第475話 【ジンVS勇者・3】


「神様と一体化だと……」


「厳密に言うとちょっと違うよ。ルティナ様の本体をこの世界に降臨させるには、僕の力はまだ足りなくてルティナ様の力の一部しか呼ぶことが出来ないんだ。だけど、それでもかなり強くなれるんだよ」


 勇者はそう言うと、バッと背中に白い翼を広げた。

 勇者だから何かしたら隠してる技があるだろうとは思っていたけど、まさかこんな大技を残しておいたとはな……。


「それにしても、考える事が同じだったとはそれはそれで驚いた。まさか、そっちも変身系だとは」


「うん。僕もジン君のその姿を見て、考えてる事同じだなって心の中で思ってたよ」


 勇者は少し照れたように笑うと、武器を構え直し「それじゃ、第二ラウンド始めようか」と言い、俺と勇者の戦いは再開した。


「流石、神の力を取り込んだだけあるな……リウスと合体してなかったら、確実に目が追い付いてなかった」


 勇者の動きはこれまでと比べて、倍以上早くなっている。

 今のリウスと一つになってる状態だったから目で追いついたが、これが普通の状態であれば確実に目で追えていない。

 それ程、今の勇者は身体能力が格段に上がっている。


「やっぱり、ジン君は凄いね。この状態で戦闘するのはまだ数回なんだけど、どの戦闘でも相手が一瞬で倒れてたんだよ」


「それはこっちも同じだよ。神の力って卑怯だろ」


「ドラゴンの力を取り込んでるジン君にそう言われるのはね~」


「確かになッ!」


 戦いながら俺は勇者の動きを観察しているが、神の力を取り込む以前とは動きが全く違う。

 翼を駆使した空中移動が追加された事で、空中で一瞬止まって別の方向から攻撃が来たりと、勇者は空中戦にかなり慣れている感じだ。


「ってか、今思ったけど神の力を取り込んだからって翼が生えるのおかしくないか? さっき一瞬見た女神に、翼なんて生えてなかったぞ?」


「今更だね。まあ、それはあれだよ。見た目の変化があった方が良いって、ルティナ様が言ってね。それで戦い自体は数回しかしてないけど、この姿になって空を飛んだり息抜きで偶にやってたんだ」


 俺のふとした疑問に、勇者はそう答えた。

 案外あの姿気に入って空を飛ぶのが好きって、案外勇者も普通の考えを持ってるんだな。

 そう俺は思いながら、勇者と激しい戦いを続けた。


「ふぅ~、流石にこの姿の維持は魔力がかなり消費されるな……」


 久しぶりに使う技というのもあるが、このリウスとの一体化にはかなりの魔力を消費する。

 それ相応の力を得る事が出来るが時間制限がある為、長時間の戦いには向いていない。

 しかし、既にこの姿となってから30分が経過して、俺の魔力も相当消費されている。


「……だけど、それは俺だけじゃないみたいだな? 勇者もその姿の維持にはかなり魔力を使うみたいだな」


「まあ、ね。女神様の一部とはいえ、力を借りてる状態だからこうみえてかなり辛いよ」


「お互いギリギリって事か……」


 互いにギリギリだと分かった俺達は、これ以上先延ばしした所で意味が無いと悟り、距離を取り最高の技で決める事にした。

 俺は刀を構えその刀身に俺とリウス、2つの魔力を纏わせた。

 勇者は聖剣を構え、神の力を纏わせた。


「いくよ。ジン君!」


「いくぞ、勇者!」


 互いにそう叫び、俺と勇者は最高の技を繰り出し会場の中央でぶつかった。

 互いの力がぶつかり合い、大きな衝撃破が起こった。

 それに動じない俺と勇者は、互いに一歩も引かず全力でぶつかり合った。


「「うぉぉ!」」


 俺と勇者、二人の最後の技のぶつかり合いは一分程続き、どちらが魔力の底が尽きるか観戦してる者達はジッと見守っていた。


「ジン君、やっぱり君は凄いよ」


 勇者はそう言うと、プツンと魔力が切れてその場に倒れた。

 俺は勇者が倒れる寸前、勇者の魔力が切れかけてると気付き、威力を弱めていたおかげで倒れた勇者に攻撃を与える事は無かった。


「本当に強かったよ……」


 俺はその場に座り込み、倒れてる勇者を見ながらそう呟いた。

 俺と勇者の戦いの結果を見守っていた観客達は、試合が終わったのを見届け、この日最大の歓声が鳴った。

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