第228話 【模擬戦闘・1】


 悪魔騒動が落ち着いて数日が過ぎ、俺達はいつもの日常を送っていた。

 そそんなある日、宿に珍しい客がやって来た。


「ユリウ、あっ、いや。ユーリさんお久しぶりです」


「うん、久しぶりだねジン君。ちょっと今、大丈夫かな?」


 宿に来たのは変装してるユリウスだった。

 偶に城で会う以外は基本的に会う機会が無く、最近は全く会ってなかった。

 それから俺は、ユリウスと一緒に俺が借りてる部屋に移動した。


「それで態々宿に来るなんて、何か大事な用兼があるんですか?」


「大事と言えば大事かな? ジン君が悪魔を倒したって姫様から聞いて、今のジン君の実力を知りたいと思って模擬戦闘をしてほしいなって頼みに来たんだ」


「……それを聞く為に態々宿まで来たんですか?」


「勿論、頼み事をする側だからね。本当はアンジュも一緒に試合をしたいから来たいって言ってたんだけど、用事があってこれなくなって僕だけが頼みに来たんだ。出来れば、アンジュとも戦ってあげて欲しいんだ」


 そうユリウスが言い、俺は少しだけ考えた。

 ユリウスの実力は以前までは近くで見ていたから大体は知ってたけど、今はなんなくしか実力をしれていない。

 それに俺の予想だとゲームの時より、ユリウスは遥かに強くなっている気がする。


「……分かりました。その頼み聞きますよ。序にアンジュさんとの模擬戦闘も良いですよ」


「良かった。ありがとうジン君」


 ユリウスは笑顔でそう言うと、俺の暇な日を聞いて来て次の休みの日を伝え、丁度ユリウス達もその日は用事が無く、その日に決まった。

 アンジュもいるという事で王城の訓練場ではなく、ギルドの訓練場でする予定だとユリウスは言って嬉しいそうな顔をして帰った。


「ジン君、さっき来てたのってユリウスさん?」


「ああ、なんか俺と久しぶりに戦いたいらしくて態々頼みに来たんだよ。丁度、俺もユリウスさんがどの程度強くなってるのか気になってたから模擬戦闘をする事にしたんだよ」


「へ~、そうなんだ。じゃあその日、私も見に行っていい? ユリウスさんとジン君の戦い凄く気になるから」


「それなら、レイ達も暇なら誘ってみるか」


 その後、部屋に居たレイ達にユリウスとアンジュと模擬戦闘をすると伝えると、二人も試合が気になると言って試合を見る来る事が決まった。


「へ~、あの剣聖と戦うんだ。そう言えばジンって王城で暮らしてたこともあるし、その時の繋がり?」


「まあ、そんな感じだな」


 ユリウス達との模擬戦闘が決まった俺は、元々の予定であるシンシアの店での買い物へとやって来た。

 それにしても久しぶりにシンシアの店に来たが、かなりアイテムが以前に比べて充実してる。

 ゲームの時には無かった隠れ里のアイテムも、シンシアの店では取り扱っていた。


「隠れ里のアイテム、こんだけ沢山置いてるのシンシアの所位だろ……」


「元々、特別な仕入れルートで仕入れてたおかげで、隠れ里の人達から良く思われたみたいで沢山卸してくれたのよ。そのおかげで最近は、何処からか私の店の情報を聞いた高いランクの冒険者が王都に集まってるみたいよ」


「流石だな……っと、今日買うのはこの位だな、それと飴の補充も頼む」


 正直、もうレベルも高くなって師匠との修行のおかげで飴を舐めなくても大丈夫だが、飴自体を気に入って無くなったら困るアイテムの一つになっている。

 甘すぎないのがまた良いんだよな……疲れた時とか偶に舐めてるし、俺がよく舐めてるからかクロエ達も好物の一つとなってる。


「本当にジンは飴が好きね。作り方教えようか?」


「いや、多分作り手が変わると味も変わって来るだろうから、シンシアの所で買うよ。だから出来るだけ、飴作りは止めないでくれよ」


「元は趣味だから大丈夫よ。私も飴舐めるの好きだから、当分は作ると思うわ」


「それを聞いて安心したよ」


 その後、少しだけ世間話をしてから俺は店を出て、そのまま商業区で買い物を続けた。

 商業区では家具屋に行き、レドラスから頼まれていた家具をいくつか購入をしたり、雑貨品を購入してその足で拠点へと向かった。


「おお、やっと俺専用のベッドで寝れる! ここにあったの、寝たら痒くなって我慢出来なかったんだよ!」


 一応、拠点を買った時にシーツなどは買いかえていたのだが、掃除を忘れていたりしたせいかレドラスの部屋のベッドは寝たら痒くなるという最悪な物になっていた。

 流石に可哀想だと思った俺は、レドラスが真面目に仕事してるという事もあり新しいベッド一式を購入してやる事にした。


「一応、頼まれていた物はそれぞれの部屋に置いておくから後でちゃんと仕訳けておくんだぞ」


「分かってる。ちゃんとやるから、今は休ませてくれ。ずっとソファーで寝てて疲れが取れてなかったんだ」


 新しいベッドに横になりながらレドラスはそう言い、それ以外にやる事も無いだろうしなと思いながら俺はレドラスの部屋から出た。

 その後、俺は拠点の裏庭で刀術の訓練をする事にした。

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