第434話 【イリスと迷宮・1】
イリスと迷宮に行く予定の日となり、朝食を食べた後に俺の部屋に集まった。
「……イリス。眠そうだが、大丈夫か?」
「は、はい! ちょっと、寝るのに時間が掛ってしまって少し眠たいですが、大丈夫です!」
話しかけるまでイリスは眠そうにしていたが、俺が声を掛けるとハッとしてそう俺に言った。
「イリスちゃん、昨日から凄く楽しみにしてたもんね~」
「早く寝たくても、寝れない時はあるからな仕方ない」
申し訳なさそうにしているイリスにレイと俺はそう言って、今日はあまり無理はするなよとイリスに言った。
それから暫く部屋で待機していると、師匠が来たのでトコルタ王国の迷宮近くの街に送って貰った。
「師匠。送ってくださってありがとうございます」
「良いわよ。ただ送るだけだもの、迷宮探索楽しんでね」
師匠はそう言うと転移でその場から消え、俺達は事前に調べていた迷宮の場所へと向かって歩き出した。
その後、30分程歩いた俺達は目的地に到着して、門兵に冒険者の証を見せて中に入った。
驚いた事にその門兵は俺達の事を知っていて、少し興奮気味に相手をされた。
またその門兵は特に俺のファンらしく、会えた事を凄く喜んでいた。
「さてと、迷宮についたわけだが事前に話していた通り、前衛にレイとイリスを置いて、中間にクロエ、後衛は俺とレンで皆も大丈夫か?」
「うん! イリスちゃん、一緒に前衛頑張ろうね!」
「はい! レイお姉さま、お願いします!」
レイとイリスは元気よくそうお互いに言うと、クロエもその二人に混じって楽しそうに笑っていた。
「ジンと二人で後衛か、魔法の援護はジンに任せても良いか?」
「そっちは任せて大丈夫だよ。レンは【付与】と採取に専念してて良いぞ」
俺の言葉にレンは「採取の時間が増えるのは嬉しいな」と、少し笑ってそう言った。
その後、俺達は武器をそれぞれ手に持ち、いつでも戦闘が出来る状態で迷宮の奥へと進んでいった。
迷宮の中での戦闘は、まずはイリスを新しい装備に慣れさせるためにレイも一撃で戦いを終わらせず、イリスに魔物を譲っていた。
迷宮の魔物は本来であればイリスでは太刀打ちできない相手だが、【運命のサイコロ】と新しい装備のおかげで苦戦する事無く戦えていた。
「どうだ。イリス、新しい装備の使い心地は?」
「はい。凄く使いやすいです。防具は軽くて動きやすくなりましたし、刀も以前使っていた物に比べて本当に使いやすいです! それに強い魔物を倒しているおかげか、既にレベルも上がってる感じがします!」
迷宮に入ってから一時間程が経過して、休憩部屋に到着した俺はイリスに新装備の使い心地について聞いた。
すると、イリスは今までよりも使いやすくて戦いが楽しいと、嬉しそうに言った。
「そう言えば、イリスちゃんの装備の素材って〝遊戯神の迷宮〟の最深部で採れた物を使ってるんだよね?」
「そうだよ。だから、素材だけで見たら俺達よりもいい装備をイリスは使っているって事だよ」
「リーザさんのお店で注文する時に聞いてましたけど、お兄さま達は装備を変えなくても本当に良かったんですか?」
イリスは自分だけ新しい装備に変えた事が不安なのか、そう俺達に聞いて来た。
「この前も言ったけど、今は変える必要性が無いからな」
「そうそう。それに、今の装備に変えてから色んな敵と戦ってきて愛着が沸いてるから、そこまで急に変えようとは思わないんだよね~」
「私もジン君と同じで、変える必要性が今の所無いから変えてないんだよ」
「俺は面倒だからな、それに俺の役割は装備で大きく変わる訳では無いから、そこまで気にしてない」
そう俺達は言い、不安そうにしているイリスに「自分だけが新しい装備だからと、気にしなくても良いんだぞ」と言った。
その後、休憩を終えた俺達は再び探索を再開して、迷宮の奥へと向かった。
「ジン。イリスとレイ達、既に連携が合って来てないか?」
探索を再開してから暫くして、戦闘を繰り広げているレイ達を見てレンはそう口にした。
「レイ達がイリスに合わせては居るけど、それでもいい連携だと俺も思うよ。イリスが成長すれば、三人の連携はよりよくなりそうだな」
「こういったらジンに悪いけど、レイはジンと前衛で組んでる時よりもイリスと組んでいた方が生き生きとしているな」
「それは多分、俺の時だと色々とスキルを使って限界突破した状態を維持してついてこようとしているからだと思う。イリスとだと、逆に自分の力を抑えて気楽に戦えてるんだと思うぞ」
レイは俺と戦う際、少し無理をして戦っている時がある。
だがイリスと戦う際は自分が力を抑えている分、いつもより余裕がある感じで戦っている。
「まあ、成長次第だけどイリスが仲間になれば、俺はこのまま後衛に回る事になりそうだな」
「ジンはそれでいいのか? 刀で戦うのが好きなんだろ?」
「好きではあるけど、皆とのレベルを合わせるなら一旦後衛に回って、レベルが上がるのを待つってのもありだと思ってるんだよ。【遊戯神の迷宮】に挑んでいれば、いずれレイ達もレベル100を超えるだろうからな」
レイが俺のレベルまで上がってきたら、またその時に陣形を考えればいいだろうと。
俺はレイ達の戦いを見ながら、そう考えて戦闘が終わったレイ達に労いの言葉を掛け、探索を続けた。
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