第229話 【模擬戦闘・2】


「あれ、ジン君も訓練してるの?」


「ジン君がこっちで訓練何て珍しいね~」


 訓練を始めてから30分程が経つと、クロエ達が訓練をする為にやって来た。

 二人は確か今日は買い物に行くと言っていたが、買い物が終わって訓練をしに来たんだろう。


「空島に移動する程でも無いし、裏庭で訓練してたんだよ」


「そうなんだ。裏庭から音が聞こえてたから、レン君が訓練してるのかな? って一瞬思ったけどジン君で驚いたよ」


「まあ、普段はここでは訓練しないからね。驚くのも無理ないよ」


 確かに俺は基本的に訓練するとなると、毎回空島に移動していた。

 今日は何の気分だったか既に忘れているが、なんとなく空島には行かずに裏庭で訓練をしていた。

 その後、クロエ達も一緒にする事にして陽が沈むまでクロエ達と訓練をしていた。

 それから数日間、俺は毎日念入りに自分の体の状況を確認しつつ、模擬戦闘の日に万全な状態で向かえるように調整をした。


「数日振りだねジン君、あれからそんなに経ってないけどまた少し強くなった?」


 約束の日、ギルドの相談室にやってきた俺達は先に部屋で待っていたユリウスはそう言って来た。


「ユリウスさん達と戦う為、この日に万全な状態で迎える為に色々とやってて少し強くはなりましたね。まあ、誤差程度ですが」


 ユリウスは、数日で変化した俺の状態を見て驚いた顔をした。


「ジン君、久しぶりね。元気にしてたみたいね」


「はい、久しぶりですね。アンジュさん」


 驚くユリウスを横に、久しぶりに会ったアンジュと俺はそう挨拶を交わした。

 3年前の時点でもかなり強かったアンジュだが、ユリウスと共に行動するようになってから更に強くなっている。

 特に剣術は、本気の剣技を使うユリウスと同等の力を持つ程に成長していた。

 ゲームではモブですらなかったのに、この世界ではあの剣聖と同格の剣術を使う剣士とまでなっている。


「ジン君達の噂はよく耳にしていたわよ。四天王の討伐もそうだけど、魔王軍との戦いに物凄く貢献してるそうね。本有に凄いわ」


 そう褒められた俺達はアンジュに「ありがとうございます」と言葉を返し、今日の模擬戦闘についての話し合いを始めた。

 ルールは簡単で、武術・魔法は制限なく使用可能。

 ただし、建物が壊れる可能性のある物や相手を殺してしまう可能性のある物は禁止。

 勝敗については、ダメージを数値として現す魔道具を装着して、一定の数値を超えた方が敗北というルールとなった。


「これって確か、最近兵士の間でも流行ってる模擬戦闘用の魔道具ですよね」


「ああ、少し前に開発された物で訓練用には丁度良くてね。これならジン君とも楽しく戦えると思って用意したよ」


 この魔道具はゲームには無かった物で、俺も見るのは初めてだ。

 話では聞いていて、装着してる人物がちゃんと防御した物は数値化されないが、防ぎきれなかった攻撃は数値として現される高性能な代物だと聞いている。


「これ俺も欲しいと思ってるんですが、中々手に入らないんですよね。シンシアからも入荷待ちって言われてて」


 能力を聞いた時点で訓練にはいい道具だと思い、シンシアの所に聞きに行ったがかなりの人気商品で手に入れるのは難しいと言われた。

 そんな商品だが、やっぱりユリウスは持っていたんだな。

 その後、ルールに問題無いと確認し合った俺達は早速戦う為、相談室から訓練場へと移動した。

 ユリウスは今日の為に一日訓練場を貸し切ったと言っていたけど、そんな別に一日も使わないだろと思ったが。


「地面がボコボコになりそうだから、直す時間を考えたんだよ」


 と言われて、納得した。


「ジン君、準備は良いかしら?」


「はい、大丈夫ですよ。アンジュさんもいいですか?」


「勿論、それじゃリコラさん合図お願いできるかしら?」


 互いに準備が出来てるか確認をして、アンジュは試合の審判であるリコラにそう声を掛けた。

 

「それではこれより、アンジュ対ジンの対決をはじめます。両者、準備良いですね? ……それでは、試合開始!」


 試合開始の合図と共にアンジュは【身体強化】を使い、一気に俺へと突っ込んできた。

 そんなアンジュの攻撃に対して、俺は刀を取り出しサッとアンジュの剣に刀を当てて軌道をズラし、アンジュの剣は勢いよく地面へと振り下ろされた。

 アンジュは俺の動きを見て、笑みを浮かべるとサッと後ろに下がると、再び攻撃を仕掛けて来た。

 そんなアンジュに今度は俺も攻撃で返し、試合開始数秒で激しい攻防が始まった。

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