第278話 【襲撃・3】
「人も魔物も沢山いるね。あれ全部、帝国の差し金なの?」
「この間、帝国に行った時にあった人と同じ魔力をあそこから感じるから、そうだと思うよ」
数万規模の兵士と数千規模の魔物の軍隊。
俺はそんな敵の軍に対して、リウスに乗り敵軍の上空へと移動した。
「あ~、あ~、聞こえますか~。こちらデュルド王国遊撃隊隊長ジンですけど、何用でこんな軍を王都の近くに寄こしたんですか?」
そう俺は聞くと、下の帝国兵からいきなり魔法を放たれた。
うん、交渉の余地は無いという事だろう。
「そっちがその気なら良いけど……今から死ぬのは、お前らだぞ」
そう俺は言うと、空に向かって合図を放った。
その合図と共にクロエ達は一気に帝国軍に対し、攻撃を仕掛けて俺も上空から帝国軍に対して攻撃を仕掛けた。
何万と数が居ようと、何千と魔物を使役ていようと、俺達の敵にはならなかった。
そして一時間もしないうちに魔物は全て殺し、帝国軍の兵士達も幹部以外は全て殺した。
「数日ぶりですね。帝国軍将軍ルーサルスさん」
「……帝国のやり方が間違っているのは知ってる。だが俺達に止める術はなかったんだ」
帝国で会った際、何か思いつめた顔をしていたけどやっぱりこの人は帝国のやり方に反対していた人なんだろう。
「どうして、この様な事をしたんですか? 帝国の兵力がどれ程かは知りませんが、四天王を倒した俺が王都に残ってる事は知ってましたよね」
「帝国は、ジンの力を見誤ったんだ。四天王をたかだか倒したくらいで、数万の兵士には勝てないとな……」
「そうですか、わかりました」
将軍の言葉を聞き終えた俺は将軍の頼みの〝殺害〟をせず、犯罪者を拘束する道具で将軍とその他の幹部達を捕まえた。
クロエ達は人を殺した事で、少し気に病んでる様子だったので宿に先に戻ってもらい、俺は将軍達を連れて城に移動した。
大量の帝国兵を連れてきた俺に兵士達は驚き、対応に困っていたがその場に国王が現れ、兵士達に的確な指示を出した。
「ジン、すまないが。部屋に来てもらえるか? 何があったのか教えてほしい」
「はい」
国王からの頼みに俺はそう返事をして、国王と共に会議室へと移動した。
そして、何があったのか詳しく国王に説明をした。
「予想はしておったが、帝国は本当に動いたんだな……」
「はい、忠告はしていたんですけどね。ドラゴンと魔女が居ると分かっていて、攻撃を仕掛けてくる馬鹿な国が本当に居たとは俺も驚きです」
「……ジンがそれらと繋がってる事自体が驚きだけどね。フィアリスから聞いておいてよかったよ」
国王は俺が師匠とスカイと繋がってる事を事前に姫様から聞いていたからか、驚くような事は無かった。
「それで捕まえたあの人達はどうなるんですか?」
「国を攻撃した罪は重いから、どんなに罪が軽くしても死刑は変わらない。その前に尋問にして、帝国の今後の動きについて聞こうとは思う」
「そうですか、わかりました。もし何かありましたら、姫様の従者伝えにご連絡下さい」
「ああ、よろしく頼むよ」
その後、俺は城を出て転移で宿に戻った。
これまで依頼で盗賊を捕まえたり殺した事はあるが、あそこまでの大量に人の死を見た事が無いクロエ達は少しを病み部屋で休んでいた。
俺はスキルの【状態異常耐性】のおかげで、多少緩和されてるが数万も人を殺した事になんも感じないわけではない。
「……それにしても、どうして帝国はあんな無謀な事をしたんだ」
正直、俺の力を見誤ったとしても国には防衛の為にそれなりの戦力が配置されている。
それに対して、あんな無謀な作戦を帝国が何で取ったんだ?
「大量の人の犠牲……ッ! もしかして!」
人の死、それも大量の人が死んだのには何か理由があると考えていた俺は、人の死が悪魔召喚に関係してるかもと思い飛び起きた。
そして、拠点の裏庭で休んでいたレドラスの元に駆け寄った。
「どうしたんだ。そんな慌てて?」
「レドラス。悪魔をこの世に償還する方法の中に、人の死が関係してる事ってあるか?」
「人の死が関係する召喚方法? そんなの悪魔召喚の基本のようなものだど? 人の死は、悪魔にとって最高の対価だからな」
「……そうか。わかった。レドラス、俺は今から師匠の所に行ってくる。そしたら、お前の力を少しだけ開放してもらうから、お前は宿で休んでるクロエ達の護衛に向かってくれ」
俺がそう言うと、レドラスは「どういう事だ?」と聞いてきた。
「ついさっき、帝国軍の兵士数万人を殺した。俺の予想が正しければ、帝国軍は人の死を利用して悪魔を呼び出そうとしてるんじゃないかと思ってる」
「帝国? 成程な、確かにあそこは昔から色々と闇のある国だからな。ジンの予想通り、悪魔の召喚の為に大量の人の死を利用したと思うぞ」
「そうか……取り合えず、レドラス。クロエ達の事は頼んだ。もし今回、俺の頼みを聞いてくれたら、力を少しだけ開放した状態で今後は過ごせる様にする」
「それは嬉しい報酬だな。ああ、わかったよ。俺も今の生活、なんだかんだ気に入ってるからな、お前の仲間達とついでにこの国は任せときな」
そうレドラスの返事を聞いた俺は、急いで空島へと移動して師匠に会いに行った。
空島で読書をしていた師匠は、突然現れた俺に驚くと「何かあったの?」と聞いてきた。
俺はそんな師匠に帝国が攻めて来た事、そして大量の人の死を利用して悪魔を召喚する可能性の事を話した。
「俺は今から、戦闘した場所に向かう予定です。師匠にはレドラスの力の封印レベルを少し下げに来てもらい来ました」
「……私が力を貸さなくても大丈夫なの?」
「師匠はこういった事に力を使わない事は知ってます。なので無理に手伝ってほしいとは言いません、ですが王都には知り合いも沢山いるのでできればレドラスと一緒に王都を守ってくれたら、俺は安心して戦いに行けます」
「まあ、その位なら良いわよ。私もあの国の事は少しだけ気に入ってるから」
師匠のその言葉を聞いて、俺は少し焦っていたが師匠が王都を守ってくれると聞いて安心した。
その後、師匠は王都の方へと転移して、俺はさっきの戦闘場所へと向かった。
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