第427話 【一緒に冒険・2】


 そうしてイリスの無茶で休ませた翌日、体調が戻ったイリスは俺達に向かって頭を下げた。


「お兄さま、お姉さま。私の無茶のせいで、ご迷惑をおかけしてすみません!」


 バッと頭を下げ、綺麗に90度腰を曲げたイリスはそう俺達に謝罪をした。


「イリス。どうして、俺達が昨日イリスの意思を無視して休ませたか、分かってるか?」


「はい。万全じゃない状態の体で依頼に出掛けようとして、お兄さま達を心配に掛けたからです」


「よく分かってるな、どうしてそれが駄目なのももう理解してるか?」


「万全でない状態という事は、判断能力や基礎能力が普段の時とは違う為、最悪の場合死んでしまうからです」


 俺の言葉に対して、イリスはそう申し訳なさそうに言った。


「一日、休んだおかげで理解してくれたみたいだな」


「イリスちゃん、もう無茶しない? 勉強も大事だけど、自分の体調の方が大事なんだからね?」


「はい。昨日の事で反省しました」


 そう言うイリスの顔は反省した者の顔をしており、俺達はそれ以上イリスに対して説教は止めた。

 そうして説教を終えた後、イリスには今日一日はゆっくりと休むようにと忠告して部屋に帰した。


「ねえ、ジン君。一度、イリスちゃんと一緒に冒険に出て見ない? 迷宮攻略も大分、進んでこのままだとまた最深部に到着しそうだし」


「あっ、それ私もジン君に聞こうと思ってた!」


 イリスが部屋から出て行った後、クロエ達はそう俺に聞いて来た。


「まあ、予想よりも早く成長してるからイリスと一緒に冒険に出ても良いとは思うな、レンはどうだ? 研究の時間があるなら、まだ先にしても良いけど」


「そういう事なら、研究の時間もズラすから大丈夫だ」


「レンが行けるなら、後は皆との予定を合わせれば行けそうだな」


 それから俺達はイリスとの冒険をする為、訓練状況等を話し合って行けそうな場所が無いか調べたりして、夜に再びイリスを部屋に呼んだ。

 部屋に呼び出されたイリスは、朝の説教の続きかとビクビクしていた。


「イリス。別に俺達はまた怒る為にイリスを呼んだ訳じゃないから、そうビクビクしなくても大丈夫だぞ」


「ほ、本当ですか?」


「むしろその逆でイリスが喜ぶ内容だと思うぞ」


 そう言うと、イリスは首を傾げて「私が喜ぶ内容ですか?」と口にした。

 そして自分の喜ぶ内容という事に悩んでるイリスに対して、俺は一緒に冒険に出ないか? と尋ねた。


「えっ、一緒に冒険にですか?」


「イリスも訓練に慣れてきた頃だし、俺達の予想を遥かに超えて成長してるから一緒に冒険に出掛けないかって皆と話し合ったんだ。まあ、結局はイリスが行きたいか行きたくないかだけど……」


「も、勿論行きます! 行かせてください!」


 俺の言葉に対してイリスは、すぐさま元気よくそう返事をした。

 それからイリスに俺達は、話し合って決めた内容をイリスに伝えた。

 冒険に向かう場所は王都からもかなり近くて、俺とクロエの思い出の場所でもある岩石山ダンジョンに向かうと伝えた。


「確か、そのダンジョンってゴーレムが沢山いるダンジョンですよね?」


「よく勉強しているな、そうだ。出てくる魔物は基本的にゴーレムで、迷宮では鉱石がよく取れるんだ。俺とクロエが冒険者を初めて、最初の頃によく通っていた場所でもある」


 そう言うと、イリスは目を輝かせ「楽しみです」と言ってイリスも特に用事が無い為、明日一緒にダンジョンに行く事が決まった。


「そう言えば、そのダンジョンにはレイお姉さまとレンお兄さまは行った事がないんですか?」


「まだジン達とパーティーを組む前だからな、その時はまだ別々で活動していたんだよ」


「そうそう。話はクロエちゃんから聞いてたけどね~」


「あっ、そうでしたね。ジンお兄さま達とレンお兄さま達は、最初は別々のパーティーでしたもんね」


 イリスは、以前話していた内容を思い出すとそう言った。


「あれ、でもジンお兄さま達とレンお兄さま達ってどこのタイミングで一緒になったんですか?」


「王都を旅立つ時だな、その前から交流はあったからパーティーに誘ったら二人が了承してくれたんだよ」


「話聞いてるだけで、ジン君達と一緒に居たら楽しそうと思ったからね。レン君もジン君達に本とかプレゼントしてもらってて、他の人に対してはそこまで興味なかったけどジン君達とは楽しそうに会話とかしてたもんね」


「でも今思い返すと、あの頃の方がレンは人付き合いがあったよな……」


 レンの言葉に続けて、俺はふと思った事を口にした。

 その言葉にレイは「そうかな、変わってないと思うけど?」とレンを見ながらそう言った。


「まあ、正直昔より人付き合いは苦手になったな、というか近づいてくる人間が変な奴等が増えたから勝手にそうなってしまった」


「レンの場合、色々と凄い実績を残してるからな。俺みたいに戦う能力しかない奴とは違って、歴史を変えてしまうかも知れない力だからな」


「いや、ジンの真の力は戦う力というより人脈だと俺は思うぞ」


 俺の言葉に対してレンがそう言うと、クロエは「うん。私もそう思う」と頷きながらそう言った。


「冒険者をしてて、王族と知り合いってやつはそうは居ないと思うぞ」


「それにジン君の場合、王族だけじゃなくて特殊な人達とも知り合いだもんね。ガフカの工房のリーザさんや、情報屋のハンゾウさん、ジン君の仲間だから私達も力貸してもらえてるけどジン君が居なかったら私達とは縁が無かったかもしれない人達だもん」


「私もまさか、ガフカ製の武具を身に付けられるとは思いませんでした」


 それから、もう少し話したそうにしていた皆に対して、明日はダンジョンに行くからと言って話し合いを終わらせて解散する事にした。

 解散後、皆は部屋から出て行き俺はベッドに横になり、いつもより少し早いが寝る事にした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る