第214話 【隠れ里のドワーフ族・2】


 ドワーフ族の隠れ里があるのは、森の中に地下への入口があるとロアナが言い俺達は転移した場所の近くにある森の中へと入って行った。

 森に入り10分程、奥の方から魔王軍らしく集団の魔力を感じ取った。


「同時に攻めていると聞いてたけど、こっちにもかなりの数が配置されてるみたいだな」


「そうだね。エルフ族の方と殆ど変わらない魔物の数だね……魔王軍、全力で隠れ里を攻撃仕掛けてるみたいだね」


 それから俺達は急いで里の方へと向かうと、正規の入口近くにも魔王軍が居た。

 ただそこに居るのは下級の魔王軍で、一瞬にして蹴散らした俺達はそのまま地下に繋がる道を辿り、何本もの分かれ道をロアナの案内頼りに進んで行った。


「凄い入り組んでるね……こんな所で迷子になったら大変そう……」


「この道の数は、流石の俺でも覚えるのに時間がかかりそうだな……よくこんなのを覚えていられるな」


「私も覚えるのはかなり苦労しました。里へ繋がる道って、ずっと同じではなく数日区切りで変わるので、外から入る者は正規の目印を頼りに里への道を覚えないといけないんです」


 目印、確かに壁に色んな模様が書いてあるけど、それのどこかに里に繋がる道の目印があるのかな?

 それにしてもそれを覚えてるエルフ族は凄いな、記憶力が良くてもこれだけの量の模様を読み取って正規の道を探し当てるなんて、普通の人だとまず無理だ。

 だからなのか、洞窟内に入ってから所々で爆音がなってるのは魔王軍が無理に里への道を作ろうとしてるのだろう。


「っと、着きました。ここがドワーフ族の隠れ里です」


 そう言ってロアナさんの後に付いて行くと、そこには大きな空間があり石造りの家が立ち並んでいた。

 既に避難してるのか思っていたが、意外にもそこにはドワーフ達が沢山居て、入口から入って来た俺達の事を警戒していた。

 しかし、ドワーフ族の中からロアナの事を知ってる者が前に出て来た。


「ロアナじゃないか、どうしたんだ? お前らの方も魔王軍に襲われてるって、外の警備隊から聞いたぞ?」


「私達の方の魔王軍が片付いたので、こちらの援軍に来たんです」


「そうなのか、それは助かる!」


 ロアナの言葉にドワーフはそう返すと、俺達の方を見て来て「その方達は?」と聞いて来た。


「この方達はエルフ族の里を救って下さった方達です。たった数十分で何千体もの魔王軍を倒す力を持ってるんですよ」


「おお、それは凄い方達なんだな! それなら、直ぐに長の所に案内するよ」


 ドワーフがそう言うと、ロアナと俺達を連れて一緒に里の中に入り、一番奥の他の家よりも大きい建物へと案内された。

 その中には沢山のドワーフが居て、その奥に他のドワーフとは違った雰囲気を持つドワーフが居た。

 ドワーフと言えば、小柄で、男性なら筋肉質といった見た目が特徴だが。

 そのドワーフは筋肉質な所は他のドワーフと変わらないのだが、身長は160とほぼ人間と変わらない身長をしていた。


「儂は隠れ里のドワーフ族の長、ドベルド。此度は我らの里の救援に来て頂き感謝する」


 ドベルドと名乗ったドワーフ族の長、その方に対して俺達も挨拶を返して、まずは外の状況について話しをした。

 数千体の魔王軍が里の地上に配置されていて、里へとの入り口も無理に通ろうとしてるという事、そして四天王クラスの魔力も感じるという事も伝えた。


「四天王って事は、最後の四天王もここに来てるの?」


 レイのその質問に対して、俺は首を横に振った。


「ここに居る四天王も、さっきエルフ族を襲っていた四天王の一人〝水の四天王ミザリニス〟だ。さっきエルフ族を襲っていたのは、おそらく分身体の方だろう。あいつは一体だけ、力を半分になるが分身体を作り出し自由に動かす事が可能なんだよ」


「えっ、そんな事が出来る魔物が居るの? でも分身体を作れるなら、相当厄介なんじゃないの?」


「そんな事は無いぞ、分身体と言っても力の半分を与えないと機能しないんだ。それで力の半分を渡して作った分身体を戻す前に倒すと、その分の力は消えて本体のミザリニスは弱くなっていくんだ」


 ゲームでは一度目の戦いでミザリニスを追い込むのだが、もう一体のミザリニスが現れ二体のミザリニスの魔法によって負ける。

 さつきの戦いでもミザリニスは最後の悪足掻きで、力を本体に戻そうとしたが俺はそれを阻止して綺麗にこの世から消した。

 それにより本体のミザリニスは、力の半分を失った状態でいる。


「四天王すらも倒したお方なんですか……」


 俺達の会話を聞いていたドベルドは、驚いた顔をしてそう言った。

 そうして話し合いは続き、これからの動きについて決まった。

 まずはドワーフ族は今のまま、里の中で避難してもらっていて魔王軍とは俺達だけで戦う事にした。

 もしもの時の為に、里の方にハンゾウとキール、ロアナを配置して地上では俺とクロエ達で対処すると決めた。


「本当にドベルドさんも来るんですか?」


「うむ、儂も長として里を守る義務がある」


 本当は俺達だけでやる予定だったのだが、ドベルドも地上部隊に配置する事になった。

 里の方で待っていてもらっても構わないと言ったのだが、族長として里を守る義務があるといって譲らなかった。

 頑固な所は他のドワーフと一緒なんだな、そう思いながら俺はドベルドに陣形について話しをして地上へと転移で移動した。

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