第149話 【襲来・2】


 それから数時間後、直ぐに魔力回復薬を飲んだおかげで大分楽になっていて、俺は隣のレンの部屋に行きレンにお礼を言った。


「まあ、それが俺の仕事でもあるからな、というかこんな事が起こるなら今のうちに【空間魔法】の訓練をしたらいいんじゃないか? ダンジョンも見つからないみたいだし」


「……確かにな、時間もあるしもし次こんな事が起きた時の対処の為に訓練しておいて損はないだろう。それに転移がちゃんと使えるようになれば、更に遠くまで旅が出来るからな」


 姫様は外に出られるようになったが、未だに俺達との冒険話をするという約束は継続されている。

 その為、定期的に王都に戻ってこないといけないから、そんなに遠くまで行く事が出来ない。

 それにクロエの親との約束もあるし、これからは姉さん達との時間もあるから尚の事、旅について考え直さないといけない。


「まあ、でも頼りのノルフェン家の親子は勇者育成で忙しいしな……」


「そうだな……あれ、でもノルフェン家って確か、子供が居なかったっけ?」


「……あ~、居るけどあの人は今は魔法騎士団で忙しいらしいからな」


 姫様の元同級生のティアナさん、今は魔法騎士団の団員そして忙しいと姫様に聞いた。

 多分、姫様にお願いしたら時間を作って貰えるかもしれないけど、迷惑だろうからな……。


「でも、頼れる相手がその人位なら、一度話だけでも聞いたらいいんじゃないか? 訓練を見る見ないは置いて、可能性があるなら話だけでもしに行った方がいいと思うぞ」


「……分かった。明日、ギルドに姫様に手紙送ってお願いしてみるよ」


 レンから言われ、確かにと思った俺は姫様に出す用の手紙を書く為に部屋に戻った。

 その後、夕食の席でクロエ達にもしかしたらこれから暫く、訓練の為に王都か王都の近くに残るかも知れないと言った。


「中々、いいダンジョン見つからないし、私はいいと思うよ」


「私も良いよ~、丁度新しい技とか考えたかったし」


「俺は提案した側だからな、ボチボチ研究をするよ」


 皆は俺の言葉にそう言ってくれて、皆に俺は「ありがとう」とお礼を言った。

 そして翌日、俺は手紙を持ってギルドに行き、昨日の話し合いで決まった事をフィーネさんにした。

 フィーネさんは俺の話を聞くと、ダンジョンを見つけられない事に対しての謝罪をした。


「いえ、謝罪はしなくて良いですよ。魔王軍の動きが活発になって、それが原因というのは理解してますから」


 頭を下げるフィーネさんに俺はそう言って、これからの事について話をした。


「【空間魔法】の訓練ですか……確か、スキルレベルは3でしたよね」


「はい、なので短い距離の転移は可能な状態です。ですけど、何度も発動したり遠くに行く事は今の所まだ無理なので、それを可能にしたいなと思いまして」


「成程、分かりました。もしも、ノルフェン家の協力が得られなかった時の為に【空間魔法】の使い手を探しておきますね」


 そうフィーネさんは言うと、今度こそ仕事を全うするというやる気に満ちた顔をしていた。

 それから俺はギルドを出て、久しぶりにシンシアの店へと向かった。


「あら、珍しい客が来たわね。久しぶり、ジン」


「久しぶり、シンシア。どうだ最近は?」


「昔より、収入は安定してるわ。レン君には本当に感謝だわ」


 シンシアの店には、レンの作った薬を卸している。

 レンの薬の効果は高く、王都に数人しかいない白金冒険者も買いに来る程、人気があるらしい。


「それで、今日はどうしたの? 飴もうなくなったの?」


「まあ、それの買い足しもあるけど、他に何かないかと思って探しに来た。新しく入荷したもの見てもいいか?」


「良いわよ。あっちにあるから、すきにみていって良いわよ」


 シンシアからそう言われ、俺は新しく入荷したアイテムを見に向かった。

 ああ、これはゲームで見た奴だな、こっちはゲームでよく使ってた物だ。

 やっぱり、ゲームの開始時点を過ぎたからなのか、ゲームで知ってるアイテムが新しくシンシアの店に並んでいる。

 中には見た事がないアイテムもあるが、多分それは俺が色々と提案したりしてたからだろう。


「おっ、これは」


 いくつかアイテムを選んでいると、とあるアイテムに目が止まった。

 そのアイテムの名前は〝空間魔法の心得〟という【空間魔法】について学ぶ本だった。

 これ魔道具とかではない普通の本だな、珍しいなシンシアの店に普通の本が売ってあるなんて……ゲームでもこんな本は見た事が無い。


「シンシア、これって売り物なのか?」


「その本の事なら、そうよ。お金に困ってる魔法使いの人が売りに来たのよ。中身見たけど、中々ちゃんと書かれてたから買っておいてたのよ」


「そうか……なら、これも買うよ」


 そう言って俺は本も買う事にして、代金を払って店を出た。

 それから俺は宿に戻って来て、早速シンシアの店で購入した〝空間魔法の心得〟を読み始めた。

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