第262話 【帝国の動き・2】


 話し合いの結果、一ヵ月の間また訓練をするのは味気ないというか、変わり映えが無さ過ぎて訓練に身が入らないと意見が一致。

 だからといって俺達の実力に合うようなダンジョンに行くと、日帰りで帰って来るのが面倒。

 なら、その間をとって実力は試さないけど暇つぶしは出来る王都周辺の依頼を受けて過ごそうという意見にまとまった。


「なんかすごい遠回りしたけど、結局はダンジョンに行かず王都で過ごすって事だよね?」


「正直な話、これまで長い休みを取ってこなかったから姫様に呼ばれるまで休暇でも良いかなとは思ったけど、それだと体が鈍ってしまうかもしれないからな。だから週の休みを二日か三日に変えて、残りは体が鈍らない程度に依頼を受けよう」


「うん、それが良いかもね」


 そう話し合いを締めくくった俺は皆を部屋に帰し、リカルドに少しだけ外に出掛けて来ると言って宿を出た。

 宿を出た俺は商業区の方へと向かい、ハンゾウの店へとやって来た。


「ハンゾウは居るか?」


「はい、奥に居ますよ」


 店員にハンゾウが居るか確認すると、特に予約もしていなかった奥の部屋へと案内された。


「どうしたジン? お前が来るなんて珍しいじゃないか」


「少し気になった事があってな。帝国について、お前の方ではどこまで調べてる?」


「帝国か、ジンにしても珍しくその情報を入手するのが遅れたな」


「ここ最近はずっと兵士の訓練に忙しくて、情報収集が出来ていなかったんだよ。報酬はちゃんと払う」


 そう言って俺は【異空間ボックス】からお金が入った袋を取り出して、机の上に置いた。

 ハンゾウは袋の中身を確認すると、笑みを浮かべ「まいど」と言って資料を取り出した。


「それは複製だからジンにやるよ。どうせ、いつか来るだろうと思って用意してたんだよ」


「そうか、助かる」


 用意されていたと言われた資料に軽く目を通し、その内容の濃さに俺は溜息を吐いた。

 ゲーム通り、というかゲームの時よりもちょっと酷い状況だな……。

 もしかして、ゲームの時とは違い四天王が討伐された時期が早くなったりして、魔王軍が焦って動いたのか?

 その後、俺はハンゾウに礼を言って、また新しい情報が入ったら知らせてくれと頼み、転移で宿に戻った。


「……マジか、ゲームだと帝国だけだったけど帝国の方にも魔王軍に協力してる国があるのか」


 夕食の時間まで時間があるから、少し資料に目を通そうと思い資料を見ていると、信じられない内容が書かれていた。

 ゲームではイロス帝国だけが、魔王軍と繋がっていたがこの世界だとイロス帝国の他にも魔王軍と繋がってる国があった。


「場所はイロス帝国の隣国か……」


 無理矢理従わされてる可能性が高いが、この情報は姫様も知らなかった筈だ。

 ハンゾウにはこの情報は好きにしてもいいと許可貰ってるし、直ぐに姫様に知らせるべきか?

 そう俺は少し悩み、宿から少し離れた所に待機してる姫様の従者の一人に声を掛け、明日朝一で姫様の所に話したい事があると伝えて貰った。


「ジン、どうしたんだ。そんな暗い顔して」


 夕食の時間になり、食堂に行くと俺の顔を見てレンが何かを察してそう聞いて来た。


「さっき、ハンゾウの所に行って情報を貰って来たんだが、その内容がな……」


「さっき出てたのは、ハンゾウさんの所に行く為だったんだね」


「どんな内容なの?」


 クロエ達にそう聞かれた俺は、他の人に聞かれたら色々とヤバい内容の為、後で話すと言って夕食を食べた後、俺の部屋にもう一度集まった。

 そしてクロエ達に資料を見せ、俺がどうしてあんな顔をしていたのか説明した。


「うん、これを見たら誰だってあんな顔になるね……」


「凄いな、こんな数の国が魔王軍と繋がってる何てな」


「ああ、でも場所的にイロス帝国の近くだから、もしかしたら無理矢理って可能性もある。ただ現状としては、それだけの数の国が魔王軍と繋がってるのは事実だ」


 そう俺が言うと、資料を見ていたレイが「この事、姫様は知ってるの?」と質問して来た。


「一応、知らないかも知れないから明日の朝一に姫様の所に行って伝える予定だ。全員で押しかけても朝から迷惑だろうから、いつも通り俺だけ行ってまた後でどうなったか伝えるよ。それまでは、皆にはギルドに行って良さそうな依頼を探してて欲しいんだけど、いいかな?」


 明日の急な予定変更についてそう伝えると、クロエ達は「了解」と了承してくれた。

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