第216話 【隠れ里、参戦・1】


 キールからの依頼を終えた数日後、俺は姫様から王城へと呼び出された。


「ジン。隠れ里の人達とどういう繋がりなの」


 部屋に入るなり、姫様からそう言われた俺は「えっ、何がですか?」と首を傾げながら返した。

 その俺の疑問に対して、姫様は答えてくれた。

 昨日、隠れ里に住むエルフ族とドワーフ族の族長と数名の従者が王都へとやって来て、今後の魔王軍との戦いに参加の表明にしに来たと言われた。

 その際、国王は何故今になって参加の表明を出したのか聞くと、俺の名を出したらしい。

 口止めしてなかったから名前を出す分には良いけど、まさか隠れ里の人達が魔王軍との戦いに参加するとは思わなかったな。


「あ~、その先日、隠れ里の人達が魔王軍に襲われてて助けたんですよ」


「いつ、魔王軍と戦ったの? そんな報告無かったわよね?」


「……報告忘れてました」


 姫様の言葉に俺はハッとして、そう言えば国に四天王の一人を倒したという事を伝え忘れていた事を思いだした。

 そうして俺はこの間の事を一から説明すると、姫様は溜息を吐いて「ちゃんと報告してよ……」と呆れた口調で言われた。


「って、待ってよ。ジン、今四天王の一人を倒したって言った?」


「ええ、四天王の水のミザリニスは完全にこの世から消しましたよ。序に魔王軍も約一万程の軍勢も一緒に倒しました」


「ミザリニスって、勇者が負けた相手じゃない。どうやって勝ったの?」


「普通、魔法で一方的にやりましたよ」


 そう言うと、姫様はジッと俺の事を見つめて「勇者が負けた相手に勝つってどういう事よ……」と頭を抱えながらそう言った。


「でもようやく謎が解けたわ。この数日、魔王軍の動きが無くなったの四天王が倒された事が原因だったのね。竜人国の方達から一切、魔王軍を見かけなくなったって言われておかしいと思ってたのよね」


「そうですね。それに加えて魔王軍が別動隊として集めていた軍隊も片付けたので、魔王軍の現状はかなり辛いと思いますよ。四天王に、約一万の軍隊を失ってますからね」


「……それが早く分かってたら、こっちも色々と動けたのにね。そんな重要な報告、忘れるってどういう事よ」


 改めてそう姫様から言われた俺は謝罪するしかなく、これからの動きについて国王と話し合う必要があるといってその日の話し合いは直ぐに終わった。

 正直、俺も依頼が終わった後、直ぐに報告行こうとは思っていた。

 だけど、依頼が終わって早々にレンがエルフ族から貰った薬の解析をはじめて、それの成果を早く知りたかった俺は報告の事を忘れて、そっちに夢中になっていた。


「姫様には悪い事したな……ちゃんと、次からは忘れないようにしよう」


 拠点に戻ってきた俺はそう反省して、レンの研究室へと向かった。

 それからレンの研究の手伝いをしていると、拠点の呼び鈴が鳴り、今は俺とレンしか居なくて、レンは研究で手が離せない為、俺が玄関を見に行く事にした。

 そして玄関の扉を開けて、外を見るとそこには意外な組み合わせの人物がいた。


「ドベルドさんとギルゼルさん? 何でここに居るんですか?」


「ジン殿の居場所を王城の者に聞いたら、宿かこの建物に居ると聞いての。折角王都に来たなら挨拶をしておこうと思って来たんじゃ」


「ジン殿、数日振りですじゃ」


 玄関の外に居たのは数日前に里を救った。

 隠れ里のエルフ族とドワーフ族の族長達だった。

 流石に外だと人の目もある為、二人を建物の中に入れてリビングに案内した。


「驚きましたよ。まさか、隠れ里の人達が王都に来てる何て」


「以前までだったらこんな事は無かったですが、近頃の魔王軍の動きは我らとしても迷惑だったんですじゃ」


「そこでジン殿達と出会い、この方達なら信頼できると思い我らも此度の魔王軍との戦いに参加する事を決めたんです。ただ我らエルフ族、ドワーフ族共に戦う能力のある者は少なく、里を守るので精一杯の為、戦力としてではなく物資の提供として参戦を決めたんです」


 そうギルゼルが言うと、今回の魔王軍との戦いで一番最前線で戦ってるこの国にエルフ族からは〝森の神秘薬〟、ドワーフ族からは魔剣を渡したと言った。

 森の神秘薬は言うまでも無く最強の回復アイテムなのだが、それ以上にヤバいのはドワーフ族の魔剣だろう。

 これまで地上に出回ってるのはゴブリン商人経由でいくつか売られた物で、数は100も無い程だった。

 それが話を聞くと、数千本の魔剣を国に渡したとドベルドは言ったので一気に戦力が強化された事になる。

 凄い物資の提供だな、これだけでも今まで以上に魔王軍との戦いが有利になるだろう。

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