか!?」
そう驚き、皆で外に見に行くと。
建設していた場所には、立派な木の家が建てられていた。
こんな短時間で作った割には、外見もちゃんと凝った造りをしている。
「お前等ってこんな才能があったのか?」
「そうみたいですね。こっちに移動してきて、マリアンナさんから色々と指示されて造っていたら、自分達には物作りの才能があった事が分かったんです」
「掃除の才能がある奴も居たから、別に驚きはしないが……悪魔が物造りの才能って、変な奴等だな」
悪魔と言えば、壊す方のイメージがあるが。
こいつらは悪魔としては力は強くないが、逆に作り手としての才能があったみたいだ。
「……なあ、所でさっきから悪魔達に混じって一緒に作業してる。あの子供って、お前達と一緒にこっちに連れて来た中に居たか?」
俺はふと、視界の先に映った子供について近くに居た悪魔に尋ねた。
「ああ、あの子はマリアンナさんが連れてきた子ですね」
「師匠が連れてきた子? ……という事は、もしかしてあの資料の奴か?」
そう思った俺は家の中を見てるクロムさん達に、師匠の所に先に戻っていると伝えて俺は師匠の所へと向かった。
「師匠、先程外にあの資料の子供らしい人物を見たんですけど、もしかしてもう連れてきていたんですか?」
「ああ、そうだったわ! 弟子ちゃんが大会に出ていて、連絡を忘れていたんだったわ」
師匠は思い出したかのように言うと、近くに居た悪魔に「あの子を呼んできて」と言って悪魔に呼びに行かせた。
「あれから、まだ数日しか経ってませんよね? こんなに早く見つけたんですか?」
「ええ、見つけるのは意外と簡単だったのよ。弟子ちゃんから見せてもらった資料に書いてあった街に行って、近くを探したら森の中で暮らしてたのを見つけたの」
「森の中で、ですか……という事は人里では暮らしてなかったんですか?」
「そうみたいよ。自分の見た目が変な事は、自分でも気づいてたみたいであまり人と見つからない様に暮らしてたみたいよ。でも、森の中とは言え冒険者とかが入ってくるでしょ? 彼らに見つかったりしたら、住処を変えたりして今まで生活していたみたいよ」
師匠の話を聞く感じ、俺のイメージしていた悪い感じはしない。
どちらかと言うと、人間に好意的な存在なのか?
そう俺が考えていると、外から先程の子供が入って来て俺に「はじめまして」と挨拶をしてきた。
「はじめまして」
そう俺は挨拶を返すと、子供は師匠の隣に座った。
真正面から見た感じ、悪魔に似た角や瞳の色と髪色が黒く悪魔らしさがあるが、雰囲気はどちらかと言うと人間らしい感じがする。
「……もしかして、悪魔と人間のハーフだったりしますか?」
「流石、弟子ちゃんね。でも、正確に言うとこの子の両親だった者に悪魔が憑いて、その時に生まれたのがこの子よ。生まれる際に、悪魔の魔力を帯びて生まれてしまったから、悪魔に似た角が生えているの」
「そうですか……」
師匠と話をした俺は納得しつつそう言うと、目の前に座る子供はジッと俺の事を見つめていた。
「……そうだ。お互いに自己紹介がまだだったな、俺はジンって言うんだけど君の名前は?」
「僕はファムって言います」
ファムと名乗った子供は、少しだけオドオドしていて師匠の手をギュッと掴んだ。
そんなファムの手を師匠は握り返すと、近くに居た悪魔に「一緒に遊んであげて」と言ってファムを部屋から連れ出してもらった。
「師匠。さっきの話の途中で聞けませんでしたが、ファムの両親って……」
「生みの親は、あの子が生まれた頃に亡くなってらしいわ。それで5歳位の頃に、頭に角が生え始めたみたいでそれで住んでいた村を追い出されて、今まで過ごしていたみたいよ」
あの小さな子供は、見た目では判断できない程の壮絶な人生を送って来たのだろう。
俺はその話を聞いて、そう容易に想像が出来た。
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