第六章
第301話 【勇者の旅へ向けて・1】
魔王討伐を祝うパレードから数日後、俺は姫様の部屋へと招集された。
作戦会議として使う姫様の部屋には、俺以外に勇者とアスカ、そしてユリウスと姫様が既に居た。
「ここにアスカが居るって事は、アスカはこっちの味方って事か」
「ええ、あれだけ問題のある子達にこれ以上、迷惑を掛けられるは可哀想だと思ったのよ。それにまだギルドの仕事はフィーネに任していて、暇だったからこっちを手伝いに来たの」
「正直な所、全員を欺くのは面倒だったから、アスカがこっちに来てくれたのは嬉しいわ。ちなみにここには居ないけど、フローラも協力的だったわ」
話に出たフローラは現在、両親と共に領地の方で療養中だと聞いた。
旅の間、あの馬鹿達のせいでかなり精神的にも来ていたらしく、パレードが終わって直ぐに両親と共に領地の方へと向かったと聞いた。
「という事は残り5人を欺く感じですか?」
「それなんだけど、ノラは連れて行こうかなと考え直したんだ」
戦女の一人、ノラは天涯孤独の身で一人でこれまで暮らしていた。
そんなノラは戦女として選ばれ、勇者と共に魔王討伐に行くと言うのがゲームでの設定だった。
「そこは私も思っていたのよね。ノラちゃんは正直、何を考えてるかイマイチ分からない性格だけど、勇者とは普通に意思の疎通が出来てるから、私達の所に居るより勇者と一緒に居た方が良いと思ったのよ。他の4人に関しては、馬鹿女達は原因だし、姉妹に関しても馬鹿女達よりレベルは低いけど、度々問題を起こしてたからね」
「そうなんですか? 話では、あの二人が酷いとしか聞いてませんでしたけど」
「レベルがあの二人の方が上だっただけで、姉妹の方もなんだかんだ問題を起こしていたのよ」
そう姫様が言うと、勇者は「女の戦いは本当にもう見たくないよ……」と疲れた顔をしてそう言った。
魔王討伐の旅よりも女の戦いで、勇者は疲労が溜まっていたんじゃないか?
そう思う程、勇者はもう女の戦いは見たくないみたいだった。
「最初はギルドで面倒を見ようと思ってたんだけど、本人に聞いたら勇者と旅をしてる方が楽しいって言われてね。それなら、私が止めるのは野暮だと思って行かせる事にしたのよ」
「成程、それでその本人は何処にいるんですか?」
「今はパレードで体を動かせなかったからって言って、訓練場の方で体を動かしてるわ。話し合いの結果だけ、後で教えてって言ってたわ」
まあ、確かにゲーム通りの正確ならこういった話し合いの場だったり、昨日まで続いていたパレードなんかはあまり好きじゃないだろう。
その後、今日集まった本題である勇者の旅に関しての話し合いが始まった。
まず第一条件として、4人の戦女に行き先がバレない様にする事が重要だ。
「……まず、見た目変えた方がよくないですか? 正直、勇者のその顔はもう世界にバレてるので変えた方が良いと思いますよ」
「そうだよね。僕もそれは考えてて、姫様に変装用の道具を貸してもらったんだけどさ……これだけは、どうしても見た目が変えられないんだよね」
そう言いながら出したのは、この世でただ一つの聖剣だった。
……確かに、こいつを変える事はほぼ不可能に近いな。
「だとしたら、聖剣の使用は控えた方が良さそうですね。勇者からしたら、聖剣以上の剣は無いと思いますけど、バレるよりマシかと思いますよ」
「やっぱりそうだよね……一応、ドワーフ族の魔剣も貰ってるから、バレない様に人里ではそれを身に着けておこうと思うよ」
そう勇者は言うと、一先ずその変装用の道具を使って変装をしてみると言って、いつも俺が転移してくる時に使う部屋に入った。
そして数分後、見た目がガラリと変わった勇者が部屋に入って来た。
今までは金髪の爽やかイケメンだったのが、髪色が黒く染まって落ち着いた雰囲気のある青年へと変わった。
「結構、変わりましたね」
「勇者の元の顔はかなり広まってるから、これくらいしないといけないのよ」
「まあ、確かにそうですね。でも、似合ってはいますね」
「ふふっ、ありがとう。僕もこの姿気に入ってるんだ」
そう勇者が言うと、アスカも「これなら流石に、あの馬鹿な子達も分からないと思うわ」と言っていた。
そうして見た目の問題が解決した所で、次の旅の場所の話へとなった。
「国内に留まるか留まらないかですけど、どっちの方が良いですかね?」
「僕としては折角の自由な旅だし、色んな国を見てみたい気持ちはあるけど帝国とか問題のある国がどこか明確に分かってないから悩んでるんだよね」
「まあ、確かにそうですね。……そう言えば、姫様。帝国ってあの後、どうなったんですか?」
デュルド王国に戦争を吹っ掛け、更に悪魔も召喚した帝国の事は俺は国に任していた。
その結果を俺はそう言えば聞き忘れていたなと思い、姫様にそう聞いた。
「帝国と、帝国に加担した国に対して多額の賠償金と資源の没収をした所ね。まだ帝国に関しては、問題が山積みだから時間はまだかかりそうだわ」
そう姫様は溜息を吐くと、「折角、魔王を倒したのに問題があって休めないのよね」と愚痴を零していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます