第151話 【魔女の弟子・1】
それから暫く無言のまま時間が過ぎ、頭の中の整理がついた俺は椅子に座ってニコニコと笑みを浮かべてるマリアンナを見た。
「弟子って、俺以外にも見つけようとしてるんですか?」
「一人目だけ弟子にしようと思ってたから、他に弟子はとるつもりは無いわよ」
「何で弟子を探していたんですか?」
「強いて言うなら、暇つぶしね。もう一つは私の力を受け継いでもらう為ね」
「弟子になったら拘束されるんですか?」
「なったらってもうなってるわよ。まあ、拘束するつもりは無いわよ? でも課題はクリアしてもらうわ。そうじゃなきゃ弟子の意味がないもの」
その後も俺はマリアンナに対して質問を繰り返すし、本当にただ弟子を探していたという事が分かった。
……で、あのマリアンナの弟子に俺がなるって、マジかよ。
「それで質問はもう終わりかしら? まだまだ答えてあげるわよ。弟子の悩みを解決するのも、師匠の役目でしょ」
「その悩みは師匠のせいなんですけどね……まあ、でもマリアンナさんは俺が遠ざけようとしてる方達とは繋がっていない事も分かりましたし、これからよろしくお願いします」
「やっと弟子になる決心がついのね!」
俺の言葉にマリアンナは、嬉しそうに笑いながらそう言った。
「そう言えば、さっきの質問の中に〝勇者とその仲間と関係してるか〟とか聞いてたけど、もしかして弟子ちゃんは勇者が嫌いなのかしら?」
「好き嫌いの問題では無くて、近づきたくないという思いがあるだけですよ。勇者に近づいたら、何となく悪い予感がするんです」
「ふ~ん……まあ、いいわ。弟子ちゃんが勇者と近づきたくないなら、私も近づかないようにしておくわ~」
そうマリアンナが言った後、俺達は修行についての話し合いを始めた。
修行場所はマリアンナが転移で連れて行ってくれるらしく、時間さえ作れば誰にも邪魔されない場所を提供してくれると言われた。
「さっきの話ぶりから、弟子ちゃんは目立つのが嫌いなんでしょ?」
「ええ、特に勇者の近くにいる人達にこれ以上注目されるのは嫌なので、その人が居ない場所での修行は本当にありがたいです。ちなみに他の事も修行しても大丈夫ですか?」
「他って言うと、剣術とかかしら? 別に良いわよ。私は【空間魔法】の技を教えるだけの師匠じゃないもの、こうみえて全属性の魔法に加えて剣術とかも使えるのよ」
エッヘンと胸を張るマリアンナだが、その実力は確かなものである。
というか、いつまでこの年若い風に喋ってるんだろうな、マリアンナの実年齢って確か数百は——。
「弟子ちゃん、今何か変な事考えたかしら?」
「イエ、マッタク。シショウ、ツヨインダナー」
あぶね~、女の勘は鋭いって聞いてたけど、まさかちょこっと設定資料の事を思いだしただけで、こんな殺気をぶつけられるなんて思わなかったぞ……。
「ふふっ、折角の弟子ちゃんを殺したりしないわよ? でも、機嫌が悪くなったらお仕置きくらいはしちゃうかもだから、これからは注意してね?」
「は、はい! マリアンナ師匠!」
師匠の逆鱗ポイントは年齢と、ちゃんと心にメモしておこう。
「そうだわ、弟子が出来たら渡そうと思ってた物があったのよ。えっと、どこだったかしら?」
ポンッと手を叩き思いだした動作をしたマリアンナは、空間からポンポン物を取り出してはまた別の空間に投げ入れた。
その動作を初めて数分後、ようやく見つけたのマリアンナは「あった!」と叫び俺にそのアイテムを見せて来た。
「……卵ですか?」
「ええ、卵よ。この卵の名前は【
【無魂獣】? そんなアイテム、ゲームでは無かったな……この世界だけのアイテムという事だろう。
んで説明を聞く限りだと、こいつは俺の魔力で生き物の形になって生まれるのか……。
「中々、面白いプレゼントですね」
「そうでしょ? ちなみに私の【無魂獣】はこの子よ。犬の見た目をしてて、可愛いでしょ? 名前はペスよ。ペス、この子は私の弟子ちゃんよ仲良くするのよ」
「わふっ!」
「影から出て来た!?」
影から出て来る犬なんて魔物は、この〝聖剣勇者と七人の戦女〟の世界に登場しない生き物だ。
という事は俺の【無魂獣】も、この世界に存在しない様な生き物が出て来る可能性もあるのか……凄く楽しみだ!
「師匠、何日ぐらいで卵は孵るんですか?」
「私の時は一週間、毎日ずっと上げてたら生まれたけど、感覚的に人それぞれで違うと思うわ。もしかしたら、私より早くに孵るかもしれないし、もっと遅くなるかもしれないわ」
「分かりました。取り敢えず、毎日必ず魔力を与えます」
俺はそう言って卵を無くさない為に、取り敢えず【異空間ボックス】の中に入れた。
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