第275話 【進軍・3】
それから二日後、予定通り勇者達は王国を旅立った。
勇者達を見送った俺達はそれから数日間、王都に留まり変わった様子がないか毎日王都周辺を探索している。
「そろそろ、最後の四天王が陣取ってるって言ってた砦についたかな? 無事に勝てるかな?」
「ああ、今頃戦ってると思う。まあ、流石に四天王相手に負けることはないだろう」
「そう言いきるって事はジンは勇者の力、結局近くで見たのか?」
「いや、直接は見てないけど、この間の戦女同士の喧嘩の際に勇者を見て、体内の魔力の質がかなり高かったからあれで負けることはないと思ったんだよ」
本当はゲームではこの時期の勇者は、ゲーマー次第だが普通に成長していたら苦戦することはなく突破できる。
縛りプレイとかしても突破できるから、修行に失敗してない限りは大丈夫だろう。
それにこの世界の勇者の装備は、多分ゲームの時の勇者以上の装備をしている。
武器に関しては聖剣があるからいいとして、防具に関しては隠れ里のドワーフが丹精込めて作った防具を着ている。
さらに戦女達の装備もゲーム時代よりもいい物を使っているから、あれで負けるなんて事はないと思う。
「それにまあ、危なくなったら姫様から通信が来るからすぐに助けに行けばいいしな」
一応、念の為にいつでも俺達に救援を要請できるようにと俺は姫様から通信用の魔道具を貸してもらっている。
高価な物で貴重な物なので、個人で持つことはないのだが特別に借りている。
その後、王都周辺の見回りを終えた俺達は街へと戻ってきてギルドへと向かった。
「どうでしたか、王都の周辺に変わりはありませんでしたか?」
「はい、特に変化はありませんでしたよ」
「そうですか。本日もありがとうございます」
報告を聞いたリコラさんはそうお礼を言い、俺は「好きでやってるのでお礼いいですよ」と言って俺達はギルドを出た。
ギルドを出た後は、解散となりクロエ達は買い物に出かけ、レンは研究をしに拠点へと向かった。
「さてと、俺も自分のするべき事でもするか」
そう呟いて俺はハンゾウの店へと向かった。
ハンゾウに店についた俺は、奥の部屋に通されて頼んでいた情報が書かれた資料を受け取った。
「流石、情報屋だな。どうしたらついっさっきの出来事がこんな細かく書かれてるんだ?」
「企業秘密だな、まあ教えてもいいがお前の秘密も教えてもらうことになるぞ?」
「んじゃ、いいや。まあどうせ【念話】スキルを持ってる部下がいるんだろ」
「……知ってるなら、わざわざ聞くなよ」
俺の言葉に対して、ハンゾウはムスッとした様子でそういってきた。
俺がハンゾウに頼んだ情報は、勇者達の旅の現在の状況だ。
通信魔道具を受け取ってるとはいえ、向こうの状況を確認することはできない。
だから俺は向こうの状況を知る為、ハンゾウに情報を頼んだ。
「へ~、無事に最後の四天王は倒せたみたいだな」
「俺の部下の話によると圧勝だったらしいぞ、勇者が一人で倒したらしい」
「まあ、それだけの力は持ってるからな……あれ、でも戦女が怪我したって書いてあるが?」
四天王戦は無事に解決したと書いてあったが、その下の情報にアスカが怪我をしたと書かれていた。
あのアスカが怪我? 何かあったのかと、思った俺はハンゾウに詳しく聞いた。
「あ~……それなんだが、別に大した内容じゃないんだよ。お前も知ってるだろ、戦女の中でいざこざをよく起こすのが居るって」
「ああ、出発前もそれで少し問題が起きてたな、それが何か関係あるのか?」
「そいつらが四天王討伐後に喧嘩をしてな、それで止めに入ったアスカが怪我をしたんだよ。それで一時的に進軍が止まって、今は向こうの雰囲気は最悪な状況らしい」
「うわ~……予想してたけど、マジでやったのか」
ゲームでは流石に、この時期は喧嘩してなかった。
しかし、この間の問題を見てもしかして進軍しても喧嘩するんじゃないかと、俺は予想していたのだがそれが的中してしまった。
「アスカは無事なのか?」
「軽い怪我だったから、姫様がすぐに治療したらしいが件の喧嘩した二人は、アスカに謝罪もせずに未だに喧嘩中らしい」
「マジかよ……勇者はどうしてるんだ?」
「流石に怪我をさせた手前、二人には起こったらしいが。二人は反省してないみたいだな、姫様も流石に呆れてもう注意する気力すら沸いてないらしい」
知らない間に修羅場が起きて、悲惨な状況になってたのか。
四天王討伐よりも、戦女同士の関係性のが問題あるみたいだな。
その後、俺は引き続き情報集めをハンゾウに頼んで宿に戻った。
その日の夜、俺はクロエ達にハンゾウの所で貰った資料を見せつつ、向こうの状況について伝えた。
「うわ~……そんな状態で魔王討伐できるのか心配だね」
「勇者とは仲違いしてないから、大丈夫とは思いたいけど……というか、魔王討伐の際は俺達も向こうにいるかもしれないから、その最悪な雰囲気の中に行く可能性もあるんだよな」
「「え~」」
俺の言葉に皆はそう嫌そうな声を発し、もしも俺達が行った時もまだそんな状態なら勇者達には近づかないようにしようと決めた。
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