第443話 【竜人国からの招待・1】


 迷宮探索を再開して、一月が経った。

 最初の数日は、イリスのレベル上げと連携の見直しに使い、それからは普通に迷宮の攻略をしていた。

 俺達が迷宮攻略をサボってる間に神様は更に階層を増やしており、俺達が居ない間に更に30層分追加されていた。

 追加階層の量に俺達は喜び、この一カ月間迷宮攻略を楽しんでいた。


「暫く見てない間に、少し大きくなったかしら?」


 そして一ヵ月、迷宮に籠っていた俺は姫様から呼び出しをされ、一月振りに迷宮から出てきた。


「あ~、ちょっとは背伸びたかも知れませんね。最後に会ってから、一ヵ月も経ってますからね」


「そうね。ユリウスを通じて、連絡はしていたけど……まさか、こんな長く迷宮に潜ってるとは思わなかったわ。前までは、偶に戻って来てたでしょ? 何かあったの?」


 姫様から言われた通り、俺達はこの一カ月間ずっと迷宮に籠っていた。


「別に何かあった訳では無いです。単純に迷宮攻略が楽しくて、時間を忘れて攻略していて、気づいたらこんなに時間が経っていたんですよね」


「……それなら、良いけど。私達からしたら、もしかして何かあって迷宮に身を隠したんじゃないかってヒヤヒヤしたわよ」


 姫様はそう言うと、「心配損だわ」と言ってメイドが用意していたお茶を飲み一息ついた。


「それで一カ月、呼び出しもしなかったんですね。普通にユリウスさんを通じて、聞いてくれても良かったんですよ」


「……今までは私達に話してくれていたから、今回は国が問題を起こしたのかも知れないと思って直接聞けなかったのよ。一度だけユリウスから、遠回しで聞かれなかったかしら?」


「……あ~、そう言えば確かにそんな事もありましたね。普通に気付かなくて、普通に話しましたね」


「それで益々、ジン達の考えが分からなくなって、取り合えず一月は様子を見ようって事になったのよ」


 成程、それで迷宮で偶に会っていたユリウスがよそよそしい感じだったのか……この話を聞いて、納得した。


「今の所、この国を嫌う理由は無いですから俺達が身を隠す時は、ちゃんと話して隠れますよ。次からは何か気になったら、直接聞いてくれていいですよ」


「ええ、そうするわ」


 俺達が国を嫌っているかも知れないという誤解は解けた所で、姫様は今回俺を呼びだした本題を話し始めた。


「それで今回、ジンを呼び出し本題に移るわね。実は、少し前に竜人国からジン宛に招待状が届いたのよ」


「招待状? 何の招待状ですか?」


「やっぱり、一ヵ月も迷宮に籠ってたから外の情報が全くないみたいね。ジン達が迷宮に籠ってる間、竜人国は元神聖国の土地の開発を終わらせて、新たな街を作ったのよ」


 元神聖国の土地を竜人国は半分は自分達が使う演習場としてそのまま使う事にして、残りの半分を他国との交流の為にある街を開発したらしく。

 その新たな土地の名は、武神の名である〝アバルティス〟にちなんで〝武の街バルティス〟という名だと教えられた。


「それでその街の完成を祝う祭りが近々開催される事になってて、そこにジン達も来て欲しいと竜人国から招待状が届いたのよ」


「そうだったんですね。その祭りって、姫様達も参加するんですか?」


「勿論よ。竜人国とはこれからも仲良くしていく国として、交流を深めるためにも私達王族も参加する予定よ。竜人国もジン達が忙しいのは分かってるから、無理に参加はしなくてもいいとは言ってたけど、どうする?」


「そうですね。俺としては参加しても良いと思いますけど、皆にも聞かないと分からないので返事はまた後日でも大丈夫ですか?」


 そう聞くと、姫様は「ええ、大丈夫よ」と言われ、返事は宿に居る姫様の部下にすれば大丈夫だと言われた。

 その後、話はこれだけだったので俺は姫様に挨拶をしてから、姫様の部屋から転移で宿に帰宅した。


「って、戻って来てもクロエ達は今居ないんだったな……」


 一ヵ月振りの外で俺は姫様の部屋に呼び出しをされていたが、他のメンバーは各々久しぶりの王都という事で休日を満喫している頃だろう。

 レンとイリスに関しては、実験の結果がそろそろ出るかもと言っていて拠点に居るだろうけど、二人に先に話しても意味が無い。


「話は夜にでもするか、ってなると先にハンゾウの店に行って情報でも聞きに行くか」


 一ヵ月という長い期間、迷宮に籠っていたから俺の知ってる情報が大分古い物になってるだろう。

 そう思った俺は、ハンゾウの店へと転移で向かった。

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