第355話 【攻略争い・2】


 ユリウスからの手紙には、自分の達が今攻略している階層の事と住宅の場所を伝える内容だった。

 それ以外は特に書いて無く、情報を伏せる様にしているようだった。


「金の1って事は、俺達が使ってる家の一つ下のランクの一つ目の家って事か?」


「そうなります。現在、ジン様達がお使いになられているこの家は〝白金の家〟という呼び名で、一つ下のクラスの家は〝金の家〟という名称でございます。またそちらからは、番号も追加されます」


「成程な、ユリウスさん達は俺達が一番いい家に居るだろうと仮定して、この手紙を出してきたのか」


 俺はその手紙を読んでそう思い、取り合えず後で返事を書こうと思いテーブルに置き、問題の二枚目の手紙に目をやった。


「神様から手紙って、マジで何が書いてあるか分からないな……」


「ボスが楽しくないって散々文句言ってたから、もしかしてそれかな……」


「流石にそんなんで手紙は出してこないでしょ……」


「だけど、遊戯の神で自分の作った迷宮の悪口を言われたら、それで連絡を出しそうな気もするけどな……」


 そうレンが言うと、クロエとレイは「確かに」と言って何が書かれているのか不安に考えていた。

 俺はそんな皆を見て意を決して手紙の封を切った。

 すると、突然その手紙は光り輝くと小さな人形の姿へと変えた。


「やあやあ、どうも初めまして僕は遊戯の神テリスだよ」


 小さなその人形はピョンッとテーブルで飛び跳ね、元気よくそう挨拶をした。

 この小さな人形から感じる得体のしれない魔力、これは間違いなく神の力だろうけど、一応確認しておくか……。


「えっと、本物の神様ですか?」


「うん。まあ、流石に現世に姿を現すのは難しいから、こんな可愛い見た目をした人形でしか会話は出来ないんだけどね。まあ、君たちが最下層まで来たら本物の僕と会話が出来るから、その時まで僕の本当の姿は楽しみにしててよ」


 サラッと、最下層に到達したら神様と会える事が分かってしまったぞ? いいのか、こんな簡単に教えてしまって!?


「それで今回、態々なんで僕が君達の所に会いに来たのかだけど……今の人間の強さを教えて欲しくて来たんだよ」


「人間の強さですか?」


「うん。いや、ほら僕って普段は神界って呼ばれてる神が生活する世界に居て、偶に人間を見る事は出来るんだけどあまり長い時間は見れないんだよね」


 神様でも下界、俺達の住む世界を見るにはかなり色々と制限があるらしい。

 遊戯神様の場合、迷宮という場所を作る為に更に制限が課せられているらしく、普段はあまり下界の様子を確認出来ないと言った。


「それでさ、僕が見てない内に人間が成長してたのか、現状の迷宮の攻略速度が異常に早いんだよね……特に君達は、僕が予想していた攻略速度を何倍も早くてボス討伐なんて僕の予想だと倒すのに数十分かかる計算だったのが、たった数秒で倒されて流石の僕も驚きすぎて椅子から転げ落ちたんだよ」


「いや、あのなんかすみません……」


「謝らなくても良いよ。僕がちゃんと下界の状況を確認してなかったのが悪いからね……それでさ、君達にお願いがあるんだけど僕に今の下界がどの程度の力が平均なの教えてくれないかな? 勿論、ちゃんとお礼はするから」


 そう神様からお願いされた俺達は、流石に断る訳にもいかず「いいですよ」と了承した。

 そこから俺は現在の下界の平均的強さを調べる為、一旦迷宮を出てハンゾウの元へと向かった。


「……魔女やドラゴンの次は、神様か? 本当にお前は凄いな」


「いや、今回は俺も驚いてるよ。それで、神様からの頼みで人間の強さを調査してほしいらしいんだけど頼めるか?」


「まあ、その位なら別に直ぐだぞ? 普段から必要な情報として、集めてあって後はまとめるだけだ。少し待ってろ」


 そうハンゾウは言うと、部下を呼び出して資料制作を命じた。

 その制作が終わるまでの間、俺はハンゾウと最近の王都の様子などを聞いて、迷宮目当てに他国から冒険者が集まっているという話を聞いた。


「今の所、まだ問題は起きては無いな。昔だったら、直ぐに問題が起きてたが……やはり、お前の存在が大きいだろうな」


「俺? 何でだ?」


「お前は一人で悪魔を倒す奴な上に、神聖国を潰した張本人だろ? そんな奴がいる国に迷惑を掛ける奴なんて、そうはいないって事だよ。俺ならまず近寄りたくも無いからな」


「近寄りたくないって、酷い奴だな……」


 そう言う俺だったがハンゾウの言葉を聞いて、確かに傍から見たらそんな強い奴がいる国に迷惑を掛けるのは怖い気がするな。

 それから暫くして、ハンゾウの部下が資料をまとめてきてくれて、俺はそれを受け取り、迷宮の神様が待ってる家へと戻った。

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