第213話 【隠れ里のドワーフ族・1】


 エルフ族の真の里は、外敵から守る為に結界で守られた場所にあった。

 認識阻害や気配遮断、なんかもう色々とてんこ盛りで察知能力の高いクロエでも「こんな所に里があったの!?」と驚いていた。

 勿論、俺も入るまで気付く事が出来ず、ハンゾウも「悔しいな……」と呟いていた。


「改めてまして、我が里の窮地を救って下さり、真にありがとうございます」


 ギルゼルがそうお礼を口にすると、会談の席に集まった戦士であるエルフ達も一斉に頭を下げた。

 20名のエルフ達、ギルゼルから感謝の言葉を貰った後、お礼の品を渡したいと言われてテーブルの上に木箱がおかれた。


「先程の戦いを見て、ジン様達に必要かは分かりませんが我らが感謝の品として渡せるのはこれ位しかない為、どうか受け取ってください」


 そう言ってギルゼルは箱の蓋を開けると、そこには〝森の神秘薬〟のゴブリン商人達が売ってるよりもかなり品質の良い物が入っていた。

 この品質から見て、死にかけてる相手でも一瞬で治せるレベルの物じゃないか? 普通のより明らかに、品質が違い過ぎるだろ……。


「こちらは我が長年の技術と知恵を使い、最近ようやく出来上がった薬です」


「ジン、これヤバいだろ……」


 俺以外にその薬の効果に気付いたのはレンただ一人で、レンは薬を見つめてそう驚いた口調でそう言った。

 ようやく、森の神秘薬の代わりになる薬を製造できるようになったレンは、この薬を見て少し対抗心を燃やしていた。

 そうして俺はその薬を受け取り、ハンゾウに「どうする?」と聞くと、自分は何もしてないから受け取らないと言った。


「そういう所はちゃんとしてるんだな」


「まあな、今回の収穫はジンの能力を見れた事が一番だからな。あんなドラゴン、お前が持ってる何て今日まで知らなかったからな……」


 ハンゾウは、俺の頭で寝ているリウスを見ながらそう言った。

 その後、お礼の品を貰った俺達はこれからについての話し合いを始めた。


「その話し合いの前に、さっきは森を破壊してしまってすみませんでした」


「いえ、あの程度でしたら儂等の力でしたら直ぐに元通りに戻せますので大丈夫ですよ。それに既に魔物共に森は荒らされていたので、魔王軍との戦いが終わったら作り直す予定でしたので」


 許可は貰ったとはいえ盛大に破壊した森について謝罪すると、ギルゼルは笑みを浮かべながら許してくれた。


「そう言えば既に殆ど元に戻されてましたね。あれって、エルフ族なら出来る事なんですか?」


「普通のエルフは出来ないと思います。エルフ族にも獣人族の様に、異なった生活をしています。儂等はその中でも特殊な一族でして、森の中で生活する事に長けた一族なんです。基本的に外に出る事無く、里か、里の周辺で生活する者が大半です。中には、儂の息子の様に外の世界に憧れて出て行く者も偶にいますが……」


 ギルゼルは隣に座るキールをチラッと見つつ、そう言ってキールは居心地が悪そうにしていた。


「それと儂等の特徴としては、他のエルフ族が嫌悪するドワーフ族とも一部の部族と取引をしております。儂等は薬作りを生業としていまして、ドワーフ族とも親交があるんです」


「そうなんですか? あっ、でしたら隠れ里のドワーフは知っていますか? そこにも魔王軍が向かってるという情報があるんですが」


 そう言うと、ギルゼルは「隠れ里のドワーフの所にも魔王軍がですか!?」と驚き直ぐに地図を持ってくるように言った。

 そうして持ってきてもらった地図に、ドワーフ族の里の場所を教えて貰った。


「場所はここなのですが、地下深くにある里で入口は入り組んでいるんです。道を知ってる者では無いと、里に着く事は出来ず入口へと戻されたり、罠にはまり抜け出すのに時間がかかったりするんです。ですので、儂等の部族から道案内の者を一人付けます」


 そうギルゼルが言うと、一番最初に出会った戦士の一人ロアナが抜擢された。

 ロアナはこれまで何度もドワーフ族の元に行っていて、顔も覚えられているから敵と思われる事は無いとも言われた。


「道案内も付けて下さり、ありがとうございます」


「いえ、儂等に出来る事はこのくらいですから……どうか、ドワーフ族の者達も救ってください」


 そうギルゼルから言われた俺達は、早速ロアナと共にエルフ族の里を出て行きドワーフ族の里へと向かった。

 運が良いのか、ドワーフ族の里の近くに以前行った事があり、近くまで俺の転移で移動してかなり移動時間を縮める事が出来たのは幸運だった。


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