第219話 【師匠帰還・1】


 悪魔の存在を察知してから二日が経ち、国と隠れ里に注意をしてから俺達は悪魔がいつ襲ってきてもいい様に気を張った生活をしていた。

 だけど特に事件は起きる事無く、俺は心配のしすぎだったかも知れないと思っていると、姫様から緊急呼び出しをされ悪魔が動き出したかも知れないと報告された。

 場所は王国から遠く離れた国で、その国の名は〝イロス帝国〟。

 国土は広く、戦争国家としてゲームでも悪役として登場していた。

 世界が団結して魔王軍に対応してるのに対して、イロス帝国は逆に魔王軍と繋がって物資を渡したりと人間側が不利になる様に動いていた。


「イロス帝国に悪魔が現れたんですか?」


「確定では無いわ、ただここ最近イロス帝国のあちこちで問題が起きて、もしかしたら悪魔の仕業かも知れないと思ってジンを呼び出したの」


「成程、確定では無いけど問題が多発してると……」


 イロス帝国とデュルド王国は仲が悪い為、姫様は救援に向かうという風な事は言わなかった。


「ええ、一応調査はしてるけど、悪魔かも知れないって程度ね。ジンの方では何か情報は掴んだかしら?」


「全くですね。一応、調査と王都周辺の見回りはしてますが、何も情報はつかめてません」


「ジンでも悪魔の情報を手に入れるのは難しいのね」


「そうですね。魔力を隠すのが下手だったらまだ何とかなったと思いますが、今回の奴は魔力を隠すのが上手いみたいで中々、見つける事が難しいですね」


 その後、帝国の動きは姫様に任せてまた何かあったら報告に来ると言って転移で帰宅した。

 帝国で問題が起きたか、あそこは元々色んな事をしでかしてる国だから悪魔のせいって言えないんだよな……。

 ゲームでも度々問題を起こしては、緊急依頼で向かう事があった。

 ゲームでは既にこの時期にはイロス帝国と勇者は接点があったが、この世界の勇者と帝国は姫様の話からすると一切ないみたいだな。


「まあ、イロス帝国がどうなろうと物語的に問題では無かったし、無視していても良いけど、今は悪魔の事があるからな……」


 一応、イロス帝国に悪魔がいる可能性を考えて、ヘレナーザの準備が出来た時に帝国の事は話そう。

 そう決めた後、クロエ達を呼びに行き今日は王都近くの依頼を受けに行く事にした。


「そう言えば、レンの研究は何処まで進んだのか聞いてもいいか?」


「……全く進んでない。あの薬、マジで解析が難しすぎる」


「レン君でも厳しいんだ? ギルゼルさん曰く、あの薬は長年の研究で作った代物だから、そう簡単には解析出来ないんだろうね」


「ああ、それでも解析してやるって気持ちがあって頑張ってるけど、全く分からないんだよな」


 レンはそう言うと、諦めてるような顔つきではなく、何処となくやる気に満ちた顔をしていた。

 本当に、レンはこの数年で研究者っぽくなったよな。


「逆にジンは料理の方はどうなんだ? 最近は悪魔の事で頭がいっぱいの様子だが」


「ぼちぼち進めてるよ。一応、ようやくだけど【調理】スキルレベルが2に上がった」


「えっ、ジン君もう【調理】スキルレベル2に上がったの!?」


 スキルのレベルが上がった事を言うと、話を聞いていたクロエがそう驚いた。


「姉さんとリウスのおかげでな、やっぱり食べてもらう相手が居ると作り手としてもっと美味しい物を食べさせてやりたいって気持ちで成長が早い気がするよ」


「だとしても、こんな短期間でスキルレベルが2になるのは、やっぱりジンだなって感じだな」


 レンは呆れた様子でそう言うと、クロエも「私も頑張らなきゃ……」と静かに闘志を燃やしていた。

 その後、依頼を終えて戻ってきた俺達は夕食まで時間がある為、解散してそれぞれのやる事に分かれた。

 クロエはさっきの会話を聞いて、料理の勉強をして来ると言ってレイを連れて拠点へと行き、レンも研究があるからと言って一緒に拠点に向かった。

 俺はというと、調べ物の続きがしたい為、宿に残って本を読むことにした。


「……ッ! この魔力は!」


 本を読み始めて一時間程が経った頃、宿の部屋に懐かしい魔力を感じた俺は本を閉じて部屋の外に出た。

 そして懐かしい魔力がしてる部屋の前に行った俺は、扉をノックして中の人が出てくるのを待った。


「は~い、弟子ちゃん久しぶり~」


 ノックをして数秒後、部屋から師匠が出て来た。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る