第371話 【玉の力・2】


 そうして俺達は、メイを呼び出せる券を使用すると、券が光り輝きそこからメイが現れた。


「ジン様、クロエ様、レイ様、レン様。お久しぶりです!」


 光が収まりメイは現れると、元気よくそう俺達に挨拶をした。

 その挨拶に対して、クロエとレイは「久しぶり、メイちゃん!」と嬉しそうにメイを迎えた。

 そして俺達はそんなメイに対して、魔法玉について聞いた。


「流石、ジン様達ですね。既に魔法玉の存在を知っているとは、遊戯神様も神界で驚いていると思いますよ」


「その言い方だと、やっぱり魔法玉はかなり奇矯な物みたいだな……図鑑にも載ってない程だったからな」


 迷宮内で使える素材の場所を知る事が出来る図鑑。

 その図鑑で俺達は魔法玉について調べようとしたが、偽物すら図鑑には登録されなかった。

 その時点でこのアイテムは相当、貴重な物だろうと俺達は思い、また手に入れるのも難しいだろうと考えた。


「あ~……その事なんですが、本来であれば魔法玉も図鑑に載る予定だったんです」


 俺の言葉にメイは、何やら申し訳なさそうな顔をしながらそう言った。

 図鑑作成の作業をしてる際、魔法玉の事を見落としてしまい、そのまま作ってしまい配ってしまった。

 そのため、既に取り返しがつかない事になったとメイは言った。

 そして一度完成した図鑑は、次の迷宮が完成するまでは迷宮の主である遊戯神以外干渉が出来なくなってしまうと聞かされた。


「まあ、何百種類ってある迷宮の素材を図鑑にしてたら、そりゃミスもするよ」


「うう、申し訳ないです……」


 メイはそう謝罪をすると、呼び出した理由でもある魔法玉について教えてくれた。

 ただ魔法玉は迷宮のアイテムの中でも希少度が高いアイテムな為、あまり詳しい内容は伝えられないと先に言われた。


「ふむ、まあ玉の詳しい力についてはレンや師匠達が自力で調べると思うし、ここは取れる場所について聞くか?」


「俺はそれでいいと思う。玉の力も気になるが、自分で調べたい。それにここで聞いたら、折角の師匠と勝負できそうなのにズルをしてる感じで嫌だしな」


 レンのその言葉を聞いた俺は、クロエ達にも確認すると「私達も別に良いよ~」と言って、玉の力がどこで手に入れるのかだけ聞く事にした。


「偽物じゃない、本物の方の魔法玉は何処で手に入るのかだけ聞いても良いか?」


「はい。それでしたら、教えられます。本物の魔法玉は深層地帯でも更に深い地帯である90層以降で稀に魔物が持ってる事があります」


「90層以降か……出現率は偽物とどの位、差があるのか教えられるか?」


「そうですね。偽物の魔法玉と比べた場合、10分の1程度の確率ですね。更に本物を持ってる魔物は、警戒心も更に強くなってるので入手するのはかなり難しくなってます」


 メイのその言葉を聞いて、俺達は溜息を吐いた。


「10分の1の確率の上に、警戒心も強くなってるって手に入れるのは相当難しそうだね……」


「魔物と戦うのは楽しいけど、アイテム狙いで何度も戦うのは精神的に辛いよね~」


「師匠が一つしか、手に入れられなかった理由がよく分かる。そもそも、入手難易度が高すぎるんだな、本物の魔法玉は……」


「魔女でさえ、一つしか手に入れる事が出来なかった代物って時点で貴重な物だとは思ってたけど、ここまで入手難易度が高いとは思わなかったな」


 気軽に引き受けたけど、そもそも一つ手に入れるのも難しそうだな……最低でも二つ、出来れば三つは欲しいんだけどな。


「かなり長期戦になりそうだな」


「そうだね。もしかしたら、そこで出なくて足止め食らって他の人に先を越されるかもしれないね……」


「え~、それはちょっと嫌だよ!」


「まあ、頑張るしかないだろうな」


 レイの悲鳴に近い言葉に対して、レンは落ち着いた様子でそう言った。

 その後、俺達はメイにお礼を言うと、「またいつでも呼んでください」と言ってメイは消えた。

 そうしてメイと別れた俺達は、今後の目標を話し合いを行った。

 本物が90層以降しか手に入らないなら、偽物を狙うよりも早々にそこで狩りをした方が良いという事になった。

 なので、明日からはレンも本物は必ず欲しいという事で、俺達は再び攻略メインで迷宮に挑むと決めた。

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