第426話 【一緒に冒険・1】


 イリスが来て更に日が経ち、イリスも俺達のそれぞれの訓練に大分慣れてきていた。

 特にその中でも自分のものとしてきているのは、俺の教えている【刀術】だ。

 元々、剣に違和感がある中、剣を扱っていたイリスだが、これまで思い通りに行かなかった事が上手く行く様になった。

 その気持ちよさから、特に【刀術】の訓練に毎回気合を入れて取り組んでいた。


「レンの助手としては、どんな感じだ? イリスは働けているか?」


「正直、頑張り過ぎじゃないかと不安に思うレベルだな……刀や魔法の訓練をしながら、俺の助手として【錬金術】を習ってるから、多少は無理はしないように言って長い期間で見ると言っていたんだが……」


 レンはそう言いながら、俺達が普段見ないレンの助手としてのイリスの行動を教えて貰った。

 まずレンの考えとしては、半年間は素材のチェックをしながら、どういう素材があるのか頭に叩き込み、初歩的な薬の作成をする。

 そこまでを考えていたらしいのだが、イリスは暇な時間は図鑑を見て勉強を続けて、既に基本的な素材に関しては頭の中に入っているらしい。


「元々、頑張り屋なのは知っていたが、ここまでとは思って無くてな……無理はするなよとは言ってるけど、多分無理はするだろうなって」


「そこに関しては、俺達もイリスに感じているな。早く強くなりたいって想いが、イリスからこれでもかって滲み出てるからな」


「イリスは俺達と早く冒険に出掛けてたいって言ってたから、その目標に向かって突き進んでるんだろう」


 レンの言葉通り、イリスは俺達と共に冒険に出る事を目標に物凄く頑張っている。

 それは俺達全員が理解していて、多少無理をしているイリスを止められない理由でもある。

 だけど、流石に今日のイリスはフラフラとした足取りだった為、急遽迷宮に行く日だったが、クロエ達にイリスを強制的に休ませることにした。


「本人は気付いてないってのが、またな……」


「一応、自己管理が出来ないと冒険者として上にはいけないってのは伝えたから、これから先はそこまで無理はしないと思いたいな……」


 そう俺とレンはイリスの事を心配に思いながら、話は終わりにした。

 レンとの買い出しを終え、宿に戻ってきた俺達は部屋に居るイリス達の所に向かった。


「クロエ、レイ。ただいま、イリスはどんな感じだ?」


「おかえり、ジン君、レン君。さっき寝た所だよ。見張ってないと、直ぐ勉強しようとしてたから隣にレイちゃんが一緒に寝て寝かしつけた所」


 そうクロエが言うと、ベッドにはスヤスヤと眠っているイリスとレイの姿があった。

 一人用のベッドだが、女の子であるイリス達はそこまできつくはなさそうだった。


「そっか、じゃあここで話してたらイリス達を起こすかもしれないし、部屋の外に出るか」


「うん。そうしよっか」


 そうして、俺達はイリスの部屋を出て俺の部屋に移動して来た。

 ちなみに部屋を出る際、イリスが持ってる勉強道具は持ち出して来ている。


「イリスちゃんのノート見せてもらったけど、かなりビッシリ書かれてたよ。寝る間も惜しんで勉強してたってのがよく分かるよ」


「努力家なのは良いけど、無理は駄目だからな……体調を崩して、そのまま冒険に出て怪我をしたら意味が無いからな」


「うん。同じ事、イリスちゃんに言ったよ。流石にイリスちゃんも反省してた」


 クロエはそう言うと、イリスの部屋から持ち出したノートを手に取り「死んでほしくはないもんね」と言った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る