第415話 【弟子試験・2】


 近接戦闘、魔法戦闘の試験は試験会場が一緒の為、まずは近接戦闘の試験から始める事にした。

 近接戦闘の試験官の代表は俺とレイ、そして試験の協力者としてルークさん達が居る。


「ルークさん、今回は手伝いに来てくれて本当にありがとうございます」


「良いよ。友達が困ってるんだから、助けるのは当たり前だよ」


「うん。それに最近は迷宮にずっといて気分転換も来たかったからな」


 ルークさん達はそういうと、俺達は試験の準備をパパッと終わらせて試験者達に対して試験の説明を始めた。

 まず今回、最初に用意した近接戦闘の試験は、俺が作った〝土の壁〟に対して得意な攻撃方法で攻撃するという試験だ。


「壁については安心してくれていいよ。ドラゴンがブレスを放っても一度は耐えるくらいの強度してるから、各自本当に得意な技を本気で見せてくれ。それと、もしも俺の作った壁を粉々破壊できた場合だけど、実践試験はすべて免除となって、面接試験にそのまま向かってもらう形となってる」


 そう説明をすると、試験者達は多いに盛り上がり事前に順番を決めていたので、その通りに一人ずつ試験を始めた。

 ちなみにこの試験は壁の破壊度によって、合格か不合格か決めている。

 合格基準は壁に穴をあけるというラインではあるが、大体の者はそもそも壁に攻撃がはじかれて通過が出来ないでいた。

 しかし、その中でもちゃんと実力のある者達は試験の合格ラインを突破していっており、一部文句を言う者もいたが順調に試験は進んでいった。


「……なんで、ユリウスさんが試験に挑んでるんですか」


「姫様から出たら面白そうだといわれてね。私自身、ジン君から学べるところもあるなと感じていたから試しに受けに来てみたんだ」


 そうユリウスはいうと、試験が始まり壁に向かって自身の持つ最大の攻撃を放った。

 ユリウスの攻撃を食らった壁は、これまでの試験者の中で一番破壊出来ていた。


「粉々になるのを狙ったんだけど、かなり硬く作ってるみたいだね」


「試験を突破させるくらいですから、そりゃ強くしてますよ」


 ユリウスは若干悔しそうにしつつも、試験を突破できたから特にそれ以上の事はなく去っていった。

 その後も試験を続け、最後の一人まで壁が粉々に破壊されることはなかった。


「やっぱり、硬く作りすぎじゃないのか? これだと、逆に文句言われるんじゃないか?」


「試験を甘く見すぎてると反論しますよ。それに通過者もなんだかんだいますから、文句言われる筋合いはないですよ」


 ルークさんの心配事に対してそう返すと、最後の試験車が現れた。

 その試験車は口元までローブで隠れるように着ており、遠目からだとどんな人物か全くわからなかった。

 しかし、近くに来て魔力を感じ取った俺は、その人物が誰なのか気づいた。


「なんで、あなたまで来てるんですか……」


「アンジュが行けと煩かったんだ……」


 その人物の名はアンセル。

 情報をかなり遮断してる謎の多い人物ではあるが、アンジュとユリウスの幼馴染で女性ということはわかってる。


「とりあえず、試験を始める。準備ができたら、壁に攻撃をするように」


 そういうと、アンセルは頷くと懐から短剣を取り出し、初速からかなりの速度で走り出した。

 そして壁に近づくと、ジャンプしてそのまま壁に向かって攻撃を与えた。

 壁に攻撃を与える一瞬で、持っていた短剣に雷魔法を付与して、攻撃力を上げていた。

 そんな攻撃をくらった壁は亀裂が入ると、次の瞬間粉々に砕け散った。


「これで次の試験はパスなんだよな?」


「あ、ああ……」


 アンセルは俺から返事をもらうと、その場から去って行った。

 そしてアンセルが去った後、俺とルークさん達、そしてクロエと魔法戦闘の試験を受けるために待機していた人達は粉々になった壁を見て絶句して固まってしまった。


「本当に砕く奴が現れるとはな、俺も試したけどかなりの強度なのに平然としていたな。さっきのあいつと、ジンは知り合いだったみたいだけど誰なんだ?」


「あ~、情報を遮断してる感じの人なので詳しくは言えませんけど、かなりの強者ですよ。ここに来た理由も、友人から強く勧められたからといってましたから」


 その後、俺は驚いて固まってる魔法戦闘の試験者達に声をかけて、同じように壁の破壊具合での合否を決める試験を始めた。

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