第445話 【竜人国からの招待・3】


「なんか色々と増えてるな……」


 久しぶりにやって来た空島には、元々あった師匠の家以外にも研究所の他にいくつか建物が建てられていた。


「あれ、ジンさんじゃないですか? お久しぶりです」


 かなり変わってる空島に驚いていると、建物から出て来た悪魔に俺は声を掛けられた。


「ああ、久しぶりだな、師匠は居るか?」


「マリアンナ様ですか? 多分、今の時間帯は家の方に居ると思います」


 そう言われた俺は師匠の家に向かい、そのまま中に入った。

 そしてリビングに行くと、師匠とナシャリーさんが居た。


「あら、弟子ちゃんじゃない? 久しぶりね。一ヵ月も居なくなってたけど、迷宮に籠ってたの?」


「師匠、お久しぶりです。はい、ちょっとイリスを仲間に迎え入れて楽しくなって、そのまま一カ月程迷宮に籠っていました」


「……ジン。また強くなったね。レンも元気にしてる?」


「はい。元気にしていますよ。ナシャリーさんに負けない為に、魔法玉の研究をイリスと一緒に進めてます」


 寛いでいたナシャリーさんにそう言うと、ナシャリーさんは「あの玉、本当に不思議な力で出来てて難しい……」と言った。


「師匠達もまだ魔法玉の実験に苦戦してる感じですか?」


「そうね。まだ正直、半分も理解していないわ」


「レンは何処まで進んでるの?」


「聞いた話だと、レンも師匠達と同じ感じだと思いますよ。ただ一ヵ月前でその段階で、王都から離れる際に長期間の実験をすると言って、レンだけは偶に拠点と迷宮を行き来していたので、もしかしたら少し進んでるかも知れません」


 一ヵ月前、迷宮に籠る段階で師匠達が行き詰まった所までレンの研究は進んでいた。

 俺達は一ヵ月、迷宮から出る事は無かったがレンだけは定期的に研究の成果を見る為に帰っており、今がどこまで進んでるのか俺も分からない。


「レンの研究所、私のよりいい所だから進んでそうね……本当に、あの研究所は羨ましいわ」


「レンがかなり金を掛けて作ったと言ってましたからね。ナシャリーさんも空島に作るのは厳しいと思いますけど、地上の何処かに建てないんですか?」


「弟子ちゃん、ナシャリーはそこまでお金に余裕は無いのよ」


「今までの研究成果で得たお金は、全部研究とその他諸々の出費で消えてる」


 ナシャリーさんはそう俯きながらそう言うと、俺に視線を向けて「ジン、お金ある?」と聞いて来た。


「ありますけど、渡しませんよ? それにナシャリーさんなら、お金なんて直ぐに稼げると思いますよ?」


「弟子ちゃんの言いたい事も分かるけど、ナシャリーは無駄に働くのを嫌がるのよ」


 師匠からそう聞かされた俺は、師匠達で会ってかなり長いが、ナシャリーさんの意外な一面を知った。

 そのまま俺は師匠達と雑談を始め、ここに来て30分程経った頃にようやくここに来た目的を思い出した。


「師匠。この似顔絵から見て、これって本物の悪魔ですかね?」


 俺はハンゾウから受け取った資料に書かれていた似顔絵を師匠に見せると、師匠はよくその絵をじっくりと見た。


「この絵の通りなら、悪魔の可能性は半々って所かしらね。角とか悪魔のそれっぽいけど、こんな可愛らしい顔の悪魔は見た事が無いわね……弟子ちゃん、ベルロスにはもう聞いたの?」


「あっ、まだ聞いてません」


「それなら、一度聞いてみるのも良いと思うわ。私が知らないだけで、同じ悪魔なら知ってるかも知れないわ」


 そう師匠から言われ、俺は刀を取り出してベルロスを呼び出した。

 ベルロスは師匠達が居る場に呼ばれた事を少し嫌がっていたが、俺はそんなベルロスに似顔絵を見せた。


「知らんな、ただこの角は悪魔のそれに近い感じがする。もしかしたら、悪魔と人間のハーフの子かも知れんな……」


 ベルロスの言葉に俺は言葉を失い、師匠も「可能性が無い訳では無いわね……」と改めて絵を見ながらそう言った。


「この確認された土地を調べた方がいいですけど、丁度竜人国から招待されてて今すぐに行けないんですよね……」


「弟子ちゃんがいけないなら、私が行ってくるわ。こんな話をされたら気になるし、ナシャリーの研究も行き詰まってて気分転換には丁度いいものね」


 そう師匠が言ってくれたので俺は、この悪魔の姿をした者に関しては師匠に任せる事にした。

 その後、ベルロスは師匠達が居る場に長居したくないと言って、早々に刀に戻り、俺はもう少しだけ師匠達と話をしてから宿に帰宅した。

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