第263話 【帝国の動き・3】
翌日、予定通り姫様の所へとやってきた俺はハンゾウから貰った資料を姫様に見せた。
「……まさか、こんな事になってるとは思ってなかったわ」
「やっぱり、帝国については気付いてたみたいですけど小国の国々については見落としてましたか」
「ええ、全く気付かなかったわ……助かったわ、ジン」
「いえ、俺もハンゾウのおかげで知っただけですから」
姫様は資料を見ると険しい顔をしながら、そう俺に対してお礼を言った。
それから姫様は直ぐに従者を呼び出して、直ぐに調査の対象を帝国の周辺国も含めるようにと伝えていた。
「それにしても、まさかこんな数の国が魔王軍と繋がってるとは思わなかったわね……」
「そうですね。俺も最初それを見た時は驚きました。でもそれで色々と納得した所もありますね。隠れ里の魔王軍襲撃に関して、何処からあれだけの数がやってきたのかって疑問でしたけどそれらの国に隠れていたんだなって」
「それはあるわね……魔王軍に協力してる国の位置的に、それは可能ね。成程、色々とこれまでの謎も解けそうね。本当にジンには感謝しないといけないわ」
姫様はそう言うと、またお礼は後日すると言われて調査に取り掛かる為、今日は長く話す事は無く解散となった。
そうして姫様の所からギルドの近くに転移して、ギルドの中に入りクロエ達が使ってる部屋に向かった。
部屋では既にクロエ達とリコラさんが話し合っていて、丁度依頼が決まったタイミングだった。
依頼は普通に王都から少し離れた所の草原に、本来そこに居ない筈のオークが居るから討伐するという内容だった。
「それで姫様は何て言ってたの?」
「ああ、直ぐに調査の対象に他の国も含める様にって従者たちに言って、多分今は王様達にもその話が行ってると思う」
依頼を受けた後、ギルドを出て目的地に向かいながら話し合いの結果についてクロエ達と話していた。
「相当驚いてたんじゃない? まさか、あれだけの数の国が魔王軍と繋がってたって知ったら」
「ああ、驚いていたよ。それに気づいても居なかったみたいで、俺が情報を持ってきた事に凄く感謝されたな」
「だろうな、あんな貴重な情報はそうそう入手出来ないだろうからな」
「ハンゾウと知り合ってて良かったって初めて思ったよ」
そう俺は言うと、丁度視線の先に標的のオークが見え、俺とクロエの魔法で一瞬で戦闘は終わった。
「もう終わっちゃったね」
「まあ、普通のオークだしな、昔ならまだ戦いになってたけど師匠達と修行した後じゃ、あの程度では戦いにすらならないからな」
「そうだよね。強くなりたいってずっと思ってたけど、強くなると楽しめる戦いが少なくなってちょっと寂しいかな」
レイがそう言うと、横で話を聞いていたレンが「贅沢な悩みだな」と言った。
その後、討伐した魔物の死体を回収して王都に戻ってきた俺達は依頼の達成報告をした。
「さてと、今日の活動はこれで終わりだけど皆はどうする?」
「皆でやる事が無いなら、俺は研究に行くけど」
「ん~、特にやりたい事が無いし解散でいいんじゃないかな?」
「了解。それじゃ、今日はこれで解散とするか」
結局、今日の依頼は簡単すぎて昼前に終わり、ギルドの前で皆と別れた俺は情報収集の為、ゴブリン商人の元へと向かった。
「ヒサシブリダナ、ニンゲン」
久しぶりにあったゴブリン商人は、何度も取引をしてるうちに俺の顔を覚えたのか気さくにそう話しかけて来た。
「ああ、久しぶり。情報が欲しいんだけど、イロス帝国に関する情報はあるか?」
「アルゾ、ドレガホシイ?」
そういってゴブリン商人は紙の束をいくつか取り出したので、俺は全て購入する為に【異空間ボックス】から取引用の果実を渡した。
情報を手に入れた俺は中身を確認したいから早く帰ろうとしたら、ゴブリン商人から「スコシマテ」と止められた。
「どうした?」
「コレ、オサカラオマエニワタスヨウニタノマレタ」
そういってゴブリン商人は、何やら書状の様な物を取り出して渡してきた。
「オサ? お前達のか?」
「ソウダ。コッチデモ、オマエノコトハユウメイダ」
ゴブリン商人達の長って、ゲームで登場していたっけ?
俺はそんな事を考えながら、取り敢えず持ち帰って中身を確認しようと思い、商人に「また買い物に来るよ」と言って転移で宿に帰宅した。
「先にゴブリン商人の長からのから読むか」
帝国関連の事も気になるが、それ以上にゴブリン商人の長からの書状が気になった俺はゴブリン商人から受け取った書状を取り出して中身を確認した。
すると中には、ゴブリン商人の拠点の地図らしき物と、そこへの招待状が書かれていた。
招待状には、時間がある時でも構わないから一度里に来て欲しいとという内容だった。
「ゲームでも知られていない、ゴブリン商人の里に招待だと……」
その内容に俺はワクワクしたが、もし場所が遠い場所だと折角皆と決めた取り決めを破る事になる。
そう思った俺は地図をちゃんと確認すると、なんとゴブリン商人の里はデュルド王国内にあった。
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