第五章
第241話 【戦力強化・1】
師匠とのダンジョン探索から数日後、俺はリーザの店へとやって来て頼んでいた物を受け取りに来た。
「本当に難しい鉱石だったけど、凄く楽しかったわ。こんないい経験させてくれて、ジンには感謝してる」
リーザは凄く良い笑顔でそう言いながら、今回頼んだ物をテーブルの上に置いた。
今回、隠れ里のドワーフ族から貰った鉱石、それはドワーフ族でも扱いが難しいとされている【聖魔鉄】という鉱石。
聖なる力と魔の力を取り込んだ鉄で、これを使った武具には聖なる力と魔力を強化する力が宿ると教えられた。
ゲームではこんな鉱石見た事も無いが、予想だが謎にされてる〝聖剣〟に使われた鉱石なのかも知れないと俺はこの鉱石を見てそう感じた。
「ジン、本当に良かったのか俺達の武器で」
「そうだよ。私達より、レイちゃんとジン君の武器や防具に使った方が良かったんじゃない?」
今回、その鉱石で作ったのは武器が二つ。
一つはクロエの魔法攻撃力を上げる為にクロエの杖を作り、もう一つはレンの片手剣だ。
レンのは杖か片手剣かで最後まで悩んだが、剣術も出来るなら杖代わりとして機能もする片手剣にしようと決めて作って貰った。
「俺のはこの間作ったばかりだし、レイのには材料が足りなかったからな。それなら、二人の戦力を上げる為に使った方がいいだろ?」
「それにクロエちゃんとレン君は、今まで自分達より私達の装備を優先してたでしょ? だから今回はクロエちゃん達が受け取るべきだよ」
そう俺達は言って、遠慮気味の二人に装備を渡した。
受け取るまで遠慮気味だった二人だが、装備を受け取った二人は新しい武器に顔が少しニヤけていた。
その後、リーザにはお礼を言って店を出て、二人の武器を試す為に久しぶりに〝岩石山のダンジョン〟へと行く事にした。
「……この剣の切れ味おかしすぎるって」
「……この杖も魔力の通りが凄く良くて、普段より魔力の消費が少なくて凄いよ」
二人は早速、武器を試すとその性能の凄さにお互いに武器を見つめながらそう言った。
「そこまで凄いとは思わなかったな、クロエの魔法なんて一気に火力が上がってるように見えたぞ」
「なんだか今更後悔してきちゃったよ……」
武器の性能を見て俺は凄いなと感心して、レイは少し残念そうにそう言った。
その後も暫く武器の性能を確かめた俺達は、明日の依頼は討伐系に行こうかと決めて宿に戻った。
宿に戻ってきた俺は夕食までまだ時間がある為、部屋で休んでいると部屋の扉をノックされて出ると、外にはフリードが居た。
「すみません、ジン様。姫様が時間がある時でいいから、話したい事があるとの事です」
「話し合いの事ですかね? 今、丁度暇な時間ですが今行っても大丈夫ですか?」
「はい、ジン様が来るのを部屋で待ってると伝えられてるので大丈夫だと思います」
その話を聞いた後、俺はクロエ達に姫様の所に行く事を伝えて、宿にも今から外に出るから出来れば夕食は残しておいて欲しいと頼んで転移で王城に向かった。
「姫様、来ましたよ」
「ごめんなさいね。急に呼び出しちゃって、ちょっと急に決まった事があってどうしても早く伝えておこうと思って」
「まあ、報告がある時は呼んでくださいと言ってたのでいいですよ。それで、その伝えたい事って何ですか?」
そう俺が聞くと、姫様は言い辛そうに話し始めた。
「ジン達の最近の活躍、他国にまで知られてるのはもう知ってるわよね?」
「まあ、情報として聞いてはいますけど、それがどうしたんですか?」
「それがこの間の四天王の一人。それも勇者が負けた相手を倒したって事も知られたみたいで、そんな人達を野放しにしておくには勿体ないみたいな話になったのよ」
「……いや、まあ言いたい事は分かりますけど、そうならない為に俺達って遊撃隊として魔王軍討伐隊に入ってますよね?」
いつか、俺達の活躍を聞いてそういう事を言われそうだと思い俺は遊撃隊として入った。
「ええ、そうなんだけど活躍の量がね……それで、勇者も負けた四天王を倒す実力があるなら、せめて軍の人に手ほどきをしてほしいって流れになったのよ」
「ようは俺達の力が自由に使えないなら、少しでもその力を軍隊の力に使いたいって事ですかね」
「まあ、そういう事ね。お父様もジンの性格を知ってるから、最後まで色々と言ってくれてたんだけどこれが限界だったみたい。お父様からジンに謝っておいて欲しいって言われてるわ」
「いや、そこまで言ってくれたなら逆に感謝してますよ」
大国である国王が一介の冒険者である俺を守ろうとしてくれたんだから、それは感謝すべき事だろう。
それに多分、姫様の話を聞く感じ、最初は俺達を正規の軍隊の方に入れようみたいな話もあったんだろうと予想が出来る。
「分かりました。ただ一つ先に言って奥と、俺が教えた所で軍の人達の実力が上がるとは保証ではませんよ。人に教えた事もあまりないので、それに軍相手って事は一人一人をちゃんと見る事は出来ないでしょうから」
「分かってるわ。それにユリウス達も協力してくれるから、あまりジンの負担にならないようにはするつもりよ。……ただ、もしかしたら勇者の方から何かしらの接触はあるかもしれないとだけ先に言っておくわ」
「……まあ、今の内に心構えはしておきますよ」
その後、俺は姫様と今後の予定について色々と話し合いを行った。
宿に帰れたのは、陽が完全に沈んでから数時間後で本来なら夕食も食べられない時間だったが、リカルドは俺の為に飯を用意してくれた。
「ありがとな、リカルド」
「お前の頼みだからな、それにお前が色々と頑張ってる事は知ってるから少し位は力になろうと思ってな」
リカルドは顔を少し赤くしながらそう言った。
そんなリカルドを見て俺は、笑いながら「そんな強面に赤面されながら言われたら逆に怖いな」というと、リカルドから頭を叩かれた。
「さっさと、食べて寝ろ!」
そうリカルドは、更に顔を赤くして去って行った。
その後、俺は飯を食べ終えて食器を返す際に「ありがとな、いつも感謝してる」と言って俺はシャワーを浴びて部屋に戻り、眠りについた。
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