第239話 【師匠と一緒に・3】


「師匠、そろそろ一旦休憩にしてもいいですか?」


「そうね。ずっと動いてたし、丁度さっき安全地帯もあったしそこに戻って休憩しましょうか」


 ダンジョンに入って三時間程が経ち、そろそろ皆に疲れが現れたはじめたので俺が休憩を提案すると、師匠も皆の顔を見て休憩に賛成してくれた。

 数時間振りにゆっくりできるとなったクロエ達は、異空間から取り出した飲み物をゴクゴクと飲み「生き返る~」と喜んでいた。


「ジンは疲れた様子無いけど、大丈夫なのか?」


「ん~、歩き疲れた感じはするけど、皆程では無いな。魔法使ってたけど、殆ど師匠の魔力だったからな、俺の魔力全部合わせても俺がいつも使う魔法数発分位だしな」


 正直な所、師匠が魔力を肩代わりしてくれていたおかげで俺はかなり楽が出来ていた。

 三時間みっちり師匠の技を教えて貰った俺は、少しだけだが感覚を掴んで師匠に対しても魔力を渡せるようになっていた。

 出来るようになって俺はステータスを確認すると、スキル欄に新しく【魔力譲渡】というスキルが追加されていた。

 ちなみに師匠に言われた通り、俺とクロエの魔力の相性はいいみたいで師匠でかなり練習をした俺は一度クロエに試してみると一発で成功した。


「私も一回やってもらったけど、あれは凄いね。自分の魔力は少ししか使ってないのに、あんな強力な魔法を使えて驚いたよ」


「まあ、これでクロエの問題も一つ解決出来たから良かったよ。獣人族で魔力が上がり辛くて、長期戦になると魔力を温存しなきゃいけなかったけど、これからはこのスキルでクロエの魔力消費を抑えながら戦えるようになるだろうからな」


「それなら私も今以上に魔法の腕を磨かないといけないね」


 クロエはやる気に満ちた目をしながらそう言った。

 それから俺達はお腹も空いていたので、レンと俺でちょっとした料理を作り飯を食べてから探索を再開した。

 ってか、本当にここのダンジョン、出て来る魔物が一体一体強い奴ばかりでクロエ達が本当に楽しそうに戦ってるな。


「弟子ちゃん、もしかしてクロエちゃん達と一緒に前で暴れたい?」


「えっ? あ、その、強い魔物とはあまり戦えないので俺も刀で少し戦ってみたいな~って」


「ふふっ、弟子ちゃんは素直ね。私の試したい事は十分試せてたから、いつも通り陣形に戻しても良いわよ」


 師匠からそう言われた俺は「いいんですか?」と聞き返し、師匠が「弟子ちゃんも楽しみたいでしょ」と言って俺はクロエと場所を交代した。


「ジン君も前に来たんだね~、やっぱり暴れたかった?」


「まあな、普段戦ってる奴より戦い甲斐のある奴等だし、こういう時に刀術の腕を磨いておきたいからな。暫くは魔物を独り占めさせてもらうよ」


「うん、私は十分楽しんだから、ジン君のサポートに回るよ」


 レイから許可が下りた俺は刀を抜いて、いつでも戦える状態で魔物を探し始めた。

 探し始めて数分後、丁度奥から三体の上位個体のオーガが現れた。

 オーガを見つけた瞬間、俺は【身体強化】を発動させて一気にオーガ達の背後に回り、まず一匹を頭から真っ二つに切り裂いた。


「——ガギャ?」


 自分が切られた事を数秒後に気付いたオーガは、そんな声を残して絶命すると、残ったオーガ達が俺に向かって武器を振り下ろしてきた。

 振り下ろされる武器の速度が遅く、俺に到達する前にその場から移動した俺は刀を構え、オーガの首を正面からスパンッと斬り飛ばした。

 そして最後残されたオーガは、恐怖した顔で俺を見ていたのでそのままサクッと斬り、三体のオーガを一分も掛からず討伐した。


「相変わらず綺麗な太刀筋だよね~。それに前より刀を振る速度が速くなった?」


「ありがとう。毎日訓練を続けてるから、それで少し早くなったんだと思う。今は魔王軍との戦いでリュドラさんと会えなくて刀術の腕前を見せれないけど、魔王軍戦いが終わったらまた見てもらう予定だからそれまでにもっと技の完成度を上げておきたいと思ってな」


「ジン君って今でも相当強いのに、本当に向上心がずっと続いてるよね。怠けた事とかも無いし、本当に凄いね」


 レイからそう褒められた俺は、「強くなりたいからな」と言葉を返した。

 その後、魔物が現れたらその魔物の種族を知識のデータベースから持ってきてどのように戦えばいいか一瞬で考え、最速で討伐する事を心掛けながら戦い続けた。

 途中から俺だけで戦う事は止めて、レイ達にも参加してもらってクロエとの協力技の練習も進めた。


「戦いながらはやっぱり難しいな……師匠、コツとかってあるんですか?」


「慣れる事が一番いいわよ。それ以上にその技を上手くなる道はないわ」


 そう師匠から言われた俺は、それから戦いに集中しながらもクロエに魔力を送る訓練を続けて行った。


「クロエ、用意!」


「はい!」


 探索をはじめて数日後、協力技に慣れて来た俺とクロエは掛け声を決めて連携するようになった。

 最終的にはアイコンタクトでやりたいところだが、今はこれが限界だ。


「レイ、足止め頼んだぞ! レンはレイのサポートだ!」


「「はい!」」


 数分前、ダンジョンの最下層にあるボス部屋に挑んだ俺達は協力技を試しつつボスを討伐しようと戦いをしていた。

 この戦いでは師匠には、手出ししない様にしてもらっている。

 師匠も俺達の成長が大事だと言い、俺のお願いを聞いて入り口付近でジッと戦いが終わるのを待っている。


「レイ、右を頼む。俺は左だ!」


「了解ッ!」


 ダンジョンのボスは、ブラックアースドラゴンというアースドラゴンの上位個体。

 空を飛べない代わり、強固な体をしていて生半可な力だと到底ダメージを負わす事も無理だ。

 その為、俺とレイで左右から攻撃を仕掛け、俺の魔力を渡したクロエの魔法で一気にダメージを与えるという作戦だ。


「クロエ、いま!」


 俺の合図と共にクロエは魔法を発動させ、俺の魔力も合わさったクロエの魔法は普段よりも強力な魔法となって敵に命中した。

 魔法が当たったブラックアースドラゴンは、体の損傷が酷く、体に纏っていた岩も殆ど無くなっていた。

 そこに俺は一気にブラックアースドラゴンへと接近して、首の後ろに回り首を切り落とした。

 俺の最後の攻撃で絶命したブラックアースドラゴンはそのまま体が倒れ、それを見た俺は「討伐完了」というとレイ達は嬉しそうに「やった~!」と叫んだ。

 その後、討伐した魔物の素材を回収して、報酬を受け取った俺達はダンジョンの外に出た。


「弟子ちゃん、クロエちゃん、レイちゃん、レン君。ダンジョン攻略お疲れ様」


「師匠、ありがとうございます。こんな楽しいダンジョン探索は、本当に久しぶりに味わう事が出来ました。師匠との探索、本当に楽しかったです」


 俺がそうお礼を言うと、クロエ達も師匠にお礼を言った。

 その後、王都へと戻ってきた俺達は夕食の席でダンジョンの話で盛り上がった。

 そして師匠の口から、まだ世間に知られてないダンジョンをいくつか知ってると聞いた俺達は、また今度行きましょうと師匠と約束をした。

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