第238話 【師匠と一緒に・2】


 ダンジョンへとやって来た俺達は、昨日の作戦会議で決めた陣形でダンジョンの中へと入った。

 前衛にクロエとレイ、中衛に師匠と俺、そして後衛にレンという陣形だ。

 師匠がどうしても俺と組みたいと言ったので、普段は中衛に居るクロエが久しぶりに前衛に回った。


「久しぶりにクロエちゃんとの前衛だね~。競争する?」


「今日はマリアンナさんが居るから、私達の仕事は殆ど無いかもだから競争できる程、魔物が残ってないと思うよ」


「大丈夫よ。私も大人だから、その辺は考えて動くわ」


 師匠はそう言うと、それじゃあ競争しよっかとクロエとレイは言って、俺達は探索を始めた。

 事前に聞いていた通り、このダンジョンは最初から出て来る魔物が強く、最近は弱い魔物としか戦えてなかったクロエ達は楽しそうに魔物と戦っていた。


「ハハハ、楽しい! こんな楽しい戦い、魔王軍との戦い以来だよ!」


「そうだね。レイちゃん!」


 久しぶりに前衛で暴れるクロエは、レイに感化されたのかいつも落ち着いた雰囲気は無く、少しレイに似た子供っぽさが出ていた。


「弟子ちゃん達の話だと、いつもはクロエちゃんは私の位置でクロエちゃんの位置が弟子ちゃんなのよね? それなのにあの二人は、かなりいい連携をしてるわね」


「同性って事もあるんですが、プライベートでも二人は仲が良いんですよ」


「そうなのね。女同士で問題が起きやすいって、話で聞いてたけどレイちゃんとクロエちゃんは心配無さそうね」


 師匠は二人の動きを見て、楽しそうにそう言った。

 それからクロエ達は暫く暴れて楽しんだようで、次は俺と師匠の出番となった。


「師匠、どうします?」


「そうね~。弟子ちゃんと競争するのも面白そうだけど、やっぱりここは師弟で協力する技ってのも良いわよね~」


「協力技ですか? でもそんなの修行でもやってませんでしたよね?」


「ふふっ、大丈夫よ。弟子ちゃんの魔力は感じ取れるから、いつもの様に魔法を使ってくれたらそこに私がサポートするわ」


 師匠はそう言うと、丁度良く魔物の群れが現れたので早速試す事にした。

 流石に速射だと師匠と合わせる事は出来ない為、いつもより少し眺めに魔力を溜めていると、師匠の魔力が俺の体を包み込み、魔力が増幅した。

 その増幅した魔力は暴れる事無く、俺の作りかけている魔法に吸収されて行き、タイミングを見計らい魔物に向かって魔法を放った。


「——ッ!」


 そこまで魔力を込めた感じはしなかったが、魔法が直撃した魔物達は即死して、死体すら残らなかった。


「師匠、今何をしたんですか?」


「私の魔力を弟子ちゃんの魔法に合わせてみたの、初めての事でちょっとやりすぎちゃったわ。次ともっとちゃんと調整するわね」


「……今の魔法、俺殆ど魔力使って無いんですけど、師匠はどのくらい魔力を消費したんですか?」


「ん~、私もそんなに使って無いわよ? それに私の場合、ちょっと特殊で直ぐに魔力が回復するから、魔力消費の心配はしなくても大丈夫よ」


 師匠がそう言うと、先程の魔法の音を聞いて魔物がやって来たので師匠から「もう一度しましょ」と言われた。

 師匠がまた合わせると言ったので、俺は少しだけ遅らせて発動する以外は特に考えずに魔法を使うと、先程よりも安定した状態で魔力が増幅した。

 そしてその増幅した魔力を魔法へと移し、そのまま発動すると先程よりも威力は抑え、素材もとれるくらい状態で倒す事に成功した。


「今、火の玉を作る程度の魔力しか俺は使ってなかったんですけど……」


「ふふっ、これが師匠と弟子の合わせ技。楽しいわね~」


 師匠は成功した事が嬉しいのか、笑顔を浮かべてそう言った。

 それにしても師匠との技、これマジで俺の消費魔力が殆ど無いな……どういう仕組みの技なんだろう。


「師匠。さっきからやってるのって、どういう原理でやってるんですか?」


「ん~、ほらナシャリーちゃんがレン君に【付与魔法】を教えていたでしょ? それを見て人に魔力を渡す技を考えてみたのよ。相性が合う者同士なら使える技で、他人の魔力に自分の魔力を上乗せさせて、対象者の魔力を肩代わりする技って考えたら簡単ね」


「成程、それで俺の消費魔力が極端に低いのにあんな凄い威力の魔法が出せてるって訳ですね」


「うん、一応私調べだけど、ジン君とクロエちゃんは魔力の相性がいいから、弟子ちゃんにこの技を教えてあげるわ」


 慣れたら戦闘中でも渡せるらしく、覚えたらクロエの魔力を肩代わりする事でより戦闘の幅が広がるだろう。

 その後、師匠からその技のやり方を教わりながらダンジョン探索を続けた。

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