第160話 【師匠との話し合い・1】


 空島に移り住みたいと師匠に言うと、師匠はどうしてそんな事を思ったの事聞きたいと言い師匠の家に移動して、詳しい話をする事になった。


「……弟子ちゃんは前から勇者君と関わりたくないと言ってるけど、それはどうしてなのか私にだけでもちゃんと話してくれないかしら? クロエちゃん達にも本当の事は言ってないでしょ?」


「そ、それは……」


 勇者に会いたくないから空島に移り住みたいと師匠に言うと、師匠はそう俺に言った。

 本当の事、それはゲームでの勇者とジンの関係について話さないといけない。

 だけどそんな事を話しても、師匠は信じてくれないかも知れない。


「弟子ちゃん。もしその話が信じられない様な話でも、私は信じるわよ。だって、貴方の師匠なんだから」


「師匠……分かりました。今から話す事は嘘ではない事を誓います。ですので、師匠も真実だと思って聞いてください」


「ええ、分かったわ」


 師匠に目を合わせてそう言った後、俺はこの世界が自分がやり込んだゲームの世界に似ている事、違う世界で生きていた事、勇者とジンの関係性を全て話した。

 流石にこんな出鱈目な話を信じてくれないだろうと俺は思ったが、師匠は俺の話を聞いて「だから色々と知っていたのね」と納得した顔でそう言った。


「弟子ちゃん、偶に教えてない事も試そうとしていて、何処で見たのか気になっていたのよね」


「ゲームでも師匠は出ていたので、その時の事を思いだしながら魔法を使ったりもしていました」


「そうだったのね。ちなみにその〝げーむ〟の中の私はどんな感じだった?」


「最強でしたね。バランスブレイカーで、仲間になった時の進み具合が異常に早かったです。お助けキャラなので魔王戦では使う事が出来ないんですけど、雑魚的相手には広範囲魔法で一掃したり、強いキャラの一人でした」


 ゲームでの師匠は物凄く強かったというと、師匠は分かりやすく嬉しそうな顔をして満足した様子だった。


「それにしても、色々と納得したわ。どうして弟子ちゃんが、何であれだけ勇者君から離れたいって思っているのか。弟子ちゃんは、勇者君の近くにいると自分が変わってしまうかもって怖いんでしょ?」


「……はい。俺自身、ジンとは別人格なので闇堕ちはしないとは思おうとはしてるんですけど」


 勇者に関わる事で、自分が闇に落ちてしまう可能性があるかも知れない。

 その事が原因で俺はこれまで、なるべく勇者に関わらないように、その関係者とも親密にならないようにと色々と頑張ろうとしてきた。

 結局自分の性格や、その行動での利益を優先して姫様やユリウス等、城関係者の人達とは仲良くなってしまった。

 しかし、それ以外の勇者の関係者になりそうな人物には極力近づかないようにと、この約三年間動いて来た。


「弟子ちゃんの行動の理由は勇者君と関わりたくないというより、変わってしまう可能性のある事から避けたいって事なのね」


「はい」


 話を一通り聞いた師匠はそう言うと、一息つくと考えこみ始めた。

 まあ、実際に別次元からの転生者で、この世界がゲームと似た世界と言われたら、誰だって考え込むだろう。

 師匠はそれから数分間、悩み続けた。


「……難しい問題ね。ゲームでの弟子ちゃんが闇落ちをした理由は色々あるみたいだけど、一番の理由の勇者が残ってる以上その不安が消えないのも理解出来たわ」


「そうなんですよね。物語修正力みたいなのが働く可能性を捨てきれてないんです」


「私にとってこの世界は普通の世界だけど、弟子ちゃんからしたらその物語と酷似してるからその気持ちが芽生えるのも分かるわ」


 師匠はそう言うと、深く息を吐くと「弟子ちゃんの闇落ちした理由の原因を解決しましょう」と言った。


「解決って、勇者をどうにかするんですか?」


「いいえ、勇者じゃなくてもう一つの方、弟子ちゃんの最大の闇落ちの理由である〝悪魔〟の方を解決しようと思うわ」


 師匠のその言葉に俺は「そんな事が出来るんですか!?」と驚き反応すると、師匠はニコリと笑みを浮かべた。

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